インターネットの本質は以下の3つだと思っています。
今回の参院選からネット選挙が解禁されました。現時点でのネット選挙解禁について考えてみます。
ちなみに、ネット選挙解禁と言っても、できるようになったのはネットによる選挙活動であり、ネットからの投票はできません。ネット選挙運動解禁で期待される効果の1つに投票率アップがありますが、ネット選挙投票もできるようになると投票率は上がるでしょう。ただ、アメリカでもまだネット投票は実現されておらず、現状では難しい印象です。個人的にはせめて投票券を往復はがきにして、はがき投函で投票できるといいなと思っています。
■個の情報発信
さて、本題。ネットの本質で書いた1つ目の「個の情報発信」。これをネット選挙解禁に当てはめてみます。
ネット選挙解禁により、各政治家が自分のホームページ、ブログ、Facebookやツイッターなどから、選挙公示後も情報発信ができるようになりました(更新できるのは投票日前日まで)。
従来であれば、公示後の立候補者の主な選挙活動は、ポスターの掲載、ビラ配布、街頭演説、選挙カーによる連呼。いつも思っていたのが、これらの活動は多くの有権者にとっては深い情報があまりわからないということ。特に接触する機会が多いボスターや選挙カーからわかるのは、立候補者の名前、所属政党、抽象的な主張くらい(街頭演説はずっと聞いていれば、その政治家は何をしたいのかはわからなくはないですが)。
つまり、政治家を選ぶための情報が選挙活動量やかけたコストの割に足りない。結局、投票する政治家を選んだ理由が雰囲気、みたいな状況になります。ポスターの感じや選挙カーの名前・よろしくお願いします連呼だけの印象から選ばれるという。
「個の情報発信」ということで期待したいのは、政党よりも政治家個人について、この政治家の主張/活動は共感できるので「この人を応援したい」という政党依存からの脱却です。支持政党とは別に応援したい政治家ができやすい環境ができるようになってほしい。そうなると、政治が身近な存在になります。政治家が主張することは社会の問題と解決なので、自分事して考えられるようになることで政治参加意識の高まり、ひいては投票率アップまで。
マスメディアに出る政治家は各党の代表、もしくはそれに近い限られた政治家だけです。ネットも選挙活動に使えることで、これまでは2割の政治家がマスメディアで8割の情報発信をしていたのが(この数字はイメージです)、多くの政治家がネット上で主張できることで、多様な意見/議論が生まれることを期待です。
■双方向性
ネット選挙解禁によりもう1つ期待したいのが、政治家と有権者の双方向のやりとりです。従来であれば、政治家→有権者への一方向でのやりとりが中心でした。有権者の声や意見がなかなか政治家サイドに届かない。政治家とのタウンミーティング(対話集会)も存在しますが、参加できる人、そもそも存在を知ることも難しかったりします。
ネットという政治家とコミュニケーションできる仕組みが増えたので、ここでも政治家を身近に感じるようになったり、政治との距離感が縮まる。結果的にネットでの双方向性から有権者の声が政治により反映されることを期待したいです。
■履歴が残る
オンラインでの活動はオフラインに比べて履歴が残りやすい特徴があります。
ネット選挙の視点で考えると、政治家のネット選挙活動にログが残ることになります。街頭演説であれば、情報としてはフローですが、演説動画をネット上のYouTube等にアップすればストック情報として蓄積されます。
政治家にとっては自分の発言や情報発信の履歴が残るので、それだけへたなことは言えない。対抗候補者の批判も根拠が求められたりなど、こうした積み重ねにより選挙活動の質の向上を期待したい。
もう1つ期待したいのは、選挙活動におけるデータ活用やマーケティング視点の取り入れです。履歴が残るということは、データとして蓄積されます。データを使って、政治家にとっては自分の選挙活動の効果を可視化できたり、分析結果から次の施策を立てる。データを使った選挙活動の仮説検証ができるようになれば、もう少し科学的な選挙活動になってほしいなと。
選挙活動におけるデータ活用は今後の課題になるし、できる政治家と取り組みをしない政治家では、支持だったり影響力の差が出てくるはずです。
■その他の期待
ネット選挙解禁について、①個の情報発信、②双方向性、③履歴が残る、の視点で考えてみました。あらためて思うのは今回からのネット選挙解禁により期待したいのは、
3点目の投票率については、今回はもしかすると下がるように思っていますが、これはネット選挙解禁のプラスの効果よりも、自民圧勝の各種報道や、選挙の焦点が曖昧(自民以外の等の存在感が低いように思う)などの構造的な理由で、有権者の特に浮動票層の投票率が減ると予想しています。
ネット選挙による投票率アップの効果は、明確な支持政党/政治家がいない浮動票だったり、支持政党はあるけど投票に行くのが面倒と思っている人たちに対して、投票所に行ってもらう点にあると思っています。
アメリカ大統領選では、オバマの奥さんであるミシェル夫人がツイッターのダイレクトメッセージで「投票に行きましょう」というメッセージが有権者に送られたとのことで、ファーストレディから直接そう言われれば効果も大きいと思いました。オバマに入れてください、ではなく投票に行こうという呼びかけ方もうまい。
ネットでの選挙活動が一般的になると、ネットとマスメディアの役割もこれまでとは違うものになるはず。マスメディアの報道がネットでの政治家の活動の後追いになるのではなく、マスメディアならではの、各種争点の整理だったり分析が報道されれば、ネットvsマスメディアではなく、ネット&マスメディアとお互いが補う構図です。
今回の参院選で日本でもようやくネット選挙解禁がされました(公示後〜投票日前日)。初のネット選挙ということで、ネットでできること、課題も見えてきます。投票が終わり選挙結果が出れば、ネット選挙活動が終わりではありません。政治家にとっては、むしろスタートであり、今後もどれだけ自分の主張や活動をネットも使って、有権者に知ってもらうか。有権者と政治家の双方向のコミュニケーションを続けられるか。ネット選挙解禁をきっかけに日本の政治の質が上がり、長い目で見て日本の社会をより良いものに変えていってほしいです。
- 個の情報発信
- 双方向性
- 履歴が残る
今回の参院選からネット選挙が解禁されました。現時点でのネット選挙解禁について考えてみます。
ちなみに、ネット選挙解禁と言っても、できるようになったのはネットによる選挙活動であり、ネットからの投票はできません。ネット選挙運動解禁で期待される効果の1つに投票率アップがありますが、ネット選挙投票もできるようになると投票率は上がるでしょう。ただ、アメリカでもまだネット投票は実現されておらず、現状では難しい印象です。個人的にはせめて投票券を往復はがきにして、はがき投函で投票できるといいなと思っています。
■個の情報発信
さて、本題。ネットの本質で書いた1つ目の「個の情報発信」。これをネット選挙解禁に当てはめてみます。
ネット選挙解禁により、各政治家が自分のホームページ、ブログ、Facebookやツイッターなどから、選挙公示後も情報発信ができるようになりました(更新できるのは投票日前日まで)。
従来であれば、公示後の立候補者の主な選挙活動は、ポスターの掲載、ビラ配布、街頭演説、選挙カーによる連呼。いつも思っていたのが、これらの活動は多くの有権者にとっては深い情報があまりわからないということ。特に接触する機会が多いボスターや選挙カーからわかるのは、立候補者の名前、所属政党、抽象的な主張くらい(街頭演説はずっと聞いていれば、その政治家は何をしたいのかはわからなくはないですが)。
つまり、政治家を選ぶための情報が選挙活動量やかけたコストの割に足りない。結局、投票する政治家を選んだ理由が雰囲気、みたいな状況になります。ポスターの感じや選挙カーの名前・よろしくお願いします連呼だけの印象から選ばれるという。
「個の情報発信」ということで期待したいのは、政党よりも政治家個人について、この政治家の主張/活動は共感できるので「この人を応援したい」という政党依存からの脱却です。支持政党とは別に応援したい政治家ができやすい環境ができるようになってほしい。そうなると、政治が身近な存在になります。政治家が主張することは社会の問題と解決なので、自分事して考えられるようになることで政治参加意識の高まり、ひいては投票率アップまで。
マスメディアに出る政治家は各党の代表、もしくはそれに近い限られた政治家だけです。ネットも選挙活動に使えることで、これまでは2割の政治家がマスメディアで8割の情報発信をしていたのが(この数字はイメージです)、多くの政治家がネット上で主張できることで、多様な意見/議論が生まれることを期待です。
■双方向性
ネット選挙解禁によりもう1つ期待したいのが、政治家と有権者の双方向のやりとりです。従来であれば、政治家→有権者への一方向でのやりとりが中心でした。有権者の声や意見がなかなか政治家サイドに届かない。政治家とのタウンミーティング(対話集会)も存在しますが、参加できる人、そもそも存在を知ることも難しかったりします。
ネットという政治家とコミュニケーションできる仕組みが増えたので、ここでも政治家を身近に感じるようになったり、政治との距離感が縮まる。結果的にネットでの双方向性から有権者の声が政治により反映されることを期待したいです。
■履歴が残る
オンラインでの活動はオフラインに比べて履歴が残りやすい特徴があります。
ネット選挙の視点で考えると、政治家のネット選挙活動にログが残ることになります。街頭演説であれば、情報としてはフローですが、演説動画をネット上のYouTube等にアップすればストック情報として蓄積されます。
政治家にとっては自分の発言や情報発信の履歴が残るので、それだけへたなことは言えない。対抗候補者の批判も根拠が求められたりなど、こうした積み重ねにより選挙活動の質の向上を期待したい。
もう1つ期待したいのは、選挙活動におけるデータ活用やマーケティング視点の取り入れです。履歴が残るということは、データとして蓄積されます。データを使って、政治家にとっては自分の選挙活動の効果を可視化できたり、分析結果から次の施策を立てる。データを使った選挙活動の仮説検証ができるようになれば、もう少し科学的な選挙活動になってほしいなと。
選挙活動におけるデータ活用は今後の課題になるし、できる政治家と取り組みをしない政治家では、支持だったり影響力の差が出てくるはずです。
■その他の期待
ネット選挙解禁について、①個の情報発信、②双方向性、③履歴が残る、の視点で考えてみました。あらためて思うのは今回からのネット選挙解禁により期待したいのは、
- 政治家/党が身近な存在になり、より知ることで選びやすくなる
- 有権者の政治参加の促進
- 投票率アップ(特に若年層)
3点目の投票率については、今回はもしかすると下がるように思っていますが、これはネット選挙解禁のプラスの効果よりも、自民圧勝の各種報道や、選挙の焦点が曖昧(自民以外の等の存在感が低いように思う)などの構造的な理由で、有権者の特に浮動票層の投票率が減ると予想しています。
ネット選挙による投票率アップの効果は、明確な支持政党/政治家がいない浮動票だったり、支持政党はあるけど投票に行くのが面倒と思っている人たちに対して、投票所に行ってもらう点にあると思っています。
アメリカ大統領選では、オバマの奥さんであるミシェル夫人がツイッターのダイレクトメッセージで「投票に行きましょう」というメッセージが有権者に送られたとのことで、ファーストレディから直接そう言われれば効果も大きいと思いました。オバマに入れてください、ではなく投票に行こうという呼びかけ方もうまい。
ネットでの選挙活動が一般的になると、ネットとマスメディアの役割もこれまでとは違うものになるはず。マスメディアの報道がネットでの政治家の活動の後追いになるのではなく、マスメディアならではの、各種争点の整理だったり分析が報道されれば、ネットvsマスメディアではなく、ネット&マスメディアとお互いが補う構図です。
今回の参院選で日本でもようやくネット選挙解禁がされました(公示後〜投票日前日)。初のネット選挙ということで、ネットでできること、課題も見えてきます。投票が終わり選挙結果が出れば、ネット選挙活動が終わりではありません。政治家にとっては、むしろスタートであり、今後もどれだけ自分の主張や活動をネットも使って、有権者に知ってもらうか。有権者と政治家の双方向のコミュニケーションを続けられるか。ネット選挙解禁をきっかけに日本の政治の質が上がり、長い目で見て日本の社会をより良いものに変えていってほしいです。