#マーケティング #アイデア創発 #イシューからはじめる
次に打ち出そうとする製品やサービスは、本当にお客さんの心をつかむものになるでしょうか?
新しい商品へのアイデア発想には、お客さんは誰か、お客さんはどんな問題を抱えているか、ニーズは何かを理解することが欠かせません。
今回は、新商品をつくるアイデア発想ツール製品を取り上げます。顧客設定と顧客理解の重要性に焦点を当て、お客さんのニーズに合わせた商品をどのように開発するかを掘り下げます。
デジテク・カード
デジテク・カードは、富士通が独自に開発したアイデア発想ツールです。
デジテク・カードは分野ごとに分かれた計27枚のカードで構成されています。
分野は5つに分かれ、「AI (データを元に学習・判断する技術) 」 「IoT (モノとモノ・人とモノの境目をつなぐ技術) 」 「Robotics (作業を自動化する技術) 」 「Cyber Security (信頼性の高いやり取りを安全に行う技術) 」 「Architecture (5G を用いた技術) 」 が用意されています。
カードの表と裏のイメージは次のようなものです。
各カードの表面には、技術がもたらす効能を 「○○ を □□ する」 という形式で記載されます。たとえば AI の分野のカードなら 「変動を推測する」 です。ちなみに、これらのデジタル技術はすべて富士通が実現可能とのことです。
各カードの裏面には、その技術を活用した事例が載っています。たとえば 「変動を推測する」 なら、「客数を予測して在庫ロスを減らす」 「船舶の衝突リスクを予測する」 「健康リスクを洗い出す」 などです。
カードを使ったワークショップ
富士通は、デジテク・カードの使い方を広げるために、ワークショップ 「デジテク勉強会」 を定期的に開催しています (参考記事) 。
ワークショップは全部で4つの工程があります。
- ユーザー調査: ユーザーの抱えるニーズや課題を抽出する
- ワークショップ設計: ユーザー像や課題からワークショップを設計
- アイデア発想: ワークショップでアイデア出しをする
- アイデア育成: 各アイデアを評価と選定し、ブラッシュアップを行う
デジテク・カードを使うのは、ワークショップの全工程の中で3つ目の 「アイデア発想」 の段階です。
ワークショップは1チーム 3, 4人で行います。最初は、各チームのメンバー1人ひとりに6 ~ 7枚のデジテク・カードをランダムに配布します。
各メンバーは配られたカードを眺めながら、「このカードを使えばこんな課題が解決できるかもしれない」 などと、カードから発想したアイデアを出し合います。
イシューがあっての解決策
では、デジテク・カードから学べることを掘り下げていきましょう。
デジテク・カードでのアイデア道具の前提
補助線として使いたいのは、「デザイン思考」 です。
デザイン思考とは、デザイナーの考え方やものの見方、ノウハウを “デザイナーではない人” にも使えるように概念化された思考方法・スキルです。
デザイン思考は、「共感 → 問題定義 → アイデア創出 → 試作 → テスト」 という5つのステップで進められます。
デジテク・カードの役割をデザイン思考に当てはめると、デザイン思考の5つのステップのうち、デジテク・カードが活用されるのは3つ目の 「アイデア創出」 のところです。
アイデア創出が機能するためには、前提としてその前段階にある 「共感」 と 「問題定義」 がどれだけできているかが大事だということです。逆に言えば、想定するお客さんの困りごとの発見、共感、適切な問題定義がされない中でのカードの使用は、絵に描いた餅になる危険性があるわけです。
「誰の問題を解決するのか」
ビジネスでの新製品や新サービス開発のアイデア創出で重要なのは、想定するお客さんのどんな困りごとや顧客課題に対処するのかという視点です。
活用する IoT 技術などの情報、デジテク・カードの表面に記載されている技術がもたらす効能、裏面の技術を活用した具体的な事例、カードを活用して最終的にできあがるプロダクトも、お客さんの役に立ったり課題への対処に貢献できてこそ、ビジネスとして意味があります。
もし顧客課題というイシューなきプロダクトとなってしまうと、せっかく開発したはいいものの、誰にも必要とされなかったという存在になってしまいかねません。
新規事業の立ち上げプロセス
新製品などの新規事業を生み出すためには、大きく次のようなプロセスで進めていくといいことが大事です。
- ターゲットとするユーザーやお客さんを決める
- お客さんの置かれた環境、抱えているであろう問題、本当に望んでいることや奥にある不満などの 「顧客文脈」 を理解する [Customer Problem Fit]
- 見出した問題設定に対して解決する方法を探る [Problem Solution Fit]
- 解決策となる商品やサービスをつくる [Solution Product Fit]
- 商品を買って使ってもらうことでお客さんに価値をもたらす [Product Market Fit]
- 持続可能な仕組みとしてビジネスを拡大させ成長させる
「顧客設定」 と 「顧客理解」 があってこそ
新規事業を立ち上げるこの全体プロセスにおいて、ご紹介したデジテク・カードの位置づけは、3つ目と4つ目の 「見出した問題設定に対して解決する方法を探る」 や 「解決策となる商品やサービスをつくる」 ところで活用できます。
ステップの3つ目の前には、1つ目の 「ターゲット顧客の明確化」 、2つ目には 「顧客理解」 があるように、デジテク・カードの守備範囲の 「解決策の考案」 や 「商品化」 は、その前にある顧客定義と顧客理解が前提になります。顧客設定と顧客理解があってこそ活きるのがデジテク・カードなのです。
実装する技術や製品をつくるためには、前提となる 「誰の」 「どんな困りごとを解決し」 「それによる顧客価値は何か」 をしっかりと詰めておくことが大事です。
デジテク・カードに限らず道具は使いどころが大切です。早すぎても遅すぎてもいけません。
全体像を描いて、どのタイミングで活用することが最もその効果を発揮するのか。この見極めが大切です。
まとめ
今回はデジテク・カードを取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 新製品やサービスの開発では、顧客設定と顧客理解から、想定するお客さんの抱える問題や困りごとを明確にすることが重要
- お客さんが抱える具体的な問題やニーズを正確に捉え、解決策となる商品を提供することで製品やサービスはお客さんにとって価値あるものとなる
- 解決策や商品開発へのアイデア創出への方法やツールが活かせるのも、その前段階にある顧客定義、顧客理解、問題設定があってこそ。顧客とイシューからはじめよう
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