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フェーズフリー鞄。マーケとはパーセプションチェンジを起こすこと。価値イメージがつくる競争優位とは?

#マーケティング #価値提案 #パーセプションチェンジ

なぜあの商品は、お客さんの興味を引くのでしょうか?

そのヒントは 「価値イメージ」 にあります。ビジネスでは、自社商品・サービスへの 「お客さんから見たイメージ」 をいかに良いものに持ってもらえるか、ここをめぐる戦いなのです。

今回は新しい概念を持つユニークな鞄の事例から、マーケティングの奥深さとおもしろさを解き明かしていきます。ぜひ一緒に学んでいきましょう。

フェーズフリーの鞄


ご紹介したいのは、日常と災害時の両方で使える 「フェーズフリー」 という特徴を持つ鞄です。

かばんメーカーのエース (東京・渋谷) は、日常にも災害時にも使える 「フェーズフリー」 の認証を受けたかばんを初めて発売する。8月下旬からライフジャケットにもなる仕事用リュックや避難所で便利なスーツケースなど3商品を展開する。9月で関東大震災から100年がたつこともあり、災害時に役立つ製品を投入する。

フェーズフリーは身の回りの商品を日常と非日常で切り分けず、もしものときにも役立つよう設計する考え方だ。「備えない防災」 とも呼ばれ、普段使いに防災などの機能が溶け込む商品が広がる。

フェーズフリーの鞄はたとえばこちらです。

出典: 日経

リュックの特徴を詳しく見てみましょう。

販売数が累計30万個を超えた仕事用リュック 「ガジェタブル」 シリーズで、通勤時と帰宅困難時に役立つ9機能を追加した 「ガジェタブル PF」 (3万7400円 ~ 3万9600円) を開発した。付属の PC ケースは中地にふわふわの起毛素材を使い、裏返すと枕や座布団に様変わりする。東日本大震災のときに空港の冷たい床で一夜を過ごした社員の声を反映した。

救援で使える笛機能が付いたチェストベルトや、出張や物資購入で荷物が増えても困らないマチ幅の拡張機能などもある。見た目は抗菌性能がある上品な合成皮革でスーツにも合わせやすい。

学べること


ではフェーズフリーの鞄から、学べることを掘り下げていきましょう。

マーケティングの観点で学べるのは、カテゴリーやジャンル、商品に対する 「お客さんからの価値イメージ」 を新しくつくりにいく重要性です。

価値イメージをめぐる戦い


マーケティングとは 「商品の戦いではなく、パーセプションをめぐる戦いである」 という考え方があります。

パーセプションとは日本語では知覚や認識です。マーケティングの文脈では、お客さんが商品に抱く価値イメージのことを指します。

マーケティングはパーセプション (価値イメージ) をめぐる戦いとは、お客さんからの自社商品への印象として、いかに価値のある商品だと思ってもらえるかが大事ということです。

複数の商品アイテムが並んでいても、その中からお客さんが自社の商品に価値を見出していれば、自社商品は独自の存在になれ、お客さんから選んでもらえるのです。

フェーズフリー鞄のパーセプションチェンジ


では、パーセプションの観点からフェーズフリーの鞄を見てみましょう。

フェーズフリーの鞄は、普段使うバッグに防災の機能や万が一のときの安心感を価値として持ち合わせています。

フェーズフリーという概念、そしてフェーズフリーになっている鞄が新しく提案されることで、お客さんの中での 「良い鞄の定義」 が変わります。新しく 「自分にとって良い鞄とは、防災時も役に立つ普段から使える鞄である」 と定義が書き換わるわけです。

この価値観の変化が、パーセプションチェンジです。価値認識が変わることで、フェーズフリーの鞄があらためて魅力的に見え欲しいと思え、選んでもらえます。

マーケティングの役割


今回の事例からの学びを一般化すると、マーケティングの役割が見えてきます。

マーケティングで大事なのは、お客さんへの理解にもとづいてお客さんが欲しいと思うであろう価値を見出し、その価値が得られる商品を提案し、お客さんの態度や行動の変化を起こすことです。

態度変容は新しい価値観への気づき、商品への興味喚起、欲しいと思ってもらう購入意向を生むことです。行動変容とは、お客さんに商品を選んでいただき、実際に買って利用してもらえることです。

これらの態度や行動が起こるのを偶然に頼りただ待つのでなく、意図的に起こすことがマーケティングの役割です。ここにマーケターの知恵の出しどころがあります。


まとめ


今回はフェーズフリーの鞄を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングは商品の戦いではなく、パーセプションという 「お客さんが商品に抱く価値イメージ」 をめぐる戦い。お客さんが価値を見出していれば、その商品は独自の存在になれ、お客さんから選んでもらえる

  • マーケティングの役割は、お客さんへの理解にもとづいてお客さんが魅力に思うであろう価値を見出し、その価値を実現する商品を提案し、お客さんの態度や行動の変化を起こすこと


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。