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ビジネスやマーケティングでのブランドとは何か、ブランドをどうつくるかを書いています。
エントリー内容です。
- ブランドは意図的に育てるもの。そもそもブランドとは何か
- ブランド管理の難しさ
- ブランド戦略の核。ブランドのつくり方
ブランドは意図的に育てるもの
企業を高めるブランド戦略 という本に、ブランドとは意図的に育てるものであると書かれています。
以下は、本書からの引用です。
昔から、「強いブランドとは優れた企業経営の結果であって、それ自体は管理すべきものではないのではないか」 という考え方がある。たしかに日本の長い商取引のなかで、「三越」 のような伝統的なブランドがいくつも形成されてきた。
しかし今日では、ブランドは自然に形成されるものではなく、意図的に育てなければならない対象であり、そこにはブランドを効果的効率的に構築するための戦略性が必要なのである。
(引用:企業を高めるブランド戦略)
ブランドは自然にできるのではなく、意図を持って戦略的に育成するものであるという考え方です。
そもそもブランドとは何か
ブランドをどうやって戦略的に育てるかを考えるにあたって、前提として重要なのは、そもそもブランドとは何かの理解です。
以下は、私自身が考えるブランドとブランディングの定義です。
- ブランド:好き・憧れ・共感などの消費者の感情が伴った商品やサービス
- ブランディング:商品・サービスに感情移入を起こしてもらうための働きかけ
それぞれの補足説明です。
ブランド
ブランドとは、「好き・憧れ・共感などの消費者感情が伴った商品やサービス」 です。この表現が、私自身が使う、最もシンプルにわかりやすくブランドを説明するための定義です。
本書 企業を高めるブランド戦略 には、消費者にとってのブランドとは、消費者の商品やサービス、あるいは企業に対する認識のあり方だと書かれています。
つまり、ブランドとは人の頭の中に存在するものです。「商品」 は店に売られている状態のもので、「ブランド」 は顧客の頭の中で認識され知覚されるものです。
ブランディング
ブランドを、「感情が伴った商品やサービス」 とすれば、ブランディングとは、「商品・サービスに感情移入を起こしてもらうための働きかけ」 と表現できます。顧客に感情を伴ってもらうための施策です。
広い意味で、実行のための戦略も含めてブランディングと位置づけることもできます。
ブランド管理の難しさ
冒頭で、ブランドは意図的に育てるものと説明しました。
先ほど解説したブランドの定義と合わせて考えると、意図を持って育成するとは、人の頭の中に、商品・サービスへの感情移入を起こすことです。
ブランド管理とは、単にブランド記号やロゴを管理することではありません。消費者がどのように自社商品・サービスを認識しているか、どのような感情を持ってもらいたいかを能動的につくっていくことです。
ここに、ブランド管理の難しさがあります。
ブランドは企業資産であると同時に、ブランドは顧客からの感情を伴い、人の頭の中にあるものです。本質的に、自分たちでは直接関与できない相手の領域にあるものに対して、管理しようという取り組みなのです。
ブランド戦略の核
ここからは、どのようにブランドをつくるかを考えます。
ブランドを意図的に育てるとは、次の2つに分けることができます。
- 商品・サービスに対して、消費者にどのような感情を抱いてほしいのか
- その感情が形成されるために、自分たちは何をするのか
これがブランド戦略の核となります。
消費者に抱いてほしい感情は、企業の思いやビジョンから始まります。その思いが、ブランドターゲットの顧客から共感を得られれば、感情が形成されます。企業と消費者で、共通の思いがあるという相思相愛の関係を目指します。
ブランドのつくり方
では、どうすれば、商品・サービスや企業に感情を持ってもらい、顧客の頭の中にブランドができるのでしょうか。
私が考えるブランディングは、次のプロセスです。
- 自分たちのブランドを定義する
- 顧客を明確にする
- 顧客のブランド体験プロセスを描く
- ブランド体験ごとに施策をつくり、PDCA をまわす
以下、それぞれについて解説します。
1. 自分たちのブランドを定義する
自社ブランドの定義は、以下の3つから設定します。
- ブランドビジョン:ブランドが実現したい理想の世界観
- ブランドミッション:実現するためにブランドが成し遂げること
- ブランドバリュー:ミッションを通じて、ブランドが人にもたらす価値
ビジョンは、自分たちが思い描く創りたい理想の世界観です。
ミッションは、理想の世界を実現するために自分たちは何をするか (やらないか) です。そして、ブランドバリューは、ミッションを行なうことを通じて、ブランドが人々に提供する価値です。
ビジョン・ミッション・バリューの3つは、ブランドのコアとなる要素です。
2. 顧客を明確にする
ブランドコアに共感してもらえる人、そして、共感してほしい人は誰かです。つまり、ブランドと相思相愛の仲になれる顧客は誰かです。
顧客を明確にするために、次の3つをつくり、関係者で共有します。
- セグメント:人々を分ける。分ける軸は、性別年代や居住地域、ライフスタイル、価値観、情報行動、ブランド・カテゴリーの利用など
- ターゲット:分けた各グループのうち、どのグループと相思相愛になりたいかを決める
- ペルソナ:ターゲットグループを一人の象徴的な人物像として設定し、深く理解する。その人の今だけではなく、過去の出来事や人生も含めて具体的なターゲット像を描く
3. 顧客のブランド体験プロセスを描く
カスタマージャーニーというブランド体験プロセスをつくります。ペルソナで設定した人が、ブランドとどのような体験をするかを描きます。
カスタマージャーニー
以下は、私がよく使うカスタマージャーニーです。
- ニーズ認識
- ブランド認知
- 興味
- 行動
- 比較検討
- 購入
- 利用
- 愛着
最初の 「ニーズ認識」 について補足です。
一般的にはカスタマージャーニーや購買フローを考えるときは、最初は商品やサービスへの認知からです。しかし、私は認知の前に一番始めに、「ニーズ認識」 を置いています。
というのは、認知をするためには、その商品やブランドについて、あるいはカテゴリーレベルで何かしらの必要性を感じ、自分ごととして捉えることが不可欠だと考えるからです。
場合によっては、ニーズ認識とブランド認知は同時に起こったり、時にはブランド認知によって、普段は気づいていない潜在的なニーズにあらためて気づかされることもあります。
体験だけではなく 「背後にある気持ち」 まで
カスタマージャーニーをつくるポイントは、体験だけではなく、その時に顧客はどのような気持ちなのかまでを合わせて設計することです。
この裏側にある気持ちは、必ずしも自分たちの商品・サービスに伴ってもらいたい感情である必要はありません。あくまで顧客視点での体験ごとの気持ちの把握です。
4. ブランド体験ごとに施策をつくり、PDCA をまわす
カスタマージャーニーは、ブランド体験です。ニーズ認識から愛着までの各体験ごとに、次の3つを具体化し、一貫性を持たせます。
- インサイト:体験ごとに背後にある人を動かす隠れた気持ち
- 提供価値:インサイトという気持ちを満たすために、ブランドが提供するメッセージや価値は何か
- 感情形成:提供価値や体験によって、生み出したい感情は何か。商品やサービスにどのような感情を伴ってもらいたいか
2つ目の 「提供価値」 、3つ目 「感情形成」 に、ブランドコアで自社ブランドを定義した 「ブランドビジョン」 「ミッション」 「バリュー」 と一貫性があるかもチェックポイントになります。
最後に
今回は、ブランドを戦略的にどう育てるかを考えました。
重要なので繰り返すと、ブランドとは顧客の頭の中にあるものです。
もちろん、ブランドは企業資産なので企業のものです。しかし、ブランドをどうつくり、育てるかという観点では、顧客の頭や心の中にどのような感情を形成し、商品やサービス、あるいは企業自身をブランドにするかです。