戦略プロフェッショナル - シェア逆転の企業変革ドラマ という本をご紹介いたします。
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
日本企業に欠けているのは戦略を実戦展開できる指導者だ。新しい競争のルールを創り出し、市場シェアの大逆転を起こした36歳の変革リーダーの実話をもとに、改革プロセスを具体的に描く迫真のケースストーリー。
著者は三枝匡氏です。著者の実話を基に展開されているノンフィクションです。
出てくる問題、経営や戦略に関する数字など、ストーリー展開にリアリティがあります。現実味がない机上の空論ではなく、読み進めながら、戦略の具体的な理解が深まります。
戦略は 「絞り」 と 「集中」 が重要
本書からのあらためての学びは、戦略には 「絞り」 と 「集中」 が大切であることでした。小さな市場セグメントでもよいので、そこでナンバーワンになることです。
以下は本書からの引用です。
成功する戦略は、会社の体力を考えてまず 「戦いの場」 を絞ること、そしてそこに、社内のエネルギーを 「集中」 させていく。
(中略)
あまり大きな夢を抱いて 「戦いの場」 の絞りが甘ければ、その企業はその戦略を達成することはできない。「集中」 させようにも戦場が広すぎるのだ。
(引用: 戦略プロフェッショナル - シェア逆転の企業変革ドラマ)
小説のストーリーはノンフィクションで実話に基づき、具体的にどのように戦略を絞り、そこにエネルギーを集中させていったかが書かれています。
興味深く読めるのは、戦略を絞った後にどうなったかだけではなく、「絞り」 と 「集中」 の検討と意思決定のプロセスです。経営リーダーは何を考え、どんな意思決定をして戦略を立てたのかです。
戦略を絞る、何をやるかを決めるということは、一方で 「やらないこと」 を決めることを意味します。
本書がおもしろいと感じたのは、戦略立案の過程で 「何を捨てるか」 の決断プロセスでした。具体的には次のような流れです。
捨てるプロセス
- 自社の製品群の中から戦略的に取り扱う製品を選ぶ (他の製品は注力しない)
- 顧客をセグメントしアプローチする優先順位を全社で明確化 (営業にとっては行きやすい顧客でも優先順位が低ければ後回し)
- 社内の営業組織、販売管理の体制、流通も戦略に従って変えた
戦略において 「やらないことは何か」 という視点で、興味深く読めました。
良い戦略はシンプル
戦略で絞りと集中を決め、やらないことが決まると、戦略はシンプルにできます。本書では次のように書かれています。引用します。
私の経験では、良い戦略は極めて単純明快である。逆に、時間をかけ複雑な説明をしないと理解してもらえない戦略は、だいたい悪い戦略である。悪いという意味は、やっても効果が出ないという意味である。
良い戦略は、お父さんが家に帰って、夕食を食べながら子供に説明しても分かってもらえるくらい、シンプルである。悪い戦略は、歴戦のビジネスマンが一日かけた説明会を開いても、まだもやもやしている。
(引用: 戦略プロフェッショナル - シェア逆転の企業変革ドラマ)
リーダーシップについての学び
決断をするのは最後はリーダーです。
まわりの人間ではまだ決めきれない段階でも、リーダーが腹をくくって決断します。それができるからこそリーダーです。本書を読んで、「戦略の要諦は捨てること」 と 「リーダーシップのあり方」 を考えさせられました。
リーダーシップについて、本書で示された 「戦略プロフェッショナル」 の条件は以下でした。
(1) トップとして、強いリーダーシップを発揮する覚悟があること。その目標がなぜ達成されなければならないかを部下に説得し、士気を鼓舞し、創意工夫を促し、「共に考え、共に戦う気概」 を見せなければならない。
(2) 新しい戦略を考え出す作業手順をマスターしていること。作業のステップごとに、どんな選択肢があるのかきちんとチェックし、責任者として自分でそれを詰めていく 「緻密さ」 を持っていること。
(3) 誰もやったことのない新しい戦略を実行に移そうというのだから、多少のリスクは気にせず、また何があっても 「夜はグーグーとよく眠れる」 性格であること。
(引用: 戦略プロフェッショナル - シェア逆転の企業変革ドラマ)
章ごとの戦略ノートで解説
本書の内容構成の特徴は、物語の章ごとに 「戦略ノート」 というポイント解説のページがあることです。単に章の中のまとめで終わらず、著者の経験談やフレームなどの詳細な説明があります。
戦略ノートが物語とセットになっているからので、頭に入りやすいです。