出典: PR TIMES
今回のテーマは、マーケティングの根幹である 「選ばれる状況のつくり方」 です。カテゴリー利用シーンで自社商品が選ばれる状況をつくろうという話です。
おもしろいと思ったあるタクシーアプリの施策を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。
✓ この記事でわかること
- タクシーアプリ GO が、タクシー手配ができる QR コードをホテル客室に設置
- 一石三鳥の施策
- ターゲット顧客の利用シーンで選ばれる状況をつくろう
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
タクシーアプリ 「GO」 の施策
2021年9月に GO のアプリ機能に 「ホテル配車機能」 が追加されました。
Mobility Technologies は、タクシーアプリ 「GO」 に、ホテル客室から QR コードでタクシーを呼べる 「ホテル配車機能」 を追加。9月 (引用者注: 2021年9月) から199ホテル約4万室のホテル客室へ設置を開始した。
ホテル客室に QR コードを設置
施策としてうまいと思ったのはアプリ内に機能を追加しただけではなく、ホテルの客室に QR コードを置いたことです。
出典: PR TIMES
ホテルの客室に設置された QR コードをスマートフォンで読み取ると、出発地が自動入力された配車アプリ 「GO」 の注文画面に飛ぶ仕組みです。
宿泊客はホテル周辺の土地勘がなくてもホテルの部屋から自分のスマホでタクシー手配をできます。なお、QR コードを使ってタクシーを呼ぶためには GO アプリのインストールとアカウント登録が必要とのことです。
ホテルのフロント業務の負担軽減
ホテルの立場で見た時に GO アプリの施策 (客室での QR コード設置) が何を意味するのかを考えてみましょう。
ホテル側のメリットは業務負担を減らすことにあります。
ホテルのフロントでは、顧客サービスの一環としてタクシー手配を代理で行なう場合があるが、移動が集中する朝の時間帯、チェックアウト業務と同じタイミングでタクシー手配が発生することでフロント業務が逼迫されてしまう課題があった。
一般的にはホテルからのタクシーの手配にはホテルのフロントに声をかけます。しかし移動が集中する朝にチェックアウトで混雑する時間帯に重なるとフロント業務が対応しきれず、宿泊客が待たされるなどの問題があったわけです。
ホテルの部屋で宿泊客が自分でタクシーを手配できれば、フロント業務の負担軽減になります。
一石三鳥の施策
GO アプリの施策は三者にメリットがあります。
✓ 一石三鳥の取り組み
- 宿泊客: わざわざホテルのフロントに言わなくても、タクシーを簡単に手配できる
- ホテル: フロント業務の負担軽減。お客さんの満足度向上からリピートが期待できる
- GO アプリ: アプリの認知向上と利用機会の提供から、新規顧客の獲得と既存客の利用促進
選ばれる状況をつくろう
では今回の事例から学べることを掘り下げていきましょう。
秀逸な QR コードの客室設置
前半で少し触れましたが、QR コードをホテルの客室に1つ1つ置いていったのが良いです。
宿泊客はホテルの部屋に入ってまず室内に何があるかをチェックするはずです。その時に GO アプリの QR コードがあれば、普通は置いていないので興味を持ってもらえます。
GO アプリを使ったことがなくても、タクシーを呼びたいと思っている人ならアプリをインストールしてくれることが期待できます。また、既に GO アプリに登録してスマホに入っている人は他のタクシー手配方法 (フロントに頼む) ではなく GO を使ってもらえます。
利用シーンで先回りして仕込んでおこう (CEP から入る重要性)
ホテルからの移動にはタクシーが使われやすいですよね。GO アプリの QR コードを客室に置いておけば、宿泊客がタクシーを使いたい場面でちょうどいい感じで自社サービス利用の提案ができるわけです。
使われるであろう利用シーンにおいて、先回りして存在感を高めておくことで自分たちが選ばれる可能性が高くなります。
「カテゴリーレベル (今回の場合ならタクシー) で使いたくなったり欲しくなる瞬間はどこか」 「その時に自社商品・サービスの提案を入れておけないか」 を考えてみるとマーケティングへのヒントになります。
このように 「カテゴリーの利用 → 自社商品・サービスの利用」 と二段階で捉えるといいです。マーケティングの専門用語で表現するなら、「カテゴリーエントリーポイント (CEP) で自社商品・サービスが選ばれる状況をつくろう」 です。
まとめ
今回はタクシーアプリの GO の施策を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 利用シーンで選ばれる状況をつくろう
- 使われるであろう利用シーンにおいて、先回りして存在感を高めておくことで、自分たちが選ばれる可能性が高くなる
- 「カテゴリーレベルで使いたくなる瞬間はどこか」 「その時に自社商品・サービスの提案を入れておけないか」 を考えてみよう
- 「まずカテゴリーの利用シーンを見極める → その時に自社商品・サービスを利用してもらう提案」 という二段階でマーケティングを設計するといい
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