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炭水化物が人類を滅ぼす - 糖質制限からみた生命の科学 という本をご紹介します。
糖質制限で脳のエネルギー不足は起こらないのか
糖質制限についての疑問で本書を読む視点で持っていたのは、「糖質を減らす、あるいは食事から取らなくても問題ないのか」 でした。
人間の脳はブドウ糖をエネルギーに使っており、ブドウ糖を得るためには炭水化物が必要という理解でした。糖質制限をするということは、脳のエネルギー摂取の制限することになります。
本書の見解は、炭水化物を取らなくても問題ないということです。食事から直接にブドウ糖を摂取しなくても、脳はエネルギー源として以下の2つを利用できるからです。
- 体内のタンパク質を分解して作られるブドウ糖
- 肝臓で脂肪を分解して作られるケトン体
前者の、タンパク質が分解されブドウ糖が作られる現象を 「糖新生」 と言います。 「糖新生」 は本書のキーワードです。
糖質制限をするとなぜ痩せるのか
糖新生から、糖質制限をするとダイエットできる理由も説明できます。ポイントは2つです。
- 血糖値を維持するために、体内に蓄積していたタンパク質からブドウ糖を作る
- その時に必要なエネルギーは脂肪が分解されて作られる
糖質を食事から取っていれば、備蓄タンパク質からではなく、食べた糖質からブドウ糖が作られます。
糖質制限をすれば、食事からの直接のブドウ糖の流入がないため、体内のブドウ糖不足が解消されるまでは、脂肪とタンパク質が分解されます。つまり、痩せることができます。
糖質制限で 「食べてよいもの」 「食べてはいけないもの」
本書で紹介されていた、糖質制限をするために 「食べてよいもの」 と 「食べてはいけないも/避けるもの」 は次の通りです。
食べてよいもの
- 肉、魚類、魚
- 大豆製品 (豆腐、納豆、枝豆など)
- 野菜 ※ ただし根菜類 (芋類、ニンジン、レンコンなど) は糖質が多く食べないほうがよい
- キノコ類
- 海藻類
- 乳製品
- ナッツ類 ※ ただしコーンやジャイアントコーンは避ける
- 油類 (マヨネーズやバターも大丈夫)
- 揚げ物 (から揚げやフライは大量に摂取しなければ食べてよい。ただし天ぷらは食べすぎない)
- 蒸留酒 (焼酎、ウイスキー、ウォッカ、テキーラなど) 、甘くない赤ワイン、糖質オフのビールや缶酎ハイ
食べてはいけないもの
- 米、小麦 (パン、パスタ、うどんなど) 、蕎麦
- 砂糖が含まれているもの、砂糖が味付けに使われているもの
- 果物 (果糖の多い果物は肥満の原因になるので摂取を避ける。アボガドは食べてもよい)
- お菓子類、スナック類
- 醸造酒 (ビール、日本酒、マッコリ)
最後に
本書が興味深く読めたのは、糖質制限について表面的な内容で終わっていないからです。
栄養素としての糖質の性質や、人類の糖質摂取の歴史、人間だけではなく動物との比較、糖質からみた農耕の起源、さらにはブドウ糖からみえてくる生命の諸相や進化まで、広範囲にわたって著者独自の見方が展開されています。
どうやって糖質制限をすればダイエットができるか、という視点で読むには情報量が多すぎるでしょう。しかし、次々に展開される話がおもしろく読め、学びがあった本でした。