今回のテーマは価値提案です。「僕は優しくてお金持ちです」 と言ってはダメという話です。
おもしろいと思ったマーケティング事例から学べることを掘り下げていきましょう。
✓ わかること
- 見つけたものをそのまま言語化してもクリエイティブではない
- 合コンの例、テレビ CM の例
- ほけんの窓口の事例
- 「僕は優しくてお金持ちです」 と言ってはダメな理由
- 価値の伝え方
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
見つけたものをそのまま言語化しない
こちらの記事を読みました。
マーケターは人間の煩悩と向き合うべき - 鹿毛氏 × 田部氏が語ったインサイト・クリエイティブ・競合のはなし|MarkeZine
ノバセルの田部正樹さんと、「エステー消臭力シリーズ」 などの代表作を持つマーケターでありクリエイティブディレクターの鹿毛 (かげ) 康司さんの対談記事です。
何かを示唆するのがクリエイティブ
2人の議論で 「そのまま言語化してもクリエイティブにはならない」 という話が興味深かったです。
記事から該当箇所を引用します。
田部: 一方で、顧客の心を理解してからいざ 「クリエイティブで表現しよう」 となった際に、やはりどうしてもジャンプは発生してしまうと思うんです。この距離の問題を鹿毛さんはどうクリアしていらっしゃいますか。
鹿毛: たとえばある女性が合コンで 「優しくて収入が平均以上の男性」 との出会いを望んでいるとします。そこで男性が 「僕は優しくてお金持ちです」 と言っても嫌われますよね。広告も同じで、見つけたものをそのまま言語化することはクリエイティブとは言えません。
では、尺が短いテレビ CM で 「優しくてお金持ち」 を表現するためにはどうすれば良いか。たとえば高級時計をはめた男性の手元を映し、サラダを取り分けて女性に渡すシーンで表現することはできますよね。そんな要素をたくさんちりばめて、15秒で何かを匂わそうとするのがクリエイティブです。
汲み取るが直接は言わない
自分が言いたいことを伝えたくなるのは誰もがそうですね。しかしそこはグッとこらえるのがポイントです。自分が言いたいことよりも相手の知りたいことを優先させるわけです。
だからといって、伝える場合に相手が望んでいることをストレートにそのまま言ってしまうと時には逆効果になります。先ほどの対談で例に挙げられていた合コンです。
マーケティングコミュニケーションも同じなんですよね。
テレビ CM で 「優しくてお金持ち」 とは言いません。高級時計をはめた男性の手元を映し、サラダを取り分けて女性に渡すシーンで表現するなど要素をちりばめ、限られた時間や枠で何かを示唆しようとするクリエイティブなのです。
価値提案の極意
では、どうすればクリエイティブにできるのでしょうか?別の表現をすればお客さんに響くメッセージやコンテンツをどうつくるかです。
鹿毛さんが以前に手掛けた 「ほけんの窓口」 のプロモーション事例が参考になります。
ほけんの窓口の事例
ほけんの窓口で想定するお客さんの心理を読み取り伝え方を工夫し、来店や保険加入の障壁をなくそうとした話です。
私がプロモーションを担当した 「ほけんの窓口」 の例をご紹介しましょう。保険の契約手続きは多くの人にとって面倒なもの。利用者の心の壁を取り除くために、ほけんの窓口を 「契約するところ」 から 「保険の勉強ができるところ」 に変えたのです。
いわゆるポジショニングを変えて CM を制作・放映したところ、前年比 130% の来店を促すことができました。偉いのは新しいコンセプトを考案してクリエイティブを作った私ではありません。ポジショニング変換の重要性を理解し、事業の方向性をピボットした経営者がすごいのです。
ほけんの窓口は保険サービスの契約する場所です。生活者もサービス提供者も双方が当たり前のように思っていた認識です。
新しく意味合いを変え 「保険の勉強ができるところ」 として打ち出しました。
生活者は 「保険のことを勉強したい」 と直接言ってきているわけではありません。なんとなく保険のことはよくわからないと感じている程度でしょう。でも実は気になっていて、少なくない毎月の保険金を払うならちゃんと理解し納得してから加入していたいと思っています。
こうした生活者の心理に寄り添った価値提案を 「保険の勉強ができる場所」 としたわけです。
価値の伝え方
では、メッセージやクリエイティブに落とし込む流れを整理してみましょう。
✓ 価値の伝え方
- お客さんの心理 (奥にある望みや不満) を理解する
- 商品やサービスの特徴と照らし合わせ、お客さんの文脈に合う解釈や意味づけをする
- お客さんに価値を提案するメッセージをつくる
マーケティングコミュニケーションを成功させるカギはお客さんの文脈に合わせて意味づけをし、価値としてどう伝えるかです。
価値の表現次第でお客さんにとっての意味合いが変わります。価値提案がお客さんの課題感、困っていることや悩み、実は望んでいることにマッチすれば、お客さんから 「自分向けの商品」 と思ってもらえるわけです。
英語の creative には 「創造的な」 という意味があります。広告クリエイティブは 「広告用に作成されたコンテンツや作成物」 を指します (クリエイティブ職やクリエイティブ部など職種や部門を表すこともあります) 。
価値提案をメッセージにしクリエイティブをつくることにはマーケターの創造性が試されるのです。
まとめ
今回はマーケティングコミュニケーションについてでした。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 価値の伝え方
- お客さんの心理 (奥にある望みや不満) を理解する
- 顧客理解と商品やサービスの特徴を照らし合わせ、商品に対してお客さんの文脈に合う解釈や意味づけをする
- お客さんに価値を提案するメッセージやクリエイティブをつくる
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、今日から活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!