Menu

ベビースターラーメン。客数を増やす施策がいろいろ勉強になる

#マーケティング #顧客獲得 #利用用途

売上を上げるためには 「客数を増やす」 か 「お客さん1人当たりの客単価を上げる」 という大きく2つのアプローチがあります。

今回は、客数を増やす方法をベビースターラーメンの事例から解説します。

ベビースターラーメンの新しい用途開発



お客さんを増やすために有効なアプローチの1つは、今までになかった自社商品の 「利用用途」 や 「使うシチュエーション」 を新たにつくり出すことです。

たとえば食品なら、これまではお昼ごはんや晩ごはんで食べられていたものを、新たに間食として食べてもらうように利用シチュエーションを増やします。


では利用用途を増やす具体な例として、ベビースターラーメンのケースで見ていきましょう。

新しい利用用途を増やす

ベビースターラーメンは、自分たち売り手が気づいていなかった 「ベビースターラーメンがもんじゃ焼きのトッピングの具材として使われていること」 を発見しました。

ベビースターラーメンで 「料理にも使えるスナック菓子」 という、新たなブランド接点の開拓につなげたわけですが、そのアイデアの源泉は 「もんじゃ焼き」 でした。

ベビースターラーメンはもんじゃ焼きのトッピングに使われていることについて社内で確認しても、食材として使うことをおやつカンパニーが主体となって PR をしたは特にありませんでした。

レシピサイトを検索して調べてみたところ、ベビースターラーメンが食材として使われる比率がポテトチップスよりも多いことがわかりました。スナックというカテゴリーではポテトチップスは圧倒的な存在感がありますが、料理の食材という領域で見れば、ベビースターラーメンのほうが浸透していたのです。

一部の消費者が既にベビースターラーメンを食材として取り入れていることは、他のスナック菓子にはない、ベビースターラーメンならではの独自価値でした。

新しい用途を広げる施策

そこで食材やトッピングに自社商品が使われているという発見を皮切りに、おやつカンパニーはベビースターラーメンをお菓子としてだけでなく、料理にも使えるという新たな用途を開拓していきました。

たとえば、レシピ本やレシピサイトの作成です。


ベビースターラーメンの公式サイトでは商品の食感やうま味を生かした 「ちょい足しレシピ!」 を公開。レシピは5段階の 「お手軽さ」 や 「楽しさ」 などで検索でき、手間がかからないレシピを掲載しています。

また、レシピ動画メディア 「DELISH KITCHEN」 ではベビースターラーメンを使ったレシピを提案するなど、外部メディアも積極的に活用しました。

他には、ラーメンの麺で文字を書く "麺文字" のアイデアを発信しました。

ベビースターラーメンはちぢれ方や長さが1本ごとに異なる形をしています。この特徴を活かし、麺を組み合わせて絵や文字をつくるのが麺文字です。

ベビースターラーメンの担当者たちは麺文字に目を付け、SNS の運用メンバーが投稿のネタづくりにいろいろな麺文字を編み出しました。一部の人たちの間でにわかにブームになり、ブランド全体のプロモーションに横展開をしました。

2022年12月には誠文堂新光社から、麺文字を使い1年の行事や歴史、出来事を学べる子ども向けの教養事典 「めん文字で楽しむ 今日は何の日? 1~3月」 や 「めん文字で楽しむ 今日は何の日? 4~6月」 などを発刊しました。



休眠顧客や離反顧客の復活

客数を増やすためのもう1つの有効な手は、休眠顧客や離反顧客の復活を狙うことです。

しばらく買っていなかった人 (休眠顧客) 、以前は買っていたものの今は買ってもらえていない人 (離反顧客) に戻ってきてもらうという、休眠顧客の掘り起こしや離反顧客の復活によって客数を増やすアプローチです。

そのためには、自社商品のことを思い出してもらう “きっかけ” をつくることが重要になります。

ここでもベビースターの事例から詳しく見ていきましょう。

ベビースターの様々なコラボ商品

ベビースターラーメンは、多様なコラボ商品を積極的に展開しています。

たとえば、アイスクリームやベビースターラーメンのスニーカーなど、スナックというカテゴリーを超えた商品です。


ベビースターラーメンが全面にプリントされたスニーカーは、スポーツブランドの 「リーボック」 、人気スニーカー店 「atmos (アトモス) 」 の3社による共同企画です。

では、ベビースターラーメンが積極的にコラボ商品を進めている狙いはどこにあるのでしょうか?

コラボ商品の狙い

結論から言うと、ベビースターのアイスやスニーカーなど、意外性のある組み合わせでベビースターラーメンを目にすることで、ベビースターのことを 「思い出してもらう効果」 を期待しているのでしょう。

特に、ここしばらくはベビースターラーメンを食べていなかった休眠顧客や離反顧客などにもう一度、ベビースターラーメンの記憶を呼び起こし、戻ってきてもらうことを狙った施策なのです。

そう考えれば、コラボ商品から新たな売上を伸ばすというよりも、位置づけはあくまで話題をつくり、ブランド想起率を高めることです。休眠顧客や離反顧客の復活という客数を増やすことで、本業であるスナック菓子の売上につなげることが主目的です。

コラボの成果

実際に、コラボ商品はその意外性から話題を集めました。たとえば、竹下製菓と共同開発したアイスは、2000件を超える SNS の投稿につながったとのことです (参考記事) 。

SNS を通じた口コミなどがベビースターラーメンを思い出すきっかけとなりブランド想起率は上がりました。コラボ商品のアイスなどの発売後は、調査会社インテージの購買データでは、ベビースターのライトユーザーが 17.8% 増加するなど、狙い通りの結果でした (参考記事) 。

想起からの客数増加

コラボ商品はめずらしいものに関心の高い好奇心の強い人、物好きな人は買ってくれるかもしれませんが、多くの人が買う商品ではないかもしれません。

しかし、必ずしもコラボ商品を買ってもらわなくても、少くない人にベビースターラーメンのことを目にする機会をつくり、思い出してもらえるきっかけを生み出せるので、ここにコラボ商品の意味があるわせです。

ユニークなコラボ商品で話題を作れば、「そういえば最近ベビースターラーメンを食べてない」 「久しぶりにベビースターラーメンを食べてみてもいいかも」 と思ってもらえるでしょう。お店でベビースターラーメンのことを目にした時に、商品に手を延ばしてもらえる可能性を高められます。

休眠顧客や離反顧客に、自社商品のことを思い出してもらう王道の方法は広告ですが、意外性のあるコラボ商品は広告塔の役割を果たします。

自社商品のことを思い出してもらうきっかけをつくり、客数を伸ばしていくのです。

まとめ


今回はベビースターラーメンの事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 新たな利用用途の開発: 顧客層を拡大するために、既存商品の新しい利用用途を打ち出すことは有効なアプローチ。たとえば食品なら昼食や夕食用だけではなく、間食として提案することで新たな需要をつくる

  • 休眠顧客や離反顧客の復活: 顧客基盤を再活性化させるために休眠顧客や離反顧客の復活は有効な方法となる。しばらく買っていない人、かつてはお客さんだった人に自社商品のことを再び思い出してもらい、再購入を促す

  • コラボ商品を利用したブランド想起: 他社とのコラボ商品を通じてブランドを再認識してもらうことで、休眠顧客や離反顧客に関心を持ってもらうことを狙う。意外性のある商品とのコラボレーションは話題性を高め、休眠顧客や離反顧客に 「久しぶりに買ってみよう」 と思わせるきっかけを提供する


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。



気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。

ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!


最新記事

Podcast

多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信中。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。