レオス・キャピタルワークスのロゴ
ひふみ投信の 「ひよこ塾」 というセミナーに行ってきました。
参加した 「ひよこ塾」
主催は、ひふみ投信を直販で運営しているレオス・キャピタルワークスです。
「ひよこ塾」 というセミナー名から連想できるように、対象者は 「これからひふみ投信に投資してみようかな」 という人です。セミナーでは、レオスについて、ひふみ投信の仕組みや特徴、運用の方法、などを説明してもらえました。
説明を担当いただいたのは二人でした。取締役・マーケティング部長の方と運用部のシニアアナリストの方です。
運用チームの方がアサインされたのは、なんと私がしたセミナーの事前に、参加申し込み時にした質問を見てとのことでした。申し込みの際に 「投資する自分のお金がどのように使われているか (運用をどうしているのか) 知りたい」 と書いていました。
当日の参加者は私含めて2名でした。全員で4名だったので、質問もたくさんでき、色々と勉強になるセミナーでした。
以下、当日のメモからひよこ塾セミナー内容を残しておきます。なお、書いている順番は一部セミナーでの説明順番と変えています。
ひふみ投信の投資哲学
投資哲学は3つあります。
1. 当ファンドの信託財産を長期的に成長させるために、世界経済、社会が変化し続けることを前提として、その変化に対して先見性を持って柔軟に対応します。
2. また市場動向も常に変化し続けますが、特定の運用手法やスタイルにこだわらず、企業の価値と現在の市場価値との差 (割安であること) やその企業の価値が時間とともに増加することに着目して、長期的な選別投資をします。
3. 人間は本来、社会に対して付加価値を創りだすことができますが、企業においても経営者や従業員をはじめとした多様な関係者 (ステークホルダー) が各企業における独自の価値を創造し得ることを信じ、その企業の価値変化の可能性を、豊かな想像力を持って判断します。
参考:ひふみ投信情報 運用について|レオス・キャピタルワークス株式会社
ひふみ投信の特徴
特徴は次の5つです。
- 最小のコスト負担 (信託報酬は業界最安水準)
- 信託報酬還元方式 (長期保有を支援)
- 直販によるコミュニケーション
- ゼロからの投資支援 (毎月こつこつ積立)
- レオス独自の運用哲学
1つ目の最小のコスト負担について、買い付け時と解約時のコストはゼロ、つまり、買付手数料と信託財産保留額はありません。コストは信託報酬のみで1,029% (税込) です (2013年4月現在) 。
2つ目の信託報酬還元方式について、これは長期で保有するお客にメリットがある商品設計です。具体的には、次の2つです (2013年4月現在)
- 5年以上保有で信託報酬の 0.2% 還元
- 10年以上保有で信託報酬の 0.4% 還元
100万円分のひふみ投信を保有した場合の信託報酬還元イメージ
引用:ひふみ投信とは|レオス・キャピタルワークス株式会社
還元分をひふみ投信の買付資金に充てます。
つまり、実質信託報酬が、5年以上で 0.829% 、10年以上で 0.629% (税込) になるというものです。日本のアクティブ投信の場合は、通常は信託報酬は 1.3~2% 程度です。ひふみ投信は 1.029% でも低い上に、長期保有のインセンティブがあるのは魅力です。
ひふみ投信の運用の考え方
ひふみ投信では、国内中小株を中心に組み入れています。市場価値が割安と考えられる銘柄を選定する長期投資です。
方針は 「守りながら増やす」 です。
ひふみ投信の特徴的は、保有資産に占める現金比率を 0% ~ 50% で調整していることです。今後の相場見通しで構成比を変えているそうです。
将来の見通しで現金比率を変える
引用:ひふみ投信情報 運用について|レオス・キャピタルワークス株式会社
上の図のように、今後は株価下落の想定では現金比率を上げ (株式比率を下げる) 、上昇想定で現金比率を下げます (株式比率を上げる) 。
リスク資産である株式の割合を調整するという考え方です。つまり、下がりそうだと判断したら現金を増やしマイナスを最小限にします。上がりそうだと判断したらリスク資産である株式を増やして収益を取ります。
過去に現金が最大の 50% になったのは2回あったとのことでした。
運用プロセス
銘柄の組み入れ判断プロセスは以下の4ステップです。個人的に興味のある内容でした。事前質問の 「投資する自分のお金がどのように使われているか (運用をどうしているのか) 知りたい」 部分です。
- 候補銘柄のスクリーニング:Reos Scoring Model (RSM) という独自のモデルで機械的に候補となる企業を選定
- 企業面談:候補企業と面談。電話や会って直接話を聞く。事業内容・業績・今後の見通しなど。この時に社長の 「熱意」 など、事前調査での数字ではわからない情報も重視している
- レポート作成:この企業は良いと担当者が判断したら、面談内容や各種の定量分析や定性分析結果をレポートにする。チームに提出
- 投資判断のディスカッション:提出レポートをもとにチーム (2013年4月現在で6名) でディスカッション。運用の方曰く 「チームでよく話し合う。ディスカッションの場が多い」
最初のスクリーニングで出てきた、独自モデル Reos Scoring Model (RSM) についてです。
やっているのは、機械的に 「業績が良いのに株価が割安な企業」 の選定とのことです。全上場企業について 1~10 にランク付けをします。モデルへの使用データは、PER・PBR・ROE、業績、株価や出来高などです。モデルは常に改善をかけるようにしているそうです。
運用の方が説明で強調されていたのは、企業面談のプロセスを重視している点でした。直接の対話や現場調査をし、「足で稼ぐ調査をしている」 そうです。
投資してよい企業かどうかを見るポイントは、次の通りです。
- 経営の質:経営者・経営理念・企業文化・経営戦略
- 商品戦略:マーケティング・販売チャネル・プロダクトミックス
- 企業の歴史:過去から現在、足元の些細な変化
- 競争力の源泉を把握:他社が真似できない価値
いかにその候補企業の本質を見い出せるかどうかです。
運用チームの方のお話 (現場から変化の兆しをとらえる)
ここからは、セミナー終了後に個別に運用担当者の方とお話しした内容です。セミナーが終わって1時間近く話をさせていただきました。
お話をうかがって印象的だったのは、運用をするにあたって 「自分の目で色んなことを見るようにしている」 ことでした。
例えば、会社から帰る時はあえて最寄り駅ではなく2駅分くらい歩き、街の 「変化の兆し」 を直に感じるようにしているそうです。
というのも、ちょっとした変化や気になることは景気の兆候が変わるサインだったりし、そこで得られる情報・仮説を企業面談でぶつけたりしているそうです。こうした変化は各種統計データに表れるもっと前の段階で、この時点でいかに察知できるかです。
他にも具体例としては、1週間に1度、同じ人に靴磨きをしてもらっていることです。その人はある百貨店の前で靴磨きを何十年もやっている方で、会話を通じて世の中の変化をつかむように定点観測しているそうです。
現場を直に見て兆候を捉える事例は他にも教えていただきました。
最近ではロイヤルホスト社長から 「肉料理が良く売れるようになってきている。景気が上向いているのかもしれない」 との話を聞いて、実際にファンドマネージャーの藤野さんと行ってみたとのことでした。確かお店では肉料理がよく注文されていたそうです。自分たちも肉料理を満喫されたエピソードも教えてもらいました。
自分の目で直接見るというスタンスは共感しました。現場を見る大切さだと思っていて、マーケティングやリサーチでも、データだけではなく実際にお店や消費者を見たり、サービスを直接使ってみるなど、体感が大事だからです。
ひふみ投信の哲学の1つ目に、「・・世界経済、社会が変化し続けることを前提として、その変化に対して先見性を持って柔軟に対応」 とあります。自分の目で色々と見ることで先見性をつかもうと日々努力されている印象でした。自分で見て触れて感じたことから、世の中の変化というインサイトを見つけます。
運用の方との話では、お互いの投資の考え方・方法や実際に何に投資しているか、など率直な話ができて良かったです。
共通意見は、投資を続けることで世の中の見え方が変わることでした。世界のニュースが自分 (の投資) につながるようになり、「2D だった世界が 3D になる」 「人生はこんなにもカラフルなのかと思った」 とおっしゃっていたのが印象的でした。
私もその通りだと思います。日々入ってくるニュースが自分事化できるようになります。ニュースの背景 (Why) や影響 (So what) を考えることができます。
最後に
今回の 「ひよこ塾」 セミナーでは、レオスやひふみ投信についての概要説明だけではなく、実際に運用を担当されているチームの 「中の人」 と話せたのが収穫でした。
具体的な運用イメージが浮かび、「投資信託」 という仕組みをリアルに学ぶことができました。アサインいただいたことにあらためて感謝です。
資産運用や投資の過去エントリーはこちらです。
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