今回のテーマは、事業開発とビジネスキャリアです。
✓ この記事でわかること
- 昼はとんかつ屋、夜は居酒屋という 「飲食店の二毛作」
- 二毛作の狙いとは?
- 既存事業の強化と新規事業の開拓 (両利きの経営)
- 両利きの経営の成功ポイント5つ
- 成功ポイントと二毛作
- 学べること
この記事では、ある飲食店の 「二毛作プロジェクト」 を両利きの経営から紐解き、新しいチャレンジを成功させる方法を解説しています。
よかったらぜひ最後まで読んでみてください。
飲食店の二毛作プロジェクト
飲食店事業を展開するテンアライドが、「二毛作プロジェクト」 を開始するという発表をしています (ニュースリリースはこちら) 。
二毛作とは、昼と夜で業態を変えた飲食店です。
二毛作プロジェクトの第一弾として、同じ店舗で昼はとんかつ専門店、夜は居酒屋として営業するとのことです。2021年10月5日より 「大衆スタンド神田屋四谷店」 にて新業態 「大衆とんかつかんだ」 を開始しました。
出典: テンアライド
二毛作の狙い
昼と夜で飲食の業態を変える狙いを考えてみましょう。
テンアライドのニュースリリースには次のように書かれていました。
昼と夜とで店舗名を変えて営業を行うことは当社初の試みです。また、今後予測される人材枯渇にも対応可能な、少人数でオペレーションができるモデル店としての実験も兼ねています。
昼のとんかつ屋は、テストとしての位置づけがあります。
もし別の場所に新しく出店すると、立ち上げのコストがかかります。しかし今使っている店舗をそのまま使えば看板やメニューを変えるだけなので、新規出店に比べて低コストで新しいメニューや業態にニーズがあるかの検証ができるわけです。
既存事業と新規事業の両立
では、「新しいことを試す」 についてもう少し掘り下げてみましょう。
補助線として使いたいのが、経営学の理論である 「両利きの経営」 です。両利きの経営とは、既存事業の強化と新規事業の開拓の両方をやっていく経営です。既存事業の 「深化」 、新規事業の 「探索」 です。
飲食店の二毛作に話を戻すと、二毛作とは両利きの経営と見ることができます。今までやってきた居酒屋は夜に引き続き営業し (深化) 、新たに昼にとんかつ屋を始めます (探索) 。
両利きの経営の成功ポイント5つ
既存の強化と新規の挑戦を両立させる 「両利きの経営」 の成功ポイントは、次の5つです。
✓ 両利きの経営の成功ポイント5つ
- 目的の設定。特に新規の位置づけを明確にする
- 経営メンバーなどの上位者の積極的なサポート
- 既存事業の資産を新規事業で有効活用する
- 既存と新規で 「離す」 (例: 物理的な距離を離す, 事業や人の評価指標を変える)
- 共通のアイデンティティ。既存と新規は共に経営理念に沿っていること
成功ポイント5つと二毛作
では、両利きの経営の成功ポイント5つを、飲食店の二毛作に当てはめてみましょう。
1つ目の 「目的の明確化」 は二毛作の狙いで見たように、新しく始める昼のとんかつ屋は 「新業態のテストの場」 と位置づけています。
2つ目のポイント 「経営メンバーのサポート」 は、ニュースリリースで発表していて全社して取り組んでいく姿勢が見られます。決して現場だけで動いているわけではなさそうです。
3つ目の 「既存事業の資産の有効活用」 は、昼のとんかつ屋は居酒屋の食材を使ったり、接客ノウハウを活かせます。また、夜の居酒屋の客に昼のとんかつ屋を紹介すれば集客につながります。
4つ目のポイントである 「既存と新規で離す」 は、場所は同じお店を使いますが、時間帯は昼と夜で離しています。
ニュースリリースには書かれていませんでしたが、新しく始める昼のとんかつ屋は、すぐに収益性や黒字化を求めないほうが良いでしょう。それよりもとんかつ屋で効率的に店を回せるか、とんかつ専門店へのニーズがあるかを KPI (重要指標) にすると良いです。
5つ目の 「共通のアイデンティティ」 についてです。二毛作のお店の写真を見ると、のれんのイメージが同じと雰囲気は似ています。
出典: テンアライド
店内のレイアウトも大きく変わらないはずで、お店全体での 「らしさ」 に共通点があります。
飲食事業として大切にしたいミッションなどの事業理念が昼と夜で共有されていると、お店の精神的な土台であるアイデンティティが同じになります。
学べること
では最後に、飲食店の二毛作から学べることを整理しておきましょう。
両利きの経営は会社や組織だけではなく、個人のレベルでも当てはまります。新しく何かに挑戦する時に、両利きの経営の5つの成功ポイントが参考になります。
両利きの経営の成功ポイントを、何かに新しくチャレンジする場合に変えると次のようになります。ビジネスキャリアに学べることで、
✓ 両利きの経営の成功ポイント5つ
- 目的の設定。特に新しいチャレンジの位置づけを明確にする
- 新しい挑戦は自分で応援するように長い目で取り組む
- 今までやってきた経験や専門スキルなどの資産を、新しいチャレンジで有効活用する
- 既存と新規で 「離す」 (例: 新しくやることの評価軸を同じにしない)
- 既存と新規は共に自分の価値観や大切にしたいことが共通する
まとめ
今回は、飲食店の二毛作と両利きの経営から学べることを掘り下げました。
最後にまとめです。
二毛作の狙い
- 昼はとんかつ屋、夜は居酒屋という 「飲食店の二毛作」
- テストの位置づけ
- 今後予測される人材枯渇にも対応でき、少人数オペレーションのモデル店としての実験の場
既存事業と新規事業の両立
- 二毛作とは両利きの経営と見ることができる
- 両利きの経営とは、既存事業の強化と新規事業の開拓の両方をやっていく経営
- 今までやってきた居酒屋は夜に引き続き営業し (深化) 、新たに昼にとんかつ屋を始める (探索)
両利きの経営の成功ポイント5つ
- 目的の設定。特に新規の位置づけを明確にする
- 経営メンバーなどの上位者の積極的なサポート
- 既存事業の資産を新規事業で有効活用する
- 既存と新規で 「離す」 (例: 物理的な距離, 事業や人の評価指標)
- 共通のアイデンティティ。既存と新規は共に経営理念に沿っていること
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