今回のテーマは、マーケティングでの 「アイデア」 についてです。
✓ この記事でわかること
- 良い 「アイデア」 とは何か?
- プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
- 化粧品ブランド NARS のマーケティング事例で解説
- 学べること
マーケティングの視点で筋の良いアイデアとは何かを掘り下げています。
記事の前半でアイデアの本質に迫り、後半では TikTok の事例に当てはめて見ていきます。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
「アイデア」 とは何か?
ご紹介したい本があり、たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング (西口一希) です。
独自性と便益
この本を初めて読んでなるほどと思ったのは、良いアイデアとは 「独自性」 と 「便益」 があると書かれていたことでした。
独自性と便益の両方を満たすのが良いアイデア (右上) 出典: MarkeZine
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
これも 「実践 顧客起点マーケティング」 の本からの学びで、マーケティングの文脈ではアイデアが2つに分解できます。
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアです。
出典: MarkeZine
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアのそれぞれで、独自性と便益があることが大事です。
具体的には、
✓ プロダクトアイデア
- 独自性: 競合商品からの優位性
- 便益: 使って得られる価値
✓ コミュニケーションアイデア
- 独自性: 他にはない伝え方 (例: 見たことがない広告映像)
- 便益: おもしろい, 好き, 共有したくなる内容
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアの関係は、先ほどの図で左側のプロダクトアイデアからコミュニケーションアイデアの矢印が出ているように、主従関係にあります。プロダクトアイデアが 「主」 、コミュニケーションアイデアが 「従」 です。
* * *
では、ここまでの話を具体的なマーケティング事例に当てはめて、さらに 「アイデア」 について見ていきましょう。
化粧品ブランド NARS の TikTok マーケティング
以下の記事からの、TikTok の 「ブランドエフェクト」 を活用した事例です。
資生堂傘下ブランド、TikTok のエフェクトで購入意欲が 48% アップ|日経クロストレンド
記事から引用すると、
資生堂傘下でニューヨーク発のプレステージメーキャップブランドである 「NARS」 は2021年6月、主力商品の新商品のプロモーション展開に合わせて TikTok 上でオリジナルの 「ブランドエフェクト」 を展開した。
目のまばたきに合わせて動画の中の人物の目元の色が変わっていく、という仕掛けで15万人がアイシャドーを疑似体験。商品の 「購入意向」 が 48% アップするなど、大きな成果を得たという。
NARS の4色セットのアイシャドーパレットコレクション 「クワッドアイシャドー」 (出典: 日経クロストレンド)
NARS は TikTok のブランドエフェクトを使いました。ブランドエフェクトは 2D, 3D, AR などを活用し、リッチなブランド体験を提供できる広告メニューです。
NARS はブランドエフェクトから、TikTok 上でメイクの疑似体験をできるようにしました。
NARS で展開した 「NARS Quad Eyeshadow」 は、TikTok と共同開発したエフェクトで、人物が登場している動画に使うと、目元が実際の商品と同じアイシャドーを塗ったように再現される。
また、動画中の目のまばたきや音楽に合わせて、商品にある4種類の色へ次々と変わっていく仕掛けもある。楽しみながら、本格的なアイメイクを疑似体験できるのがこのエフェクトの特徴だ。
アイシャドーが4種類の色に次々と変わっていきアイメイクが疑似体験できる (出典: 日経クロストレンド)
NARS のアイデア
ここで最初に見たアイデアを、NARS の TikTok 活用に当てはめてみます。
簡単に復習ですが、
✓ 良いアイデアとは
- 独自性と便益がある
- プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
- 2つは主従関係にありプロダクトアイデアが主、コミュニケーションアイデアが従
では、NARS のプロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアを順番に見ていきましょう。
✓ NARS のプロダクトアイデア
- 独自性: 1つで4色のアイシャドウ
- 便益: その日の気分や表現したいイメージによって使い分けられる。様々ななりたい自分になれる
✓ NARS のコミュニケーションアイデア
- 独自性: TikTok の最新広告メニューのブランドエフェクトを TikTok と共同開発して展開
- 便益: TikTok 上で4色のアイシャドウを疑似体験できる。気軽に仮想的なメイクを楽しめる
こうして整理すると、NARS のプロダクトアイディアとコミュニケーションアイデアがきれいに連動しています。
TikTok ブランドエフェクトの効果
NARS の TikTok を使ったマーケティングは成功しました。
以下は記事からの引用です。
はっきりと数字で表れた効果もある。
施策後に TikTok から提供されたユーザーデータによると、より商品の購入に近づく意識変化があったユーザーを示す 「態度変容」 が 50% アップ、商品購入の1歩手前と言える 「購入意向」 が 48% アップとなった。さらに今回のエフェクトを体験したユーザーは、ユニークで約15万人に上るという。
学べること

では最後に、今回の内容から学べることを整理をしておきましょう。
一言で言えば、学びは 「アイデアを解像度高く捉えよう」 です。
アイデアはともすれば曖昧で抽象的なワードです。人によって意味合いや言葉の使い方が異なります。
アイデアの要素を2つに分け、独自性 (ユニークさ) と、便益 (もたらす価値) があるかは、筋の良い着想かどうかのチェックポイントになります。
また、マーケティングの文脈では、アイデアと言っても、商品・サービスについてのプロダクトアイデアなのか、それともマーケティングコミュニケーションにおけるアイデアなのかは、分けて考えるといいです。
まとめ
今回は 「筋の良いアイデアとは何か」 について掘り下げ、TikTok のマーケティング事例に当てはめて見てきました。
最後にまとめです。
良いアイデアとは
- 独自性と便益がある
- プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアに分けられる
- 2つは主従関係。プロダクトアイデアが主、コミュニケーションアイデアが従
プロダクトアイデア
- 独自性: 競合商品からの優位性
- 便益: 使って得られる価値
コミュニケーションアイデア
- 独自性: 他にはない伝え方 (例: 見たことがない広告映像)
- 便益: おもしろい, 好き, 共有したくなる内容
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