脳には妙なクセがある という本をご紹介します。著者は脳研究者である池谷裕二氏です。脳の最先端の研究結果がわかりやすく書かれています。
笑顔になるから楽しい
様々な脳の 「クセ」 が書かれていて、中でもおもしろいなと思ったのは、脳と身体の関係でした。
例として説明があったのは、楽しいという気持ちと笑顔の関係です。一般的な理解としては、楽しいから笑うという順番でしょう。
ところが研究からわかってきたのは、笑顔をつくるから楽しいという逆の因果です。その研究によると、笑顔の表情をつくるとドーパミン系の神経活動が変化をするそうです。ドーパミンは快楽に関係した神経伝達物質なので、笑顔をつくることによって楽しくなります。
身体変化が先、脳が後
本書によれば、このような身体の変化が先で、脳が後という順番は笑顔だけに限らないようです。恐怖や嫌悪の表情をすることで、脳に恐怖や嫌悪の感情を生むスイッチが入るそうです。
表情だけでなく姿勢でも当てはまるとのことです。
ある実験では、姿勢が自己評価に与える影響を調べました。背筋を伸ばした姿勢と背中を丸めた姿勢のそれぞれで、被験者に自己評価をしてもらったところ、姿勢を正したほうが自信を持てる結果が出たようです。日本では柔道や弓道、茶道の世界では姿勢の重要性が強調されますが、脳の仕組みにおいても理にかなっているのでしょう。
このように表情や姿勢という身体変化を通じて、その行動に見合った心理状態を脳が生み出すのです。行動 → 意識変化という順番です。
行動を変えて意識を変える
誰にでも一度は経験があると思うのは、面倒だと思うこともやり出すと気づいたら思った以上にはかどることです。
例えば、手をつける前は掃除を面倒だと感じていても、いざ掃除を始めてみると気分が乗り部屋がすっかりきれいになったという経験です。
脳と身体の関係を一般化すると、身体行動が先で、脳でそれに見合った感情が形成されるということです。得られた示唆としては、行動を変えることで意識を変えることです。
「何ごとも始めた時点で、もう半分終わったようなもの」 とはよく言ったものです。迷うようなことも、とりあえず行動をしてみるのです。後から気持ちはついてくるはずです。
身体行動が先で、それに伴う感情が形成されるという脳の働きは、興味深い話です。
本書で扱われている他のトピック
本書では、他に以下のようなトピックが扱われています。
- 「行きつけの店」 にしか通わない理由
- 何事も始めたら 「半分」 は終わったもの?
- 脳はなぜか 「数値」 が苦手
- 「心の痛み」 も 「体の痛み」 も感じるのは同じ部位
- 歳をとると、より幸せを感じるようになる理由
- 「今日はツイてる」 は思い込みではなかった
- 脳は 「自分をできるヤツ」 だと思い込んでいる
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