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マーケティングとは 「組織革命」 である。 という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容
- 人間の本質とは。人間の本質に則った組織
- 人を動かすための社内マーケティング
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
USJ (ユニバーサル・スタジオ・ジャパン) を劇的な再生に導いた後、マーケティング精鋭集団 「株式会社 刀」 を設立、マーケティングによる日本の活性化に邁進中の戦略家、森岡毅氏の待望の最新刊!
なぜ、日本企業はマーケティングを活かせないのか?
なぜ、あなたの提案は通らないのか?
実戦経験を極めた著者が、あなたを成功に導く新しい <組織論>
本書は、世の中にあふれる教科書的な組織論とは一線を画したビジネスパーソンであれば誰もがしっかりと認識しておくべき、実戦で役立つ組織論です。
この本に書かれていることは、大きくは3つです。
- 人間の本質 (自己保存)
- 人の力を引き出すための組織のつくり方、組織マネジメント
- 人と組織を動かすためにどう行動すればよいか (社内マーケティング)
3つに共通することは、「本質」 です。人間の本質、組織の本質、マーケティングの本質が書かれています。本質という言葉は、本書全体でのキーワードです。
人間の本質
人間の本質とは 「自己保存」 です。人は、自分の生存確率を高めることを、意識的にも無意識にも優先します。
人間が変化を本能的に拒むことも、自己保存から理解できます。今までの環境で生きてこられたのだから、変化をすると自分の死につながるのではないかと思うからです。生存確率を下げないために、変化することを嫌います。
人が組織に属するのも、組織に入っていれば自分の生存が守られると考えるからです。現代では生きるか死ぬかは大げさな表現ですが、組織内での生存確率とは組織で自分がやっていけるかどうかです。
しかし、ひとたび 「組織の利益」 と 「個人の利益」 が相反するものになれば、人は本能的に組織の利益に背いてでも個人の利益を優先させます。たとえ組織にとっては逆効果であったり、長い目で見れば組織が衰退するようなことでも、人は目の前の自己保存に従った行動をとります。
人間の本質に則った組織
組織と個人の利益が必ずしも一致しない状況において、興味深いと思った考え方があります。人が組織の利益にはならない振る舞いをすることは、人間が悪いのではなく、人間の本質に沿った組織体制や運用ができていないと考えることです。
自己保存と組織
組織開発と運営で望ましい方向性は、人が自己保存に従った行動を取れば、組織にとって良い影響を与えるような設計にすることです。
人が自己保存を優先することは、人間の本質なので変えられません。できることは、個人の利益 (自己保存を高められること) と組織の利益を一致させることです。適切な競争下において、自己保存の本能を組織に望ましいドライブに使えるかです。
具体的には、新しいことに挑戦することや、自分が主体的に行動するほうが、自分の組織での生存確率が上がるような制度設計です。ポイントは2つあり、評価制度と報酬制度です。
評価制度
評価制度とは、人が望ましい考え方や行動をとるように促し、評価基準によって評価する仕組みです。自分が何で評価をされるのかが示されるので、それに従って、どんな行動や振る舞いをするとよいのか、どのような能力やスキル身につけるかがわかります。
自己保存という人間の本質に則った評価制度であれば、個人の利益と組織の利益が一致します。自分が成長できることと、組織の目指す方向 (ビジョンやミッション) とがつながります。
評価基準に沿って行動をすると人は成長し、成長によって組織での自分の生存確率が上がり、組織自体も強くなります。強くなった組織に自分が身をおいていれば生存確率が高まり、自己保存の欲求を満たすことができます。
報酬制度
報酬制度とは、自分の能力向上と業績 (結果) の2つの評価によって実績が認められれば、金銭的な報酬や昇格として目に見える実感できるもので組織から人に報いる仕組みです。
報酬が返ってくれば、人は自分自身が組織から認められたと思えます。それだけ組織に自分が必要とされていることが実感でき、組織内での生存確率が高くなります。
人と組織を動かすための社内マーケティング
本書で詳しく紹介されている社内マーケティングで思ったのは、一言で言えば戦略的に考え行動することです。
- 自分の提案や人・組織を動かしたいことの目的を明らかにする
- 動かしたい人や組織のターゲットを理解する
- ターゲットが動いてくれるように、何をどのように提案するか
自分と相手の目的を明らかにする
1つめの目的を明らかにするにあたって、自分がなぜ提案するかの目的と、動かしたい相手の目的とで、利害が一致していることが求められます。
自分だけにしか大義名分が見い出せなければ、独りよがりの目的になります。
ターゲット理解
そうならないために、2つめのターゲット理解が必要です。本書では Target analysis (ターゲット分析) と表現されます。
分析対象となる人は複数に渡ります。自分の提案に対して賛成してくれるであろう人、反対すると考えられる人、意思決定者、意思決定者に影響を及ぼす人です。
それぞれにおいて、その人が所属する組織の目的は何か、個人としてのベネフィットは何かです。
組織の目的を重視する人なのか、それとも自己保存の欲求が強く個人のベネフィットを優先する人なのかです。また、それぞれの対象者はどんなモチベーションを持っており、組織内でどう評価されるのかも理解します。
何をどのように提案するか
ターゲット理解に基づいて、どう提案するかです。
- 提案が実現すると、相手にとってどんな良いことがあるか (ベネフィットの魅力)
- ベネフィットはなぜ起こるのか。起こる可能性は高いのか (ベネフィットの実現可能性)
- そのために、相手に何をしてほしいか (相手にとっては、自分は何を期待され依頼されるのか)
自分の目的は1つでも、相手によってターゲット理解に沿って提案の仕方は変えます。相手が所属する組織の目的や、個人の目的 (どうなれば自己保存が満たされるのか) という前提が、相手によって異なるからです。
最後に
紹介した マーケティングとは 「組織革命」 である。 という本が興味深く読めるのは、本質を徹底的に追求して書かれているからです。人間の本質、組織の本質、マーケティングの本質です。
学べることが多く、一度読み終えただけでは消化できないほどでした。
キンドルでのハイライト (117箇所) をドキュメントにまとめてプリントアウトし、印刷した紙に著者が言わんとしていることや思ったことをメモしました。さらに、メモを基にノートに自分の理解や考えたことをひたすら書きました (B5 ノートで4ページ分になりました) 。
このブログに書いている時も、まだ理解や考えが浅いと感じ、本に戻ったりノートに書き足すことを繰り返しました。
現時点ではまだ本から自分が得たことは 「知っている」 という状態です。あとは、自分でも仕事で試してみて経験し、実践で使える自分のノウハウにできるかです。