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何年ぶりかの切符乗車の不便さで実感した Suica というイノベーション




イノベーションとは、現在はない 「未来の当たり前」 をつくることです。

現時点やその当時にはないものでも、イノベーションを起こす人にはあるべき姿として見えています。一方でその未来は、多くの人々はまだ気づいていないことです。

イノベーション前にはなかったもので、21世紀の今では、日本で当たり前になった代表例はインターネットや携帯電話です。


イノベーションを実感した日


先日、「当時はないもので、未来の当たり前になったもの」 をあらためて体験する機会がありました。

交通電子カードである Suica (スイカ)です。

私は東京23区内に住んでいます。通勤や休日に出かける際に、地下鉄や JR を利用します。地下鉄は、東京メトロと都営地下鉄の両方を使っています (メトロは株式会社、都営地下鉄は東京都がそれぞれ運営) 。

先日、出かけた時に、交通電子カードである Suica (スイカ) を持っていくのを忘れてしまいました。気づいたのが駅の改札に入る時でした。家に戻る時間がなかったため、切符を買って地下鉄に乗りました。

スイカではなく切符を使うことは、こんなにも不便なのかとあらためて気づきました。


切符を発券機で買うことの不便さ


普段からスイカを使っているので、発券機を利用する機会が私はほとんどありません。改札を通る前に切符を買うこと自体が面倒に感じました。

さらに、スイカを忘れて持っていないので、切符を買うのに現金で支払いました。財布を出し小銭を投入口に入れることが、めんどくささに拍車をかけました。

もう1つ、これは東京での地下鉄はメトロと都営地下鉄の2つがあることで、面倒なことがありました。

メトロから都営に乗り換える場合 (その逆も)、切符は乗り換え専用のものを発券機で選ばなければいけません。そのことが頭にありませんでした。

メトロから都営に乗り換えるときにメトロから出る改札で、駅員さんに伝え切符を交換してもらいました。

改札を出る前に気付いたので、少しの不便ですみました。もし、気付かずに改札に切符を通した後であったら、もっと面倒になるところでした。

ちなみに、メトロと都営の乗換え用切符を買うためには、発券機で先に乗換えボタンを押すことが必要です。その後に、行き先までの運賃を選び、切符を購入します。


IC 専用改札が通れない


スイカなどの電子マネーカードが一般化したことで、切符投入口のない IC 専用改札があります。普段はスイカを使っているので、気づかないことでした。

スイカ等を使う人にとっては、切符投入口があってもなくても関係がないことです。しかし、切符使用者にとっては、切符が使えない改札は前の人が通っていても、自分は出られないのです。

通勤/通学の時間帯で人の流れが多いタイミングでは、切符が通れる改札を見つけて、流れを乱さずに入ったり出たりしないといけません。


切符のサイズが小さいことの不便さ


これは切符で地下鉄に乗らざるを得ない今回の状況で、初めて気づきました。切符のサイズが小さいことです。

切符はポケットに入れていました。改札を通る前に切符を出そうとした時、ポケットからすぐに出ませんでした。

なぜこのような状況かと言うと、他に自分のポケットに入っていたスマホに比べて切符が相対的に小さいために、切符を手にしてさっと出すことができなかったです。

普段、スイカはパスケースに入れてポケットから出しています。パスケースとスマホでは手にする感覚的なサイズは同じです。これが当たり前になっているので、普段のポケット内でケースをつかみ取り出すことに比べ、切符は小さくいつも通りにできませんでした。

切符の大きさは、自分の人差し指と中指を合わせた面積よりも小さいサイズです。このサイズのものがポケットに入るケースは、最近はほとんどないことに気づきました。

切符が、他に比べて相対的に小さいことでこのような不便がありました。


未来の当たり前になった Suica


以上の3つの面倒なことを体験したことで、あらためてスイカはイノベーションだと実感しました。

当たり前のように使っていることで、スイカなどの交通電子カードがなかった当時からすると、今の状況はとても便利になっています。スイカが開発され普及したことで 「未来の当たり前」 になったのです。


Suica の開発ストーリー


スイカが開発された背景や経緯などが書かれた本が Suica が世界を変える - JR 東日本が起こす生活革命 です。

本書によれば、開発背景は大きく2つあったと言います。

  • スイカを JR 東日本の経営を支える新たな柱にする必要があった
  • 「改札機や券売機は本当に便利なのだろうか?」 という疑問から始まった

読み進めると、世の中にない新しいことを開発する難しさが次々に出てきます。

スイカの開発コンセプトが固まり、社内でも経営陣による開発 GO が出ますが、その後の開発プロセスは苦難の連続だったようです。

私自身も、過去の仕事で新規事業開発を担当したことがあります。新規開発では、予想外の問題が次々に発生します。

事前に予想できていたことは少なく、想定外の問題がこのタイミングで起こるのかという状況で発生しました。本書でスイカの開発プロセスの話を読むと、うなづける内容が多くありました。

2016年現在、スイカは少なくとも都市部で公共交通機関を利用する人々には、当たり前の存在になりました。しかし、切符の時代はそうではありませんでした。

スイカは、「未来の当たり前」 というイノベーションでした。



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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。