今回は書評です。
ご紹介する本は 夢を売る男 です。
この記事でわかること
- 本書のストーリー
- 考えさせられた 「顧客満足とは」
- 200万円を喜んで支払う心理
この本は、マーケティングの観点から興味深く読めました。
具体的には、ニーズにつながる人の奥にある欲望や、自分から喜んでお金を払う気持ちとは何かです。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、この本も良かったら手に取ってみてください。
この本に書かれていること
本書の主人公はある出版社の編集部長です。タイトルの通り、自分が書いた本を出版したいと思っている人に 「夢を売る男」 です。
からくりは、本を出したいと考える素人の著者をその気にさせ、出版社と著者での共同出版に持ち込ませます。著者から出版にかかる費用として200万円を支払ってもらいます。実際は発行部数を考えると出版には100万円もあれば十分なのですが、この差分で荒稼ぎをしているのです。
本を出す側の著者も編集長を心から信じていて、まさか自分が騙されたとは思っていません。本を出すという夢を叶えるために、自腹でお金を払ってでも自分が書いた本を出版したいと思っています。
相手にはバレないという前提はありますが、両者で win-win になるビジネスです。
以下はこの本の内容紹介からの引用です。
輝かしい自分史を残したい団塊世代の男。スティーブ・ジョブズに憧れるフリーター。自慢の教育論を発表したい主婦。
本の出版を夢見る彼らに丸栄社の敏腕編集長・牛河原は 「いつもの提案」 を持ちかける。「現代では、夢を見るには金がいるんだ」 。牛河原がそう嘯くビジネスの中身とは。
現代人のいびつな欲望を抉り出す、笑いと涙の傑作長編。
おもしろく読めた理由
この本を面白く読めたのは、マーケティングの観点からでした。
具体的には 「顧客満足とは何か」 を考えさせられたからです。
この本のストーリーでは、自分の本を是非とも出したいと言う登場人物たちは、自分からお金を払いたいと言ってきます。それだけ自分が書いた本を出版社から本を出したいという気持ちが強いのです。
なぜ150万から200万円ものお金を人は払いたいと思うのかを、この小説はフィクションなのですが、考えさせられました。
自らお金を払いたい気持ち
この本を読みながら 「自らお金を払いたい気持ち」 で思ったのは二つです。
一つが主人公である牛河原編集部長の営業トークです。相手への琴線に触れる話し方に、読みながら思わず感心しました。
もう一つが本を出したいと思う著者が持っている、共通の奥にある気持ちです。
奥にある共通の気持ち
- 承認欲求
- 自己顕示欲
- 自尊心
一言でシンプルに言うなら 「自分を認めてほしいという気持ち」 です。
認めて欲しい対象はさらに分解ができ、自分が執筆した本の中身、自分の才能、自分自身の存在です。
小説に登場する人たちの書いた本は様々です。フィクション小説、教育と育児、絵本、詩、自分史です。
これらの本を書いた動機になっているのは、自分の才能は誰もわかってくれない、自分はもっと世の中から評価されてもいいはず、なぜ周囲の人々は自分を認めてくれないのか、という欠乏感です。
こうした不満や満たされない気持ちが人一倍強く、執念とも言えるほど強いモチベーションから本を書き上げました。
ここに編集部長の言葉が刺さります。本の内容で具体的に良かった点を褒めちぎり、言葉巧みに共同出版まで持ち込みます。
人はどんな時に自らからお金を払いたいと思うのかを、人間の欲望や心理を学べる本でした。
まとめ
今回は 夢を売る男 という本もご紹介しました。
いかがだったでしょうか?
最後に今回の記事のまとめです。
この本に書かれていること
- 本書の主人公はある出版社の編集部長。出版したいと思っている人に 「夢を売る男」
- 本を出したいと考える素人の著者をその気にさせ、出版社と著者での共同出版に持ち込み、出版費用を200万円を払ってもらう
- 実際は100万円もあれば十分なので、この差分で荒稼ぎをしている
自らお金を払いたい気持ち
- この本をおもしろく読めたのはマーケティングの観点から。「顧客満足とは何か」 を考えさせられた
- 本を出したいと思う著者には共通した 「自分を認めてほしいという気持ち」 がある
- 不満や満たされない気持ちが人一倍強く、その気持ちを満たすように本の内容で具体的に良かった点を褒めちぎり、言葉巧みに共同出版を決意させる
夢を売る男 (百田尚樹)