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ザ・会社改造 - 340人からグローバル1万人企業へ という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の構成
- 学びの多い本
- 失敗をどう活かしたか
本書の構成
本書の著者は三枝匡氏です。三部作である 戦略プロフェッショナル 、 経営パワーの危機 、 V 字回復の経営 に続く、四作目です。
ストーリーでは、実在の株式会社ミスミグループを舞台に、主人公である著者も三枝の実名で描かれます。
これまでの三部作では、ストーリーとして扱われた事業再生にかける期間は、いずれも2-3年でした。本書は、時間軸が長いです。著者がミスミで CEO を務めた12年で、その分、多岐に渡るストーリーです。それでいて1つ1つの改革は連動し、全体の戦略に沿っています。
学びの多い本
本書は会社経営者によって書かれた本です。経営に参考になるだけではなく、リーダーシップ、組織マネジメント、戦略論、マーケティング、営業、など、様々な視点で学びが多く、示唆に富む内容でした。
本書について著者の三枝氏は次のように書いています。
読者がこの本を 「ミスミだけの特殊な話」 として読むなら、この本から学べることは大幅に減ってしまうだろう。
ミスミの話ではあるが、そこに現れる経営の現象や人間の行動、感情、戦略の理論などには、どこの会社にも通じる普遍性や汎用性が含まれている。読者がそれを知って読むなら、本書からの学びの量は何倍にもなる。それは、これまでの3部作でも同じだった。
もし私が、ミスミの社長就任を断り、別の会社で CEO を引き受けていたら、そこでも大きな改革を実行し、その経験を CEO 退任後に出版した可能性が高い。
その場合、その本と本書のいずれを読んでも、読者が学び取る論理はかなり重複するだろう。「どこの会社に行っても同じ」 。それが経営や戦略の 「普遍性」 である。共通して適用できる普遍的フレームワークをたくさん身につけることが、経営者の力量を上げる武器になる。
(引用:ザ・会社改造 - 340人からグローバル1万人企業へ)
本書を通じて、著者が強調する普遍的な論理やフレームワークが紹介されます。経営課題や現場での問題解決にどう活かされたかを知ることができます。
例えば、問題解決のフレームワークが興味深かったです。こちらは、別のエントリーで書いています。
もう1つ、自分のキャリアをどう磨くかという視点でも示唆があり、書きました。
失敗をどう活かしたか
本書が興味深く読めるのは、著者が企業経営において改革 (本書では 「改造」 と表現) を進めていった中で、失敗や試行錯誤のプロセスが具体的にリアルに描かれている点にあります。
美談だけではなく、改革の失敗や挫折が、関係者の証言と併せて詳しく書かれています。
印象に残った話は3つありました。
[印象に残った話 1] 成長を求めた海外進出
1つめは、成長を求めた国際戦略の本格展開としての中国進出です。
中国事業を始めるにあたって、当初の立ち上げスケジュールよりも大幅に遅らせる決断をします。何に苦労し、どういう失敗があったのかを現場リーダーや経営者の異なる視点で書かれていました。
[印象に残った話 2] 生産改善
2つめは、生産改善です。従来はメーカーとして生産機能を持たなかったミスミが、世界水準の生産システムを生み出すための話が興味深く読めました。
現場での抵抗により一度は失敗するものの、挫折後に就任した現場リーダーの強いリーダーシップ、経営トップと現場の一体になった改革ストーリーは、一気に読めました。
[印象に残った話 3] カスタマーセンターのオペレーション改革
3つめは、カスタマーセンターのオペレーション改革です。
このプロジェクトは、先ほどの中国進出プロジェクトと合わせて、2大リスキープロジェクトと呼ばれました。従来は日本全国に13ヵ所あったカスタマーセンターを集約し、さらにオペレーション効率を上げるプロジェクトでした。
一度ならず二度、改革は失敗します。二度の挫折を乗り越え、トップと現場の強い意思で、三度目にしてようやくカスタマーセンターは変わっていきます。
一度目と二度目で、それぞれなぜ失敗したのかが興味深く読めました。成功したエピソードだけではなく、どんな判断が失敗に至ってしまったかなど考えさせられる内容でした。
最後に
今回、二回続けて読みました。一回目と二回目で、違った学びがありました。
今後、いつか三回目を読んだ際には、また新しい発見があると期待できる本です。