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ゼロ・トゥ・ワン - 君はゼロから何を生み出せるか という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容。ピーター・ティールが最も重視する質問
- 「あなたの真実」 は人を惹きつけるか
- 人を見抜く重要性
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
たとえば、日本が 「失われた20年」 と言われている間に、世界のイノベーションを引っ張っているのはアメリカ、特に西海岸のシリコンバレーだ。アップルやフェイスブックといった名前がすぐに思い浮かぶけれど、数多のスタートアップが起業しては消えていく世界でもある。
そんな中、次々と成功する企業を立ち上げる起業家集団がある。オンライン決済サービス・ペイパルの初期メンバーとして繋がりが深く、現在もシリコンバレーで絶大な影響力を持つことから 「ペイパル・マフィア」 とも呼ばれる彼らは、ご存知ユーチューブ (YouTube) をはじめ、電気自動車のテスラ・モーターズや民間宇宙開発のスペースXからイェルプ (Yelp!) 、ヤマー (Yammer) といったネットサービスまで、そうそうたる企業を立ち上げてきた。
本書はそのペイパル・マフィアの雄、ピーター・ティールが、母校スタンフォード大学で行った待望の起業講義録である。
本書で特に興味深かったのは、2つあります。
1つは、ピーター・ティールが最も重視する質問、もう1つは、スタートアップにおける特に創業メンバーの人の重要性です。
ピーター・ティールが最も重視する質問
ティールが重視するのは、「あなたの真実」 を見極めるための質問です。以下は本書からの引用です。
このプログラムの応募書類の質問の中には、本書でも紹介される、ティールが最も重視する質問が出てくる。
それは、「世界に関する命題のうち、多くの人が真でないとしているが、君が真だと考えているものは何か?」 というものである。
つまりティールは、強い個性を持った個人 (ただし、実際にはティールは少人数のチームを重視する) が、世界でまだ信じられていない新しい真理、知識を発見し、人類をさらに進歩させ、社会を変えていくことを、自らの究極の目的としているのである。
(引用:ゼロ・トゥ・ワン - 君はゼロから何を生み出せるか)
ピーター・ティールの考え方の特徴は、逆張り思考です。競争を避けることによってイノベーションを起こすことを目指します。
隠れた真実を見極める質問は、人と違うことをやるために、自分は何を信じているかを考えさせてくれます。多くの人が信じていない、あるいはまだ気づいていないことに対して、自分が大切にしていることは何かです。
再び引用です。
逆説的な質問のビジネス版を思い出してみよう。「誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?」
正解はかならず、「隠れた真実」 になる。それは、重要だけれど知られていない何か、難しいけれど実行可能な何かだ。この世界に多くの知られざる真実が残されているとしたら、世界を変えるような会社がおそらく数多くこれから生まれるはずだ。
(引用:ゼロ・トゥ・ワン - 君はゼロから何を生み出せるか)
「あなたの真実」 は人を惹きつけるか
ミッションなど、会社の上位を構成する要素は4つに整理できます。4つは、why, what, how, who です。
- Why: 自分たちが理想とする世界観(ビジョン) 。ビジョンと隔たりのある現実世界の現状 (自分たちが解決すべき問題)
- What: ビジョンを実現するために自分たちは何をやるのか (ミッション)
- How: どうやってミッションを成し遂げ、ビジョンを実現するのか
- Who: 誰と一緒にミッションを行ないビジョンを実現するのか
本書で興味深く読んだ 「あなたの真実」 の質問は、why, what, how のいずれにも当てはめることができます。
- Why: 理想として描く世界観 (ビジョン) には、多くの人はまだ描いていないものか
- What: ミッションとして掲げたことには、他の人がやろうと思わないことが含まれているか
- How: そのための具体的な方法にも多くの人が真実だと思わないことが入っているか
多くの人が賛成しない、あるいはまだ気づいていないが、自分たちは信じることがあれば、それが会社固有の存在意義になります。同じ志を持つ人が集まり、who を強化します。
人を見抜く重要性
本書で印象的だったのは、ピーター・ティールがスタートアップに投資する際には、特に創業者メンバーを見ることです。
以下は本書からの引用です。
何かを始めるにあたって、最も重要な最初の決断は、「誰と始めるか」 だ。共同創業者選びは結婚のようなもので、創業者間の確執は離婚と同じように醜い。
(中略)
今スタートアップに投資する時には、創業チームを調べる。
技術的な能力や補完的なスキルも重要だけれど、創業者がお互いをどれだけよく知っているかや、一緒にうまくやっていけるかも同じくらい重要だ。起業前に経験を共有している方がいい ── そうでなければサイコロを振るようなものだ。
(引用:ゼロ・トゥ・ワン - 君はゼロから何を生み出せるか)
企業にとっては、採用がどれだけ重要かを示す言葉です。
ピーター・ティールが指摘するのは、採用候補者が入社を決める時に、その会社固有の理由があるかどうかです。他の会社でも言えてしまう理由ではなく、その会社にしか当てはまらない理由です。
該当箇所を引用します。
ダメな答えをまず挙げよう。「他社よりストックオプションの価値が高くなる」 「優秀な人たちと仕事ができる」 「差し迫った社会問題の解決に役立つことができる」 。
株式価値、優秀な仲間、差し迫った問題の何が悪いのか?何も悪くない。ただ、ほかの会社でも同じことが言えるので、君の会社が特別ということにはならない。他社と変わらない一般的な売り文句では、君の会社を選んではもらえない。
(中略)
いい答えは君の会社に固有のもので、この本の中にはない。だけど、いい答えは大まかに二つに分類される。
ひとつは君の会社の使命について、もうひとつはチームについてだ。君の使命に説得力があれば必要な人材を惹きつけられる。その使命の漠然とした重要性ではなく、ほかの会社ができない大切なことを君の会社がなぜできるのかを説明しなければならない。それこそが、君の会社だけが持つ固有の重要性だ。
(引用:ゼロ・トゥ・ワン - 君はゼロから何を生み出せるか)
最後に
本書から学べるのは、スタートアップへの投資というリスクの高いことを決断する人が、どのような考え方、ものの見方をしているかです。
興味深いと思ったのは、今回取り上げた 「多くの人は賛成しないが、自分たちが信じていることは何か?」 という質問でした。ピーター・ティールがこの質問を重視するのは、競争を避け独占をつくり上げるようなプレイヤーに価値を見い出し、人とは違うことをやる逆張り思考を持っているからです。
この質問は、企業の価値を見極めるためだけではなく、個人にも示唆があります。
最後に、関連エントリーのご紹介です。4つの質問のうちの1つは、ピーター・ティールが重視する 「あなたの真実」 を見極める質問です。
よろしければ、ぜひご覧ください。