
今回は、戦略についてです。
この記事でわかること
- 書籍 ストーリーとしての競争戦略 のおもしろさ (3つ)
- ノウハウでなく 「センス」 が身につく本
競争競争をストーリーで捉えることの奥深い味わいが、「ストーリーとしての競争戦略」 という本にはあります。
ぜひ記事を最後まで読んでみてください。
ここがおもしろい!
今回の記事で取り上げるのは、ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 です。
初版は2010年です。
数年ぶりに読み返し、あらためて内容がおもしろいと思いました。おもしろかったことを3つに絞ると、次の通りです。
書籍 「ストーリーとしての競争戦略」 のおもしろさ
- 静止画ではなく動画
- ストーリーの 「非合理の合理性」
- ストーリーというワクワク感
以下、それぞれについて順番にご説明します。
[おもしろい 1] 静止画ではなく動画
ストーリーの各要素を1つ1つバラバラに見るのではなく、「動画」 として捉えるおもしろさです。
では動画とは、何でしょうか?
動画と捉えるストーリー
- 要素ごとのつながり
- 時間的な流れ (順番と因果関係)
- 動的 (あっちが変わればこっちも変わる)
ストーリーを静止画ではなく動画にするためには、それだけ解像度を上げ、深い思考が求められます。
競争戦略のあらためての奥深さを味わえる本です。
[おもしろい 2] ストーリーの 「非合理の合理性」
この本の中で最もユニークな概念なのは、競争戦略に入れ込む 「非合理の合理性」 です。本書ではクリティカルコアと呼ばれます。
非合理の合理性とは、「一見すると非合理で筋の悪い戦略に見えるが、戦略の裏側も含めて全体像からすると合理的のもの」 です。
クリティカルコアがあるからこそ、競争戦略に優位性が生まれます。
なぜか。
競合からの模倣を防ぐからです。クリティカルコアという防ぎ方が、おもしろいのです。
というのは、「一見すると非合理」 なので、競合はここだけ真似しようとはしません。しかし、戦略全体で肝になるクリティカルコアが抜けた戦略は、うまく機能しないわけです。真似をしても、競合が勝手に自滅していきます。
または、非合理に見える戦略なので、そもそも最初から真似をしようとは思いません。
一般的な参入障壁を高くしての優位性構築とは、質的に全く異なるアプローチです。
[おもしろい 3] ストーリーというワクワク感
おもしろかった3つ目は、競争戦略に 「ワクワク感」 を入れたことです。
競争戦略は、ともすると論理一辺倒な世界です。ここに 「競争戦略ストーリーを思わず人に話したくなるおもしろさ」 という感情的なものを持ち込んだのが、興味深いです。
ストーリーはロジックだけではなく、感情や熱狂があるかは、意識しておきたいです。
ノウハウではなくセンス
ここまで、書籍 ストーリーとしての競争戦略 のおもしろさを3つに絞ってご紹介してきました。
もう1つ、この本の奥深さを言うと、ノウハウやスキルがすぐに身につく本ではないというものです。
読んですぐに、実務での戦略立案や実行能力が高まり、今日から使えるような内容ではありません。
では、戦略のノウハウではなく、学べるのは何でしょうか?
それは、競争戦略への 「センス」 です。
ストーリーを動画で捉える。クリティカルコア、競争戦略のコンセプト、戦略ストーリーの 5C といった、「頭の中の引き出し」 が増えます。引き出しとは、切り口です。
しかし、引き出しの中身 (具体) は、自分で手に入れる必要があります。さらに、実務の場で、目の前の状況に適した引き出しを開け、中身をどう選ぶかは自分で見極めることが求められます。
こうした一連のプロセスは、実際に経験しないと自分の身にはつきません。この本が、「ノウハウではなくセンス」 と表現したのは、こういう理由からです。
だからと言って、ビジネスの実務で意味がないかと言えば、決してそんなことはありません。むしろ、示唆に富む本です。
ただしそれは、読者が示唆をノウハウではなくセンスとして血肉にできるかどうかにかかっています。
まとめ
今回は、書籍 ストーリーとしての競争戦略 を取り上げました。
皆さんの中には、以前に読んだ方も多いのではないでしょうか。
既に読んだ方も、もう一度ぜひ読んでみるのをおすすめします。あらためての学びがあると思います。
最後に今回の記事のまとめです。
1.
書籍 「ストーリーとしての競争戦略」 のおもしろさ
- 静止画ではなく動画 (つながり, 時間的の流れ, 動的)
- ストーリーの 「非合理の合理性」 (競争優位性を築くクリティカルコア)
- ロジックだけのストーリーではなく、ワクワク感を入れる
2.
この本はノウハウやスキルがすぐに身につく本ではない。学べるのは競争戦略への 「センス」 。頭の中の引き出しは増やせるが、中身を入れてどう使うかは実務で自分でやるしかない。示唆をノウハウではなくセンスとして血肉にする本。
ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 (楠木建)