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マーケティング 4P への問題提起から考える、最初に 「大切にしたいお客」 を決める重要性


今回は、マーケティングへの問題提起と、そこから考えるマーケティングで大切なことです。

✓ この記事でわかること
  • マーケティングの 4P への問題意識
  • 広告の役割とは?
  • 新規客と既存客の違うモチベーション
  • まずは向き合う相手 (大切にしたいお客) を決めよう

ある対談記事を読んで、マーケティングで考えさせられたことを書いています。

マーケティングで大切にしたいことは何かを解説するので、よかったら最後までぜひ読んでみてください。

マーケティングへの問題提起


こちらの記事を読みました。

 「広告で売れる」 の意味を正しく捉えているか? 西口氏 × 田部氏がブランディング投資について議論|MarkeZine

広告の役割について、マーケティングの本来の意味に立ち返って議論をしている対談記事でした。

問題意識


対談の最初に、マーケティングへの問題意識が語られています。

まず言葉の定義が人によって異なり、マーケティングと言いながらもまったく違うことを話しているケースがとても多いです。

ほとんどの場合は、ビジネスを成立させる顧客 (WHO) と企業の便益 (WHAT) の関係が抜け落ちたまま、いろいろな手段や手法、つまり HOW の話を模索する状態になっています。

また、HOW の話の中でも、認知度や好感度、ブランドイメージが上がれば売れるなど、これまで業界で使われていた指標の有効性を疑うことなく使い続けている場合が多く、私はその点が問題だと思っています。

原因


続いて対談では、なぜ問題が起こったのかに話が進みます。

エドモンド・ジェローム・マッカーシー氏がマーケティングの 4P を提唱し、1990年代前半になるとデイヴィッド・アーカー氏がブランディング概念を打ち出し、定着していきました。

ところが、これらの話が整合性のないままに業界に広がり、広告ビジネスとくっつくことで、「マーケティング MIX をやろう」 「広告は 4P の中のプロモーションとしてブランディングをやるものだ」 という話になっていきました。

しかし、これらの会話にはどこにも顧客が登場していません。ちなみにマッカーシー氏の説には真ん中にコンシューマーの C があります。誰に売るかを決めた上で、プロダクトを、どの場所で、どの価格で、どのように告知、認知させて、どう提案して売るかという理論だったのです。

この C がなくなり 4P だけが独り歩きしているのが、おそらくマーケティングを HOW だらけにした原因だと私は思っています。

4P という Product, Place, Price, Promotion から顧客の視点が抜け落ち、手段である 4P が独り歩きしているという指摘です。本来で望ましいのは、顧客を決めマーケティングミックスである 4P がくることです。

下の図のように中央に 「顧客」 を置くのが 4P です。



広告の役割


では、ここまでのマーケティングでの 「誰に (顧客) が中心にある」 という話を文脈にして、広告の役割を掘り下げてみましょう。

対談記事で触れられていたのは、商品やサービスを利用する前と後では、広告の役割が異なるということです。利用したことがない新規客と、使ったことがある既存客では、広告の位置づけ変わってくるわけです。

新規客への広告


新規のお客さんには、広告は次のような役割を果たします。

プロダクト体験前に広告が寄与するのは、未認知の人に興味喚起をして購買意欲をわかせること。もしくは、認知未購買の人にプロダクトの便益を述べて、購買へと気持ちを変化させる場合に効果的です。

既存客への広告


既存のお客さんへの広告の役割も見ていきましょう。

プロダクト体験後なら、プロダクトの評価を高めるために広告が役立つ場合があります。

たとえば、レストランで食事して 「おいしいけど、まぁまぁかな」 という人に、「おいしい理由は三つ星シェフが監修しているからです」 と広告します。言われなければ 10 しか感じなかったおいしさを 20 感じるようになるわけです。ただ、経験がダメなのに広告だけで再購入の意欲を高めるのは相当難しいです。

体験後の広告の役割でさらに重要なのは、リマインド効果です。

素晴らしい事例は、日清食品さんのカップヌードルですね。あの CM で動くのは、「カップヌードルはおいしいと思うけれど、最近買っていない」 人。そういう人が面白いクリエイティブを見ると、久しぶりだなと思い出して購入する。メガブランドがいいのは、しばらく休眠している状態の離反顧客が多いことです。

 「別に嫌いではないけれど、たまたま買っていなかった人」 たちが広告を見ると、リマインドされて購入に至ります。だから、そうした顧客層をもたないブランドがこの事例を見て、「CM でブランディングしたらモノが売れる」 と思うのは誤解なのです。クリエイティブに投資するときは、相当気をつけないといけません。

整理をすると、新規客へは提供する便益から買いたいという意欲を生むことが広告の役割です。

既存客には役割は2つあり、買った商品の評価を高めるためと、しばらく買っていなかった・使っていなかったことを思い出してもらうリマインド効果です。

新規客と既存客の違うモチベーション


一般的に、新規客と既存客では何かを買う時の動機 (モチベーション) が異なります。

新規客は、得られるであろう価値に対してお金を払います。まだ実際に使ったことがないので、「期待価値」 に対してです。一方の既存客は、一度体験した価値をもう一度欲しいというモチベーションからで、「価値再現」 にお金を払います。

このように、新規客と既存客は求めるものが違うので、広告の中身や伝え方も変わるわけです。


学べること


では最後に、今回の内容から学べることを整理してみましょう。

ポイントは、 「相手が変われば、やることは変わる」 ということです。言葉にすれば当たり前でも意識しないと忘れがちです。

最初に見たマーケティング 4P への問題提起は、「誰に」 が抜け落ちたままで How という手段である 4P が独り歩きしているという指摘でした。これは 「相手が誰か」 を明確にしていないままに、やることばかりに目が向いてしまっている状態です。

広告の役割の話も同じです。

新規のお客さんか既存のお客さんかによって、マーケティングコミュニケーションの中身や伝え方は、相手に合わせて異なるものにすべきです。

How という手段は、自分たちが実際に手足を動かすのでイメージしやすく、だからこそ目が行きがちです。もちろん How も大事ですが、マーケティングでは手段 (例: マーケティング 4P) の前に、「なぜ (目的) 」 「誰に」 「何を」 を明確にすることが大事です。「誰に」 というのが、自分たちが大切にしたいお客さんです。


まとめ


今回はマーケティングへの問題提起と広告の役割から、マーケティングで大切にしたいことを見てきました。

最後にまとめです。

マーケティングへの問題意識
  • ビジネスを成立させる 「顧客」 と 「提供する便益」 の関係が抜け落ちたまま、手段や手法を模索する状態になっている
  • マーケティングの 4P の本来は中央に顧客がある。誰に売るかを決めた上で、プロダクト・売る場所・価格・コミニュケーションからどう売るかという理論

まずは相手を決める
  • 相手が変われば、やることは変わる
  • マーケティングでは手段 (例: マーケティング 4P) の前に、「なぜ (目的) 」 「誰に」 「何を」 を明確にしよう


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。