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マーケティングの失敗を生む 「3つの過剰」 とは?マーケティングとキャリアに共通する落とし穴を見極める方法

#マーケティング #ビジネスキャリア

マーケティングの戦略を立てる時、あなたは何を重視していますか?

成功事例、綿密な計画、それともデータ分析でしょうか。しかし、これらに頼りすぎると、思わぬ落とし穴に陥る可能性があります。

今回は、前半でマーケティングの失敗を未然に防ぐための重要な視点を取り上げ、後半はビジネスキャリアの構築への応用を考えます。

ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

マーケティングの実務で気をつけるべき 「3つの過剰」 


マーケティングの失敗を未然に防ぐための 「3つの過剰」 について、トライバルメディアハウスの池田紀行氏と電通の北村陽一郎氏が議論しています (参考記事) 。

3つの過剰については、北村さんの著書 「なぜ教科書通りのマーケティングはうまくいかないのか - 電通戦略プランナーが教える現場のプランニング論 (北村陽一郎) 」 という本でも取り上げられています。



3つの過剰とは、

  • 過剰な一般化
  • 過剰な設計
  • 過剰なデータ重視


順番に補足します。

過剰な一般化

一般的に正しいとされることが、いつも正しいとは限らないことを意識する必要があります。例として、ブランド認知が必ずしも販売に直結しないケースです。

マーケティングにおいて、他社の成功事例や専門書で紹介されている理論やフレームワークを参考にすることは有効な手です。しかし、これらを自社の状況や前提を十分に考慮せずに適用してしまうことは、「過剰な一般化」 の典型的な例です。

過剰な設計

マーケティング戦略を詰めすぎ、ガチガチに固めてしまうと、柔軟な対応を妨げる要因になります。

たとえば、ある食品メーカーが夏向けの新商品を企画し、1年前から詳細な販売計画を立てたとします。天候予測、競合他社の動向、過去の販売データなどをもとに、生産量や販売促進策を細かく計画しました。

しかし、発売直前に予期せぬヒット商品が他社から登場し、図らずも消費者の注目が競合商品に集まってしまいました。また、天候が例年と大きく異なり、当初の予測が外れてしまいました。

このような状況になると、あまりにも緻密に計画を立てすぎていると、変化に対応できず機会損失につながります。そうではなく、大まかな方向性を定めつつ、状況の変化に応じて柔軟に対応できる余地を残しておくことが重要です。

具体的には、生産量の一部を直前の需要予測にもとづいて調整をできるようにしたり、販促予算の一部を予備として確保しておいたりするなどの対策が考えられます。

過剰なデータ重視

データや調査結果に頼りすぎることで、見落としが生じることがあります。調査結果の質や、データの適用範囲を疑い、柔軟に考えることが求められます。

例えばの例で考えると、教育事業を展開するある企業が、新しいオンライン学習サービスを開発するにあたり、大規模な市場調査を行ったとします。調査結果では 「効率的な学習」 「短時間で成果が出る」 といったニーズが出ました。

事前のアンケート調査結果を踏まえ、この企業は短期集中型のプログラムを開発。「効率的に成果を出す」 ことをアピールポイントにしました。しかし、実際にサービスを開始してみると、予想以上に継続率が低く、期待したほどの成果が得られませんでした。

そこで詳しく調査してみると、表面的なアンケートでは現れなかった 「楽しく学びたい」 や 「仲間と一緒に成長したい」 といった潜在的なニーズが実は存在していたことがわかりました。これらの要素を無視して、効率性のみを追求したことが失敗の原因でした。

この例は、数値化されたデータだけでなく、質的な情報や潜在的なニーズに注目することの重要性を示しています。アンケート調査だけでなく、顧客インタビューやユーザー観察など、多角的なアプローチでユーザーの本質的なニーズを理解する必要があります。

ビジネスキャリアへの応用


マーケティングの失敗を未然に防ぐための 「3つの過剰」 は、マーケティングに限らないことです。

たとえばの例として、ビジネスキャリア構築に当てはめて考えてみましょう。

[過剰な一般化] 他人の成功事例に依存しすぎることで、自分の個性や強みを見失うリスク

キャリアを築く際に、他人の成功事例や一般的な成功パターンに過度に依存することがあります。たとえば、「有名企業での経験がなければ成功しない」 であったり、「MBA を取得しなければ一流のビジネスパーソンとして成功しない」 という考え方にとらわれすぎると、自分自身の強みや自分の経験を活かせなくなります。

他人の成功事例は参考にはなりますが、それが自分にも当てはまるとは限りません。

ある若手社員が、業界の著名な経営者の成功した話に影響を受け、その人物と同じキャリアパスを歩もうと決意したとします。この経営者は営業畑出身で、顧客との関係構築能力を武器に成功を収めました。

若手社員は自身の強みである分析力を活かすことなく、無理に営業職にこだわってしまうと、結果として、本来の自分の才能を発揮できず、キャリアの停滞を招いてしまうでしょう。

この例は、他人の成功事例を鵜呑みにせず、自分自身の強みや個性を理解し、それを活かすキャリア構築の重要性を示しています。ある人がその方法で成功したからといって、自分も同じ道を歩むべきだと決めつけるのは過剰な一般化です。

それよりも、自分の性格、スキル、興味を深く理解し、自分に最も適したキャリアパスを模索することが大切です。

[過剰な設計] キャリアプランを細かく作りすぎることで、偶然の機会や新しい挑戦を逃すリスク

キャリアプランを立てることは重要ですが、それを細部まで厳密に設計しすぎると、予期せぬ機会や偶然の出会いに気づかず、変化に対応できなくなる可能性があります。

たとえば、ある中堅社員が、10年後に経営幹部になるという目標を立て、そのために必要な経験や資格を細かく計画しました。毎年の昇進や異動、取得すべき資格などを詳細に設定し、それに沿って行動するようにしています。

しかし、会社での予期せぬ組織改編により、計画していた部署への異動が難しくなりました。また、業界のトレンドが変化し、自社の事業方針にも影響を与え、当初計画していた資格の重要性が相対的に低下しました。

しかし当初の計画にこだわるあまり、せっかくこれまで勉強をしたりがんばってきたからと、それまでと同じことを続けた結果、新たに生まれた部署への異動機会や、より需要の高まった新しいスキルの習得機会を逃してしまいました。

この例は、大まかな方向性を持ちつつも、環境の変化や新たな機会に柔軟に対応できる余地を残すことの重要性を示唆しています。

過剰な設計を作るよりも計画に柔軟性を持たせ、予期しない出来事や変化にも対応できる余裕を持つことが大事です。キャリアは変化するものであり、計画通りに進まないことのほうが多いでしょう。予想外の機会を活かせるように、計画の一部をあえて未確定にしておく、意図的に余白をつくっておくことが大事です。

[過剰なデータ重視] 過去のデータや他者の経験に囚われすぎることで、新しいアイデアやアプローチを見逃すリスク

キャリアを築く際、過去の傾向や他人の成功例、業界の一般的なデータに頼りすぎると、自分自身の経験や直感を軽視することにつながります。

たとえばの例を挙げると、新卒で就職活動中のある学生が、就職サイトの統計データや先輩たちの体験談を頼りに業界や就職先の会社の選択をしようとしています。データ上では、IT 業界の成長率が高く、給与水準も高いため、自身の適性や興味を深く考えることなく、IT 企業への就職を決めました。

しかし、実際に働き始めてみると、自身のコミュニケーション能力を活かせる機会が少なく、デスクワーク中心の仕事や、また、先輩社員はテレワークが多く、仕事環境に満足できませんでした。データでは測れない、職場の雰囲気や仕事の実態と自身の適性のミスマッチに気づくのが遅れてしまったのです。

この例は、データや二次情報は参考にしつつも、自身の直接的な経験 (インターンシップや企業訪問など) や内側の動機付けを重視することの大事さを物語っています。

過剰なデータ重視を避けるためには、データや経験を参考にしつつも、現状をよく観察し、変化に敏感になることが求められます。また、自分自身の経験や直感も大切にし、データだけではなく自分の判断を信じることも大事です。

3つの 「過剰」 を意識する

ビジネスキャリア構築において、「3つの過剰」 を意識することで、より柔軟で自分らしいキャリアパスを築くことができます。

他人の成功事例や一般的な働き方へのトレンド、よく言われるキャリアパスは参考にしつつも、あなたの強み、環境の変化、経験、直感を重視し、過度に他人やデータにとらわれない姿勢が重要です。

予期せぬセレンディピティ的な偶然の機会を活かすことで、あなた自身の潜在能力を発揮できるキャリアを構築することができます。

まとめ


今回は、マーケティングの失敗を未然に防ぐ 「3つの過剰」 を取り上げ、ビジネスキャリアへの示唆を考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 過剰な一般化: 一般的に正しいとされることが常に正しいとは限らない
  • 過剰な設計: 詳細すぎる計画が柔軟な対応を妨げ、偶然の機会を活かせない
  • 過剰なデータ重視: データに頼りすぎることによる本質やチャンスの見落とし


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。