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これからは仕事で役立つことを「仕事以外」から学ぶ時代に。で、どうすれば?




ライフネット生命の出口社長が 日経ビジネスのインタービュー記事 で語っていたことが示唆に富む内容でした。


仕事で役立つことを「仕事以外」から学ぶ


記事では、出口社長は「仕事以外のところから、仕事に役立つことを学ぶしかない」と語っています。ちょっと長めですが、記事 からの引用です。

20世紀は、仕事に役立つことは仕事の中でだけで学べば、通用する時代でした。会社で出世もできました。それは戦後日本がゼロから高度成長期の波に乗り、右肩上がりでどんどん伸びていったからです。会社でマジメに働いてさえいればハッピーでいられたからです。

日本が国際連合に加盟した1956年からバブルの90年までの間の、日本の経済成長率は、平均で約7%です。つまり、10年で経済規模は倍になる数字です。こんなスピードでの成長を34年間続けていたのです。ある意味で、マジメに働く、というのが最大の戦略で、仕事のことは仕事で学べばいい時代だったのです。

ただし、こんな夢のような時代は、先進国で老人大国で少子化の進む今、そしてこれからの日本には2度とやってきません。少なくても私たちの生きている間はたぶんない。

何も考えずに、同質の人だけが集まる会社で仕事をしてさえいればハッピーになれた34年間は、もう終わっているのです。

じゃあ、どうすればいいのでしょうか?それは、仕事以外のところから、仕事に役立つことを学ぶしかない。言い換えれば、これまでの常識を捨てる。


仕事以外から学ぶための3つのアイデア


この考え方は、あらためてそうだな思いました。もちろん仕事からは学ぶことはありますが、仕事以外からも学ぶこと・発見はたくさんある。

仕事以外で学ぶとは、消費者や商品/サービスのユーザーとして見ることだと思っています。仕事の視点だとどうしても提供者側の視点で世の中を見てしまいますが、逆の視点である消費者の見方も大切なこと。

仕事以外のところからどうやって学ぶかを、あらためて考えてみます。


1. 身の回りを観察してみる


よく、「電車の中では人間観察をしてます」というのを聞きますが、人の行動などを意識して観察することは、何か新しいことを知るための第一歩だと思います。

ちょっと前に読んだ『ビジネスマンのための「行動観察」入門』という本には、あるエピソードが紹介されていました。著者が乗った電車でカップルが話をしていたそうですが、女の子は時々自分の携帯電話の画面を見ては話をしていたそうです。

著者は、女の子はメールか何かを気にしているのだろうと思ったそうですが、実は携帯の画面を鏡として使っていたとのこと。彼氏と話しながらもメークや髪型の身だしなみを整えていたのです。

このエピソードで得られる示唆は、観察したことで「事実」と「解釈」を分けること、少なくとも何が事実でどこからが自分の解釈・意見なのかを意識しておく重要性です。

電車のカップルの例だと、事実は女性が話しながら携帯画面を見ているまでです。はじめに観察者である著者が思った「メールでも見ているのだろうか」は事実ではなく解釈です。もしその解釈をあたかも事実として捉えていると、その先の実は鏡として使っていたには行き着かなかったはず。

普段から身の回りのことを単に「見る」のではなく「観察」してみる。何が事実でそれに対してどんな解釈ができるか。仕事以外から学ぶためのはじめの一歩です。


2. 視点を変えてみる


意識して視点を変えてみるのも、新しい発見があり学びにつながると思っています。視点を変えるとは、例えば、見えている現状ではなく理想の姿をイメージしてみる、子どもの視点、当事者の視点、などなど。

あるべき姿という理想像から考えるのは、普段からよくやっていたります。一度現実は置いておいて、どうなったら理想的かをまずはイメージしてみます。そして理想と現実のギャップを考えて、埋めるためには何が足りないのか、どうすればよいかを考えてみる。現状をいったん外してあるべき姿から逆算する視点です。

自分と違う立場で考えてみるのも有効だと思っています。例としては、お店や何かのイベントに行った時に、もし自分が運営する側だったらどうするだろう、どんな工夫ができるだろう、などと考えてみる。当事者意識を無理やりでも持って見ること。

自分の立場から見た視点というのは、意識しないとかなり強く固定されてしまうと思っています。視点を変えてみようという意識を持つだけでも、自分のレンズは変わるはずだし、仕事以外から学ぶ(自分のレンズという常識を捨てる)ことにつながるのではないでしょうか。


3. ヒト・モノ・カネ・情報の流れを考える


最後の3つ目はちょっと応用編です。ビジネスモデルはどうなっているかを考えてみること。表面的に見えていることではなく、その裏で仕組みとしてどう作られているのか、人や物の流れはどうなっているのか、お金はどう流れているのか、を想像してみるのです。

うまいビジネスモデルが成り立つ条件としては、以下の2つがあると思っています。

  • エンドユーザーや顧客に、既存のモデルより高い価値/低いコストが提供される
  • ビジネスモデルの関係プレイヤー全員にWin-Winが成立する

ビジネスモデルという仕組みをイメージするために、顧客にとってどんな価値が提供されているのかを考えてみる。何に価値があるから、人はそれにお金を払うのか。単にモノが欲しいからではなく、その先の体験自体に価値があることもあります。

消費者がお金を払ってまで手に入れたいその価値を提供するために、どんな工夫がされているのかも考えてみる。値段を下げるためにどんな工夫をしているのか、そもそも、どんなコスト要因があり、どこが下がっているのか・下げられそうなのか。

ビジネスモデルに関係しているプレイヤーはどれだけいて、それぞれがどんな役割を果たしているのか。お互いに win-win が成り立っているか、成り立っているように見えればWinは具体的に何か。

などなどを色々とイメージしてみる。言うは易しですが、仕組みを理解するために、ヒト・モノ・カネ・情報の流れを考えてみる。もちろん、実際の仕組みは見えていないことも多いので想像の域を超えないこともあります。目的は仕組みを完璧に理解することではなく、あくまで「仕事以外からどう学ぶか」なので、色々と考えてみるプロセス自体に意味があると思っています。そこからヒント・アイデアを得られれば OK という。

今回のエントリーでは、仕事以外から何を学ぶか、どうやって学ぶかを考えてみました。3つあって、

  • 身の回りを観察してみる
  • 視点を変える
  • ヒト・モノ・カネ・情報の流れを考える

そのために重要だなと思ったのが、「好奇心」と「考えることを自体を楽しむこと」。そもそもとして、仕事以外から学ぶって、やらされ感があったり楽しくなければ長続きはしないような気がします。

身の回りへの興味関心があって、それに対して好奇心が湧く。なぜとかどうなっているのかを考えることを楽しんでみる。こういうマインドを持ちたいなと思っています。


最後に


日経ビジネスのインタービュー記事 では、出口社長が言っている内容でもう1つおもしろかったことがあります。

コミュニケーション、とりわけウェブでのコミュニケーションは、その舞台での中心が20代30代です。だったら彼ら彼女らの文法に従うのが筋、というものです。以来、私は、ライフネット生命に関するウェブ・コミュニケーションやPR、宣伝戦略については、20代社員の言う通りにする、と決めました。

人には得手・不得手があります。スーパーマンでもない限り、苦手なことやよくわからない分野は誰もが持っている。自分に不得意分野があることは把握できていても、それを認めることは時として難しいもの。年齢が上がったり、ポジションが上になるほど、なかなか受け入れがたいのかもしれません。わかっていても素直になれない、「負け」を認められない。

出口社長は違います。インタビュー記事の中で、20代社員の企画に全く理解できずに大反対だったものの、実際に企画をやってみるとその20代社員のほうが正しかったと出口社長は言っています。そして、「アホは、私でした」と。

それ以来、出口社長は、ライフネット生命のWebコミュニケーションや PR・宣伝戦略については、20代社員の言う通りにする、若手に任せきると決めたそうです。社長である立場の人がここまで言い切れるのって、すごいことだなと。


最後に、以下の本は仕事以外からどうやって学ぶかの、① 身の回りを観察してみる、② 視点を変える、③ ヒト・モノ・カネ・情報の流れを考える、でそれぞれ参考になると思うものです。






※参考情報
20代の社員に「アホは出口さんです」と言われました インターネットのコミュニケーション 出口治明編|日経ビジネスオンライン

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。