今回は、経営戦略についてです。
丸善の事業運営から、経営戦略について見ていきます。
✓ この記事でわかること
- 丸善の書店事業は利益を出せていないのに、存続している理由
- 戦略とは何か (本質)
- 経営戦略の3つのポイント
この記事を読んでいただきたいと思うのは、キーワードが経営戦略なので会社を経営されている方です。
他には仕事で戦略をつくったり、普段から戦略を考えることが好きな人や、経営戦略に興味があると思った方にも参考になればと思います。ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。
丸善の書店事業
こちらの記事を読みました。
丸善の書店営業利益率が 「たったの 0.1% 」 でも経営は安泰の理由|DIAMOND Chain Store
以下は記事からの引用です。
同事業 (引用者注: 書店事業) の営業利益率はわずか 0.1% 。同じく株式上場している書店の三洋堂ホールディングス 2.23% (21年3月期業績予想) 、蔦屋書店を展開するトップカルチャー 1.4% (20年10月期) と比べ、大きく差が開いており、同業他社と比べてもかなり低い水準だ。
それでも 「丸善全体」 としてみたときに経営自体は安定していると筆者はみる。書店の丸善は丸善 CHI ホールディングスの一小売部門で、その他の事業がしっかりと稼いでいるからだ。同社の事業セグメントは店舗・ネット販売事業のほか、文教市場販売、図書館サポート事業、出版事業、その他で構成されている。この文教市場販売、図書館サポート事業が同グループの収益の柱になっている。
書店事業への経営的な判断
丸善の書店事業の営業利益率が 0.1% でも事業が存続できる理由は、他の事業がカバーしているからです。
具体的には文教市場販売と図書館サポート事業です。記事によれば図書館サポート事業の営業利益率は書店事業の88倍とのことです。
たとえ1つのある事業が儲かっていなくても他に稼ぎ頭の事業があれば、利益が出ていない、時には一過性の赤字であっても事業を存続させることができます。
この判断は個々の事業レイヤーではなく、経営のレイヤーで行うものです。つまり経営戦略としての決断なのです。
戦略とは
ここであらためて戦略について考えてみましょう。そもそも戦略とは何でしょうか?
私の一言の定義ですが、戦略とは目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。
別の表現をすれば、戦略とは目的達成のためのリソース配分の指針です。どこにリソースを注力するかです。
経営戦略の1つの大事な要素は、事業ポートフォリオのマネジメントです。経営リソースである人・モノ・金をどの事業にどれだけ、いつ投入するかを決めます。特に意図的にリソースを減らす、さらに言えばその事業をクローズさせる (撤退する) という判断は経営者にしかできません。撤退の最後の意思決定をするのは、事業責任者ではないのです。
経営戦略のポイント
それでは、経営戦略のポイントを掘り下げてみましょう。3つあります。
✓ 経営戦略のポイント
- 全事業の現状と将来の把握
- リソース配分の決定 (時には撤退判断)
- 事業間シナジーの創出
順番にご説明しますね。
事業の現状と将来の把握
経営者に求められるのは、全ての事業の現状を把握し、将来のあるべき姿を描くことです。具体的な着眼点は、参入している市場の成長性や競争環境、自社のシェアです。
現時点の 「点」 だけではなく、未来への 「線」 として捉えます。丸善の例に当てはめれば、書店事業の他に、文教市場販売、図書館サポート事業、出版事業について書籍を提供するという観点から俯瞰して現状を把握し将来像を描きます。
リソース配分
リソースは有限です。意図と意志を持ってリソースを配分します。
リソース配分状況とは、経営の戦略が目に見える結果として表れたものです。
丸善が利益の出ない書店事業にリソースをかける判断をしたように、リソース配分には経営者としての覚悟が問われます。
事業間シナジーの創出
全事業を個別に把握するだけではなく事業間の相乗効果が出るようにします。1 + 1 + 1 = 3 ではなく、4 や 5 になるようにです。
事業間のシナジーとは例えば丸善で言えば、書店からの情報やノウハウが図書館運営に活かされ、図書館事業での情報が書店にも活用できます。これは丸善にとって、書店も図書館サポート事業も、大局的に見れば本を読みたい人に本を提供する事業だからです (違いは売るか貸すか) 。
まとめ
今回は丸善の事業から、経営戦略に学べることを見てきました。
最後にまとめです。
経営戦略
- 戦略とは目的達成のためのリソース配分の指針
- 経営戦略の1つの大事な要素は、事業ポートフォリオのマネジメント
- 意図的にリソースを減らす、その事業をクローズさせる (撤退する) という判断は経営者にしかできない
経営戦略のポイント3つ
- 全事業の現状と将来の把握。参入市場の成長性, 競争環境, 自社のシェア
- リソース配分の決定 (時には撤退判断)
- 事業間シナジーの創出
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