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インテリジェンス・プロバイダーへの道。事実やデータから、インサイトとフォーサイトまで進化させる方法

#マーケティング #インテリジェンス #フォーサイト

データはあるのに、それを活かしきれていない。情報は集まるけれど、深い洞察には至らない。そんなジレンマを抱えていないでしょうか?

収集されたデータは、本当に 「知」 として活用されているでしょうか?

データを集めただけでは、単なる数値の羅列に過ぎません。そこに意味を見出し、未来を見据えた 「インテリジェンス」 に変えるためには、データの裏に潜むインサイトやフォーサイトが欠かせないのです。

データから情報、そしてインテリジェンスへ――。この思考プロセスの流れを身につければ、あなたのお仕事やマーケティングはきっと変わるはずです。データ活用の新たなステージへ、ぜひ一緒に踏み出しませんか?

データからインテリジェンスへ


個人的に 「インテリジェンス」 という言葉には思い入れがあります。

インテリジェンスへの思い入れ

新卒で入ったインテージというマーケティングリサーチの会社が、その当時のコーポレートコピーとして 「インテリジェンス・プロバイダー」 と自らの役割を打ち出していました。

インテリジェンス・プロバイダーとは、インテージの社風などのニュアンスも入れると 「知の提供」 という意味です。

データ, 情報, インテリジェンス

インテリジェンスの土台になるのは、データと情報です。これら3つの意味は違うものとして捉えることが重要です。

日本語では、英語の data や information 、そして intelligence も、いずれも 「情報」 と表現できてしまいます。日本語ではこれら3つを区別せずに、ひとくくりに同じものと見なせてしまうわけです。

しかし、3つの意味合いの解像度を上げて言語化をすると、次のように整理できます。

  • データ (Data) : 単に集められた数字で、収集されたローデータ
  • 情報 (Information) : Data が加工、集計され、数表やグラフになっている状態
  • インテリジェンス (Intelligence) : Information から得られた結論・考察・示唆


データを情報に、さらに情報を価値のあるインテリジェンスに変えるには何らかの情報加工が必要になります。端的に言えばそれは思考です。

順に 「Data → Information → Intelligence」 と、より高度な次元に変えていくために必要なるは考察することです。データと情報をインテリジェンスに高めるためには、経験にもとづく知識と思考の両方が大事になります。

データはファクトであり、常に過去に起こったものです。いくら大量のデータであっても、ビッグデータとは過去のことです。そのデータをインフォメーションにした段階でも、あくまでそれは過去を整理した状態にすぎません。

データを加工し、目的に応じて分析する行為とは、過去を把握するだけではなく、未来を予測し洞察をするところまで行くべきです。Data と information の段階では、過去の情報でしかありませんが、intelligence には未来の要素が入ります。

インテリジェンスの構造化


もう少し 「インテリジェンス」 について掘り下げていきましょう。

インテリジェンスの要件

マーケティングの文脈でのインテリジェンスの要件は、次の3つだと私は考えます。

  1. 市場で何が起きたのか、お客さんの変化、競合の動向などの起こっている事象が正確に把握できる
  2. なぜそれが起きたのかの要因の分析ができる
  3. ではどういう手を打てばよいかの示唆を与えてくれる


3つをシンプルに表現すれば、「何が起きたのか (事象) 」 、「なぜ起きたのか (原因) 」 、「どうすればいいか (対処) 」 を教えてくれ、少なくとも示唆を出しているのがインテリジェンスです。

インサイト

ところで、マーケティングにはインサイトという概念があります。

インサイトとは、もともとの意味は 「データや情報、観察を通じて得られる対象への深い理解や洞察のこと」 です。

英語では Insight で、In は内、sight は見るという意味です。インサイトのニュアンスは内側に向かって掘り下げていくイメージです。

マーケティング活動に当てはめれば、たとえばお客さんの行動、動機、感情の背後にある本当の心理や本音を明らかにしたものがインサイトです。お客さんがある状況の下で特定の商品を選んだり、ふと買おうと思ったり、見せられて思わずほしいと思ってポチッと注文する購買行動の背景には、インサイトが隠されています。

フォーサイト

インサイトに対となる概念に 「フォーサイト」 があります。

フォーサイトは先を見ることです。英語では Foresight です。

フォーサイトとインサイトとは矢印の向き先が異なります。インサイトは内側へ、フォーサイトは未来に目を向けます。

情報をインテリジェンスに高める方法


ここで、前半で見たインテリジェンスの話とつなげます。

インテリジェンスの要件

マーケティングの観点でのインテリジェンスの要件は、次の3つを教えてくれることでした。

  1. 何が起きたのか [事象]
  2. なぜ起きたのか [原因]
  3. どうすればいいか [対処]

インサイトからフォーサイトへ

インテリジェンスに 「インサイト」 と 「フォーサイト」 を結びつけると、インサイトは上記の2つ目の 「なげ起きたのか (原因) 」 に、フォーサイトは3つ目の 「ではどうすればいいのか (対処) 」 に当てはめることができます。

インサイトの前段階の 「事象」 も含めると、3つは整理をすると次のようになります。

✓ 事象 (ファクト) 
  • 一次情報やデータからの事実
  • ファクトを客観的に素直に捉える

✓ インサイト
  • ファクトからの解釈
  • 置かれている文脈や立場から判断を入れる
  • 表面的な事象だけではなく奥に掘り下げていく (例 :Why を繰り返す) 

✓ フォーサイト
  • 事実と解釈から 「要するにどういうことか (So what?) 」 に結論を出す
  • 自分たちは何をするかという具体的なアクションを含む
  • インサイト (Insight) は内側へだったが、Foresight は前や未来に目を向ける


インサイトとフォーサイトのイメージを図解すると、次の通りです。

出典: ITmedia

マップで ① から ④ までありますが、インサイトは ② の 「原因診断の分析」 のところです。内側を掘り下げていき原因を追求します。

フォーサイトは ③ と ④ です。インサイトで見出した解釈から、「次はこうなるはず」 と 「次はこうすべき」 までの示唆や提言まで踏み込みます。

インサイトとフォーサイトの認識ギャップ

マーケティングでのデータ分析でよく起こるのは、分析者と依頼者 (受け手) の認識のズレです。

事象、インサイト、フォーサイトにおいて、データ分析者は 「事象」 への正確さや、広さと深さを追求しがちです。事象を整理できれば、ともすると分析をやり切ったと終えてしまいます。

しかしこれは、いわば分析者の自己満足に浸ってしまっている状態です。というのは、分析者に依頼した、例えば事業部にいるブランドチームからのデータ分析への期待は 「インテリジェンス」 までだからです。

すなわち、事象を出すだけにとどまらず、なぜその事象が起こったのかの 「インサイト」 、そして、ではどうすればいいかの打ち手となる 「フォーサイト」 までを知りたいわけです。もちろん 100% 正しいという見解ではなく、仮説でもいいので 「次はこうすべき」 までへの期待です。

ここに分析者と依頼者の認識ギャップがあるわけです。

フォーサイトまで行く方法

では、どうすればフォーサイトまでたどり着くことができるのでしょうか?

そもそもの前提はファクトで終わらないことです。

ファクトからインサイトへは Why の 「なぜ」 で掘り下げます。内へ内へと深掘りしていくイメージです。

そしてインサイトからフォーサイトに行くには、発想の切り替えが必要になります。「So what」 と要するにどういうことかを考え抜きます。

ファクトには正解があり、インサイトにも正解に近いものがあるでしょう。しかしフォーサイトは未来のことなので誰にも答えは分かりません。

だからこそ意思を持って 「私はこう思う」 と未来のことに考察に自分なりの見解を持つことが大事なのです。

フォーサイトから真実の探求を

もうひとつ目指したいのは、フォーサイトを言っ放しで終わらないようにすることです。

未来への自分の仮説に対して後から検証をします。自分の見立てに対して何が合っていて、何が見誤っていたのかを振り返ります。この PDCA サイクルがフォーサイトを見る力を高めます。

インテリジェンスまで出すにあたって持ちたい姿勢は、「事実の探求」 だけではなく、「真実の探求」 なのです。

まとめ


今回は 「インテリジェンス」 と 「フォーサイト」 をキーワードに、考察をしました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • データ、情報、インテリジェンスの違いは、データは収集された数値、情報はデータを加工して理解可能にしたもの、インテリジェンスは情報から導かれる結論や洞察

  • インテリジェンスの要件は 「何が起きたのか (事象) 」 「なぜ起きたのか (インサイト) 」 「どうすれば良いのか (フォーサイト) 」 の3つが含まれる。この順に整理することで、事象の分析だけで終わらず、背後にある要因や具体的な対策を考えることができる

  • インサイトとはデータや情報を通じて得られる深い理解。マーケティングではお客さんの行動や心理の背景にある本音、態度変容や行動変容へのドライバーとなる心のスイッチボダンを明らかにする

  • フォーサイトは未来を見据えた洞察。未来の行動につながる具体的なアクションを導き出すためには、現状のデータからインサイトを見出し、その先に次に何が起こるか、どのように対応すべきかを考え抜くことによってフォーサイトに行き着く

  • ファクトで終わらず、「なぜ」 を掘り下げインサイトを発掘し、「要するに (So what) 」 でフォーサイトを考え抜く。捉えたフォーサイトは検証する。このプロセスを繰り返すことで 「インテリジェンス・プロバイダー」 となれる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。