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消費税は下げられる! - 借金1000兆円の大嘘を暴く という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容。一般常識への反論
- アベノミクスと消費税。金融緩和は続けられる
- 読んで考えさせられたこと (2つ)
本書の内容
この本の内容を一言で言うと、日本の財政や消費税の一般常識に対する真っ向からの反論と、消費税を下げるための具体的な提言です。
以下は本書の内容紹介からの引用です。
この本で強調したいことは、たった一つ、「日本の財政は、世界一健全」 だということだ。もちろん、この主張には多くの人が違和感を持つだろう。それは、「日本の財政は破たん寸前の最悪の状態で、世界でも類をみないほど、莫大な借金を抱えている」 という政府のキャンペーンを多くの人が信じ込んでいるからだ。
なぜ日本の財政は世界一健全なのか。なぜ多くの国民は、日本の財政が世界最悪と信じ込まされてきたのか、そのカラクリを本書では、詳しくみていく。
そして、日本の財政が世界一健全だということを前提にすると、バブル崩壊以降、四半世紀以上にわたって続く日本経済の低迷を抜け出す経済政策が浮かび上がる。それは、消費税率の引き下げだ。
本書では、日本経済の正しい状況を把握、財務省主導の増税路線の間違いを正し、日本経済の進むべき道を説く。
一般常識への反論
一般的に、日本の財政と消費税はそれぞれ次のように言われます。
- 日本の財政は破綻寸前。世界的に突出した借金を抱えている
- 借金を返し財政を健全化するために、消費税は増税しないといけない
つまり、財政破綻状態なので消費税を上げるべきという理屈です。
著者の森永卓郎氏は、本書で逆の主張をします。
- 日本の財政は健全である。借金は実質ゼロとみなせる
- 消費税を下げるべき
消費税を下げるべきというのは2つ意味があります。1つ目は、消費税の構造的な欠陥や経済効果を考えたときに、現行の 8% から下げることが望ましいことです。
2つ目は、消費税の代わりとなる税源があることです。具体的には、貯蓄や金融資産への課税、相続税の増税、ユニークな提言として消費税根絶基金の創設が書かれています。森永氏の言う消費税根絶基金とは、日銀の国債保有によって政府が得た資金を、基金にして使うというものです。
アベノミクスと消費税
本書で興味深く読めたのは、アベノミクスと消費税の関係でした。
2012年12月に発足した安倍政権のアベノミクスは三本の矢で構成されます。
- 大胆な金融政策
- 機動的な財政政策
- 民間投資を喚起する成長戦略
消費税は、2つ目の財政政策に当てはまります。
財政政策とは、政府から国民や企業へお金を振り分けることです。しかし、二本目の矢にしていたにもかかわらず実際に安倍政権がやったことは、2014年4月の消費税を 5% から 8% の増税でした。つまり、財政政策で本来やるべきは財政出動だったのにもかかわらず、消費税増税という緊縮財政をやったという指摘です。
森永氏が主張するのは、金融緩和と財政出動はセットでやるべきで、消費税を下げることは効果的な財政出動であることです。
金融緩和は続けられる
アベノミクスの一本目の金融緩和についても、興味深く読めました。
金融緩和の3つの副作用
本書に、中央銀行が国債を買う金融緩和をすると3つの副作用が生まれると書かれています。
- 物価が上がる
- 国債の価格が下落する (国債の金利が上がる)
- 国の通貨が安くなる
日本は副作用がむしろプラスに
興味深い指摘だと思ったのは、2017年現在の日本は、3つの副作用はプラスに働くということです。
1つ目の物価が上がることは、政府や日銀が政策目標として掲げています。消費者物価の 2% 増を目指しているにもかかわらず、目標は達成されていません。
2つ目の国債価格の下落および金利の上昇は、10年国債の金利は2017年10月現在でもゼロ金利です。森永氏は、むしろ少々国債価格が値下がりし金利がプラスになるほうが、金融市場の正常化には望ましいと言います。
3つ目の円安は、2017年10月時点ではドル円は110円前後です。森永氏は、本来の為替水準に戻すためには円安はまだ進んだほうがいいと書いています。
以上の3つをまとめると、日本の2017年時点では副作用は起こって悪影響になってはいなく、まだ金融緩和のために日銀が国債を買い増す余地はあるのです。
金融緩和を止める水準
森永氏は、金融緩和を止めるかどうかの水準を、それぞれ次のように述べています。
- 消費者物価率の上昇が 2%
- 10年ものの国債金利が 3%
- 対ドル為替が 1ドル = 130円
読んで考えさせられたこと (2つ)
ここからは、読んで考えさせられたことです。
常識だと言われていることを問う
本書の価値は、半ば常識に思ってしまっていることに、本当にそうなのかをあらためて考えさせてくれることです。
メディア、財務省や一部の政治家が言う日本の財政状況や消費税増税の説明は、次のようなものです。国の借金は膨大で少子高齢化によって社会保障は増え続ける、このままでは日本の財政は破綻する、従って消費税を上げなければいけない。
これに、本書は具体的な数字やロジックで説得力のある反論しています。具体的には、次の通りです。
- 日本の財政が健全であること、アベノミクスの金融緩和によって財政再建は実質は完了した
- 消費税を下げるべき理由
- 消費税を具体的にどうやって下げるか (国の歳入を消費税から何に置き換えるか)
構造的な欠陥を抱える日本の消費税
もう1つ本書から考えさせられたのは、そもそも消費税とは何か、何のために存在するのかという根本的なことでした。
消費税は2017年現在は 8% が課税され、国民にも企業にも広く適用される税だと認識されています。わかりやすく、公平でシンプルな税のように思えます。
しかし、本書が指摘するのは、現在の日本の消費税は構造的に欠陥があるという問題点です。
- 低所得者ほど負担が大きく、富裕層ほど負担が小さい
- 様々な税項目のうち、消費税の滞納が最も多い
- 中小企業は、消費税を顧客から預かれていない実態
消費税は社会保障のためという目的税だと言われますが、本当に消費税は社会保障の財源として有効なのかは疑問です。
社会保障費は消費税ではなく、社会保険料を財源にすべきです。低所得者への足りない分は消費税ではなく、累進課税で富の再配分の役割が期待できる所得税を使うべきでしょう。
最後に
本書に関して、以下は森永卓郎氏へのインタビュー記事です。
森永卓郎が提言!消費税は下げられる ~ なぜなら日本は10月に借金が0になるから!【垣花正あなたとハッピー!】 |ニッポン放送 ラジオ AM 1242 + FM 93