今回は新規事業開発の話です。新しいビジネスの戦略を考える時に、よく使っている切り口をご紹介します。
✓ 新規事業開発の切り口 (5つ)
- 製品市場マトリクス (アンゾフのマトリクス)
- 両利きの経営
- リーンスタートアップ
- OODA ループ
- 顧客インサイト
この記事で書いているのは、新規事業開発の成功確率を少しでも高めるために、私がよく仕事で使っている5つの切り口です。
ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。
新規事業開発の切り口
私が受けるコンサルティングテーマの1つに、事業戦略があります。
特に新規事業開発で共通してよく使っている切り口が、次の5つです。
✓ 新規事業開発の成功確率を高める5つ
- 製品市場マトリクス (アンゾフのマトリクス)
- 両利きの経営
- リーンスタートアップ
- OODA ループ
- 顧客インサイト
では順番にそれぞれについて、関連するおすすめの本も併せて見ていきましょう。
[切り口 1] 製品市場マトリクス
1つ目の製品市場マトリクスは、事業戦略の大きな方向性を考える時によく使っています。
このマトリクスは、市場と製品 (プロダクト) の2つの切り口から、それぞれ既存か新規かによって、以下のような 2 × 2 の4つの方針で分類します。
出典: Wikipedia
4つのパターンは、次のようになります。
✓ 製品市場マトリクス
- 市場浸透: 既存市場に既存製品を浸透させる
- 製品開発: 既存市場に新製品を提供する
- 市場開拓: 新規市場を既存製品で開拓する
- 多角化: 新規市場へ新製品を投入する
事業戦略ではどの方向にシフトするのかを、関係するメンバーで認識を合わせることが大事です。
製品市場マトリクスは議論や意思決定に重宝しています。
おすすめの本 1
事業をどの方向にシフトするかを考えたり、具体的なアプローチを学ぶのにおすすめの本です。
SHIFT イノベーションの作法 (濱口秀司)
[切り口 2] 両利きの経営
イノベーション理論である 「両利きの経営」 は、次の2つを実践する経営です。
✓ 両利きの経営
- 既存事業の強化。競争力を高め収益を上げる [深化]
- 新規事業の創出。新しい市場や技術、ビジネスモデルを模索する [探索]
両利きの経営は深化と探索のどちらか一方だけでなく、両方をやっていくというあえて二兎を追う経営です。
深化 (既存の強化) と探索 (新規への模索) では、一般的には前者の深化に偏りがちになります。既存強化は今までやってきたことの延長なので続けやすいからです。一方、新しい取り組みである探索はうまくいくかわからず成果が出にくいので、後回しになりがちです。
しかし、企業は深化だけでは生き残っていけません。外部環境の変化に適応するため、絶えず自らも変わっていく必要があります。深化だけではなく探索が大事になるのです。
両利きの経営を実現するポイントは次の5つです。
✓ 両利きの経営を実現するポイント
- 深化と探索に明確な戦略がある
- 経営層の積極的な関与 (特に探索事業への理解と支援)
- 探索には既存事業の資産を活かす
- ただし、深化と探索は距離を置き対立を避ける (例: 評価指標を分ける、物理的にオフィスを遠ざける)
- 共通のアイデンティティを持たせる (ビジョンや価値基準などの企業文化)
おすすめの本 2
両利きの経営で参考になった本は、両利きの経営 - 「二兎を追う」 戦略が未来を切り拓く です。
両利きの経営について、豊富な事例や研究から両利きの経営とは何か、実践するためにどうすればよいかが詳しく書かれています。
[切り口 3] リーンスタートアップ
ご紹介したいのは、リーンスタートアップというアプローチです。
リーンスタートアップのリーン (lean) は、「俊敏な」 という意味です。新規事業の立ち上げやプロダクト開発では小さく早く始め、検証による学びのサイクルをまわしながら進める方法です。
PDCA の Plan を仮説 (Hypothesis) に置き換えた HDCA サイクルをを回し続けます。
仮説検証は想定するユーザーやお客のところに自ら出向き、対話や観察を重ねてフィードバックを得ます。
おすすめの本 3
リーンスタートアップについては、書籍 リーン・スタートアップ - ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす という本に詳しく書かれています。
[切り口 4] OODA ループ
新規事業開発での 「探索」 は、既存事業からのシフトが大きいほど試行錯誤が多く発生します。
探索活動で取り入れたいアプローチが OODA ループです。
✓ OODA ループ
- 事象の観察 [Observe]
- 状況判断 [Orient]
- 意思決定 [Decide]
- 行動 [Act]
新規事業開発では1回でも多く顧客のところへ行き、質問と対話、観察をして顧客理解ができるかが大事です。OODA ループを意識しながらの探索です。
おすすめの本 4
事業開発での顧客理解でご紹介したい本は、新規事業の実践論 (麻生要一) です。
OODA ループの本ではありませんが、事業開発の進め方が具体的に書かれていて、私は何度も読み返した1冊です。
[切り口 5] 顧客インサイト
繰り返しになりますが、事業開発では顧客理解が大事です。
顧客のことを深く理解し、顧客課題に沿ったソリューションの提供から顧客の成功や幸せにつなげられるかです。
顧客理解のポイントは顧客インサイトです。顧客インサイトとは 「人を動かす隠れた本音」 です。
普段は顧客自身を自覚できていませんが、そうだと気づかされれは行動につながる奥にある気持ちです。行動とは具体的には買ってくれる・利用してもらえることです。
顧客インサイトは本人自身が認識できていないので、相手から 「自分のインサイト (奥にある本音) はこうです」 とは教えてもらえません。本人も普段は自覚できていないからです。また、仮に意識できたとしても、他人に言うのは抵抗がある本音です。
新規事業開発の担当者が自ら発見し言語化します。ここに顧客理解の難しさとおもしろさがあります。
おすすめの本 5
顧客インサイトについてのおすすめの本です。
「欲しい」 の本質 - 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方 (大松孝弘, 波田浩之)
顧客インサイトの What, Why, How がわかりやすく書かれています。顧客インサイトとは何か、なぜ重要なのか、どうやって見出し、どう活用するかです。
こちらの本については、YouTube で解説しています。よかったら見てみてください。
まとめ
今回は新規事業開発について、私がよく使っている切り口と、それぞれに関連するおすすめの本をご紹介しました。
最後に記事のまとめです。
新規事業開発の成功確率を高める5つ
- 製品市場マトリクス: 事業の大きな方向性を定める
- 両利きの経営: 既存と新規事業の両立を図る
- リーンスタートアップ: 仮説の立案・検証サイクルを小さく何度もまわす
- OODA ループ: 探索プロセスでは 「観察・状況判断・意思決定・行動」 をまわす
- 顧客インサイト: 事業開発の肝は顧客理解。顧客の奥にある行動につながる本音を見極める