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象印の 「シームレスせん」 に学ぶ、消費者の 「隠れ不満」 を解決する方法

出典: LEE

今回は、消費者の隠れた不満や潜在ニーズを満たす方法です。

✓ この記事でわかること
  • 象印の水筒 「シームレスせん」 の提供価値
  • 開発の背景は隠れ不満から
  • 売り手の親切が買い手の不満に
  • 学べること

おもしろいと思った商品を取り上げ、人気の理由を見ていきます。そこから、商品開発やマーケティングで学べることを解説します。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

象印の 「シームレスせん」 の提供価値


ご紹介したいのは、象印の水筒 「シームレスせん」 です (公式サイトはこちら) 。

出典: 象印

商品名のシームレスとは、水筒のフタのところです。水漏れを防ぐゴムのパッキンとフタが1つになっています。

出典: LEE

従来のステンレスボトルは、フタの部分がパッキンや留め具の複数の部品で構成されていました。洗う時はパッキンを取り外し、洗い終わったらまた入れ直すという手間がありました。

一方の象印の 「シームレスせん」 は、パッキンとフタが1つになっています。洗う時に手間が減るだけでなく、部品の付け忘れや紛失も防げます。


開発の背景


象印の 「シームレスせん」 の開発の話が、日経クロストレンドの記事で紹介されていました。

象印 「シームレスせん」 ボトルの資料を全公開 - 150万本のヒット|日経クロストレンド

以下はこの記事からの引用です。

従来のステンレスボトルが伸びていたころは 「パッキンを取り外して、きれいに洗える」 という点が評価されていた。

ところが、それらの製品が普及して2本目、3本目を買うようになると、毎回パーツを分解して洗うことを面倒に思う人も出てくる。資料では、市場調査を実施することで 「パッキンに不満がある」 という人が 81.8% にも上ることが分かったとして数値も示している。

 「社内には『洗えるパッキンが受け入れられている』と思い込んでいる人が多かったが、消費者は変わった。だからこそ、我々も変わりましょうと訴えたかった」 と森嶋氏。

パッキンをフタから取り外せて洗えることが、実は不満の温床になってしまっていました。利用者の捉え方や認識が変わったことが、自分たちにとっては 「不都合な真実」 になっていたわけです。

消費者の認識は変わった一方で、売り手は変わらなかったために、ギャップが生まれました。


売り手と買い手のギャップ


ステンレスの水筒の場合で厄介だったのは、売り手である象印が良かれと思ってやっていた 「パッキンは取り外せて洗える方がいい」 というのが、隠れた不満になっていたことです。

自社商品の水筒は買われて使われているという意味では、利用者は概ね満足しています。しかし、「いちいち取り外して洗うのが面倒」 という不満を利用者は持っていたのです

この不満は一時的で、声を大にして伝えたいほどではありません。というのも、利用者は取り外すその時々では手間に感じますが、「水筒とはそういうもの」 と不便さをいつの間にか受け入れてしまっているからです。これでは不満が残り続けます。

象印は、解決されないこの状態に課題感とビジネスチャンスを見出しました。パッキンとフタが一体となった 「シームレスせん」 という新しい水筒を開発し、不満を解消したのです。


学べること (まとめとして)


では最後にまとめとして、象印の 「シームレスせん」 から学べることを整理しておきましょう。

一言で表現をすれば、学びは 「当たり前を疑い、ビジネスチャンスにつなげよう」 です。自分たちには常識なこと、ずっと続いている慣習に対して、健全な批判的精神を持つ重要性です。

とはいえ、今回の 「シームレスせん」 のように、自分たちが良いと思ってやっていることには疑問は持ちにくいです。

では、どうすればいいかと言うと、これは持論で 「答えはお客の中にある」 です。お客さんが直接伝えてこなくても隠れている不満、潜在ニーズ、奥にある気持ちを掘り下げて理解することが大事です。

自分たちの思い込み、変えるべき当たり前を見つけられるのは、顧客理解からです。お客さんを理解する時に、自分たちが当たり前だと思っていることにあえて疑いの目を向ければ、そこにはビジネスチャンスがあるのです。

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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。