出典: 日経クロストレンド
今回は 「風を吹かせ桶を買ってもらうマーケティング」 です。お客さんの態度変容と行動を起こし、どうやって自社商品を買ってもらうかという話です。
おもしろいと思ったナイキの取り組みから、マーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。
✓ この記事でわかること
- ナイキがカラ勉用にカラオケ店を無料開放
- 息の長いストーリー設計
- 風を吹かせ桶を買ってもらうマーケティング
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
NIKE 塾
ナイキがおもしろい取り組みをしています。
スタディブレイクの提案
高校生向けの施策ですが、詳しく見てみましょう。
「NIKE 塾」 は、日本の高校生を中心とした若い世代に向け、スポーツや体を動かすことを通じて肉体的にも精神的にもストレスから解放し、ウェルビーイング (心身の健康や幸福) の実現を目指すプログラムだ。
NIKE 塾の特徴は、心身ともにリフレッシュして集中力を取り戻すための 「スタディブレイク」 を提案していること。まずは授業や勉強の合間にできる短時間の、道具を使わないシンプルなエクササイズをオンラインで配信している。
スケボーの東京五輪金メダリストである堀米雄斗選手による 「メディテーション with 堀米雄斗」 、女性タレントのゆりやんレトリィバァによる 「ゆりやんレトリィバァのチェアエクササイズ」 「ハンドマッサージ with ゆりやんレトリィバァ」 、「友達と一緒にトライ! ブレイキンの Ami & Shigekix が教えるゲームエクササイズ」 など、ナイキならではのユニークなエクササイズ動画が並んでいる。
エクササイズ動画 (出典: 日経クロストレンド)
カラオケ店を自習室にして無料開放
出典: 日経クロストレンド
高校生がやっている 「カラ勉 (カラオケ店で勉強すること) 」 に着目し、ナイキはこんな打ち手もやっています。
さらに、NIKE 塾の取り組みを身近に体感してもらうため、2022年9月には期間限定で 「カラオケ館」 を自習室として開放。東京 (渋谷本店, 池袋東口店) 、大阪 (なんば戎橋店) 、福岡 (天神本店) の3都市4店舗で実施した。
「カラ勉 (カラオケ店で勉強すること) 」 という日本独自の学生カルチャーに着目し、オリジナル勉強セットとフードドリンクセットをプレゼント。勉強の合間にはスタディブレイクのエクササイズも実践し、非常に好評だったという。
学べること
では、ナイキの事例から学べることを掘り下げていきましょう。
息の長いストーリー
ナイキの取り組みが興味深いのはプロセスが長いことです。シューズやスポーツウェアなどのナイキの自社商品にたどり着くには息の長いストーリーになっています。
流れを整理すると、
- 高校生がカラオケルームを勉強に使っている (カラ勉)
- 独自プログラムの 「スタディブレイク」 の提供
- カラオケルームを無料開放
- ナイキへの関心が高まる
- 自社商品を買って、使ってもらえる
- 親しみや愛着を持ってもらえる
日本語の言い回しで 「風が吹けば桶屋が儲かる」 という格言があります。一見すると関係のなさそうな出来事が、めぐりめぐって影響を及ぼすという意味です。
英語での似た表現に 「バタフライエフェクト」 があります。直訳すると蝶の効果ですが、もともとは小さな蝶が羽ばたいただけで、遠くの場所の気象に変化が起きるという気象学の用語です。
ナイキの事例に話をつなげると、ナイキがやろうとしているのは 「風を吹かせ桶を買ってもらう」 ということです。
風を吹かせ桶を買ってもらう
ナイキは自分たちが桶屋だとして意図的に風を吹かせています。最終的に目指すこと、具体的には自社商品を買ってもらったり、ナイキへの愛着を生むために急がばまわれをやっているわけです。
勉強の休憩にリフレッシュできるプログラムを開発し提供したり、期間限定とはいえカラオケルームを勉強用に無料開放をしました。一連のプロセスの上流から関与し、商品やブランディングにつなげるストーリーがあります。
起点は顧客の文脈
マーケティング視点で大事なのはターゲット顧客のやっていることや関心事が起点になっているかです。
売り手が自分たち都合でストーリーをつくっても絵に描いた餅にすぎません。想定するお客さんの普段の日常生活において自分たちはどう入り込むのか。相手の文脈に沿って寄り添うように共生することがポイントになります。
桶屋にすぎなくてもプロセスの上流となる風を吹かせ、お客さんの態度変容と行動を変えて、自社商品につなげるというストーリーです。中長期の視点を忘れずに実行をやり抜く覚悟が必要です。
まとめ
今回はナイキの取り組みから、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 風を吹かせ桶を買ってもらうマーケティング
- 売り手が自分たち都合で売ろうとしても、お客さんには響かない
- ターゲット顧客の普段の文脈を理解し、お客さん起点でコミュニケーションをすることが大事
- 自社商品へのストーリーの上流から働きかけ (風を吹かせ) 、お客さんの態度変容と行動を変え、自社商品 (桶を買ってもらう) につなげよう
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