帝国ホテルのニュースリリースから、戦略や商品開発に学べることを掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- 帝国ホテルが従業員食堂を自前で運用へ
- 戦略や商品開発の観点で3つの狙い
- ① 資産の有効活用, ② 人材育成とテスト, ③ 提供メニューと価値の体験
- 学べること
この記事を読んでいただきたいと思うのは、戦略を考えたりつくる役割にある方、または商品開発の担当をされている方に特に参考になればと思います。
帝国ホテルの取り組みから学べることを一緒に見ていきましょう。
帝国ホテルが社員食堂を自前で運用へ
帝国ホテルが従業員向けの食堂を自前で運用すると発表しました (ニュースリリース) 。
帝国ホテル東京の社員食堂でローストビーフとパンを購入した従業員 (出典: zakzak)
これまでは外部業者に委託をしていましたが、ホテル内のレストランシェフが従業員向けに料理を提供します。食堂の名前は 「サステナブル カフェテリア エスポワール」 です。
以下は日経新聞からの引用です。
帝国ホテルは8月から、主力の 「帝国ホテル東京」 (東京・千代田) で自社運営の社員食堂を始めた。
新型コロナウイルス禍で営業縮小が続くレストランのシェフらを登用。業務量が減った人材を有効活用し、若手育成の場とする。食材は売れ残ったものなどを使い、食品ロスの削減につなげる狙いもある。
従業員食堂を自前化する狙い
ではここからは、社員食堂を自前で運営する狙いについて掘り下げていきましょう。
戦略や商品開発の観点から、狙いは次の3つです。
✓ 従業員食堂を自前化する狙い
- 資産の有効活用
- 人材育成とテスト
- 提供メニューと価値の体験
では順番に見ていきましょう。
資産の有効活用
帝国ホテルのシェフの腕は超がつくほど一流だと思いますが、来客が減ったり客がいなければ、たとえ一流シェフがいても宝の持ち腐れになってしまいます。
従業員食堂ではお金を払うお客さんではありませんが、食べに来てくれた従業員に料理の腕をふるうことができます。社員食堂を自前化する狙いの1つ目は、シェフというホテルにとっての 「資産」 を遊休資産にしておくのではなく、有効活用する機会をつくり出すことです。
人材育成とテスト
2つ目の狙いについてです。
料理を作り他の人に食べてもらうことは、人材育成につながります。もしまだお客さんに料理を出せるレベルを十分に満たせていなくても、社食であれば例えば若手のトレーニングの場になります。
他には、新しいメニューを考え作った時のテストの場としても有効です。
自分たちが提供するメニューやサービスのテストを、外部のお客さんや調査会社を使うのではなく社内で、それも大々的にテストを実施するのではなく社食という場で自然とできます。相手は従業員なので新メニューの評価や感想のフィードバックをもらいやすいです。
帝国ホテルの従業員食堂の自前化は、テストマーケティングの視点からも興味深いです。
提供メニューと価値の体験
3つの狙いのうち、ここまでの2つはシェフなどの料理を作る側の話でした。
一方の3つ目の狙いは、社食を利用する従業員にとっての意味合いです。一言で表現すれば、「お客さんに出す提供メニューと価値を従業員が体験する機会」 です。
これは一般的な話で、自社の商品やサービスを社員が実際に使ったことがないのは普通にあります。単に情報として知っているだけなのと、実際に自分が利用した経験があるとでは、お客さんへの伝え方、アピールや勧め方の説得力が全く違います。
実際のレストランでお客に提供するメニューと同じものを社食で日頃から食べていれば、自分たちの提供サービスとお客が得られる価値を体験することができます。従業員食堂の自前運営は、めぐりめぐってレストランの来客の食事メニューやサービス満足度向上につながります。
学べること
ここまで、帝国ホテルが従業員向け食堂を自前で運用する狙いについて見てきました。
ではあらためて私たちが学べることを整理してみましょう。
自分たちへの問いかけとして、次のようなことを考えてみるといいです。
✓ 学べること (自分たちへの問いかけ)
- 社内で使われずに眠ってしまっている資産 (例: 人財, ノウハウ, 仕組み, 技術) はないか
- 資産を社内で有効活用できないか (例: 他部署の困っていることを解決できないか)
- 新商品やサービスのテストを社内で実施する仕組みを作れないか
- お客への提供商品やサービスを、お客の立場になって自分たちが体験する機会を作れないか
まとめ
今回は、帝国ホテルの従業員食堂の自前化から、学べることを掘り下げました。
最後にまとめです。
帝国ホテルが社員食堂を自前で運用へ
- 主力の帝国ホテル東京で自社運営の社員食堂を開始
- 食堂の名前は 「サステナブル カフェテリア エスポワール」
- これまでは外部業者に委託だったが、ホテル内のレストランシェフが従業員向けに料理を提供へ
戦略や商品開発の観点から従業員食堂を自前化する狙い
- 資産の有効活用。シェフという 「資産」 を遊休資産にしておかず、有効活用する機会をつくり出す
- 人材育成とテスト。若手のトレーニングの場、新しいメニューを考え作った時のテストをできる
- 提供メニューと価値の体験。実際のレストランでお客に提供するメニューと同じものを日頃から体験でき、お客へのサービスと満足向上につなげる
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