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マーケティングリサーチは大きく分けると、定量調査と定性調査があります。
今回は、定性調査について、どうすれば価値のある調査ができるかを考えます。
エントリー内容です。
- 奥にある気持ち
- 調査目的と分析視点
- インタビュー調査での分析方法
奥にある気持ち
定性調査で奥にある気持ちを理解する
定量調査は、生活者の行動や評価を数で理解できるように調査します。
定性調査は、生活者の行動や考えの基になっている気持ちを探り出します。定性調査で重要なのは、生活者の口から出た言葉の意味を深掘り、奥にある気持ちを理解することです。
奥にある気持ちとは、「言わなくてもいいかな」 「そういえばそんな気持ちかも」 「自分でも気付いていなかったけど、言われてみれば確かにそう」 などの、普段の生活では出てきにくい感情です。
奥の気持ちがどう影響するかを見極める
定性調査でポイントになるのは、こうした奥の気持ちが、生活者の行動や態度、意見にどのように影響しているのかを見極める姿勢です。
例えば、環境に良いエコな商品についてアンケートをしたとします。アンケートの結果、環境に配慮されたことには高評価が得られました。
さらに、定性調査の1つであるグループインタビュー調査で深掘りすると、アンケート調査 (定量調査) ではわからなかった奥の気持ちが見えてきます。
- 確かにエコな商品は良いと思うけど、実際に自分が買う日用品は再生紙使用は高いからあまり買っていない
- 環境に配慮してゴミの分別を細かく分ける必要があるのは理解できるけど、分別が面倒で燃えるゴミとして捨ててしまっている
- 子どもには節電を日頃から伝えているけど、自分はテレビのつけっぱなしにしたり、使っていない部屋の電気をつけたままにしている
表面的な意見は、環境対策は大事というものです。上記ではそれぞれの前半で言われています。
後半が奥にある気持ちです。インタビューからあらためてわかった、実際の気持ちや態度との違いから得られる示唆は次のようなものです。
- 自分の行動が環境に良いことをしている実感があり、かつ面倒でなく気軽にできるとよい
- 子どもの手本になるような親でありたい
定性調査では、生活者の行動に影響する気持ちや感情を探っていきます。
発言や意見の奥にある気持ちを知り、それが本質的なものであれば、その気持ちから起こるである行動の仮説が持てます。ここに定量調査では到達しにくい、定性調査の価値があります。
調査目的と分析視点
定性調査では、調査目的と分析視点が重要です。
- 調査目的:その調査を行って何を結論付けるか。調査をやった結果、何が明らかになるのかの目的を明示する
- 分析視点:そのためには、どういう視点で分析し、どんな論点があるのかを整理するか
例えば、マーケティングコミュニケーションで、既存ユーザーの流出を防ぐための施策を考えるとします。マーケティングの課題は、ユーザーがよりそのサービスを魅力に思うようなアピールをどうするかです。
この場合の調査目的は、使わなくなりつつある人がまた使ってくれるようなコミュニケーションをどうすればよいかのヒントを調査から得ることです。
分析視点は、次のようなことが考えられます。
- ヘビーユーザー、ライトユーザー、休眠ユーザーの違いは何か
- ヘビーユーザーとライトユーザーの利用状況はどう違うのか (単に利用頻度や時間ではなく、利用シーンに具体的にどういう違いがあるか)
- 以前は使っていたユーザーが休眠状態になるのは何がきっかけか
- 休眠ユーザーは、代わりにどういうサービスを使っているのか
- ヘビーユーザーは具体的にどこに価値を感じて使っているのか
このような分析視点それぞれで、ユーザーや生活者の奥にある気持ちは何かを深掘りします。
インタビュー調査での分析方法
書籍 実践グループインタビュー入門 で著書の梅沢伸嘉氏は、定性調査の分析を次のように定義しています。
特定のマーケティング目的と課題を達成するために、インタビュアーによって聴取された情報の中から、調査課題に照らして読み取った記録を分け、情報を構造化し、各調査課題に答えを与え、それを統合して調査目的を達成する。
(引用:実践グループインタビュー入門)
ポイントは、調査目的を果たすために、事前に検討した分析視点に沿って分析することです。
定性調査の分析、特にインタビュー調査の分析とは、調査対象者の発言を最終的にはマーケティングに役に立つ情報に変えるためのプロセスです。分析では単に整理や分類をするだけではなく、解釈や発見をすることが大事です。
インタビュー調査分析の難しさであり、醍醐味でもあるのは、発言を分類し構造化する時に、調査課題の答えを出すように解釈と発見をしていくことです。
新しい発見が出て、たとえその時は思いつきだったとしても、その思いつきには自分の中で何らかの根拠があるはずです。その根拠を深掘りし理解することが、解釈や発見につながっていきます。
「定性調査」 がわかる本 という本では、インタビュー調査での分析ステップを次のように説明しています。
- インタビューによって得られた発言記録を、調査課題 (= 分析視点) や調査目的を意識して読み取る
- 発言内容を細かく要素に分ける
- 分けた要素を構造化 (関係付けや統合化) する
- 構造化情報から、論理的な解釈や発見を見出し、調査課題に答えを出す
- 最終的には調査目的に答えを与え、マーケティング目的に役に立つ情報を提供する