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なりたい気分で選ぶチューニングドリンク BE 。お客さんの 「モード」 を捉え、ヒト・コト・ココロをつなぐマーケティング

#マーケティング #ターゲットモード #ヒト・コト・ココロ

お客さんが商品を選ぶとき、どんな気持ちで選んでいるかを考えたことはありますか?

どんな体験を得たいのか、どんな気分になりたいのかーー。商品選びの決め手になることがあります。ターゲット顧客を定めるだけでとどまらず、お客さんの行動の背後にある心理を深く掘り下げることで、より効果的な商品開発やマーケティングができるのです。

今回は、お客さんの心理的な 「モード」 に注目し、ヒト・コト・ココロをつなげる価値提案の秘訣を紐解きます。

なりたい気分で選ぶドリンク 「BE」 


出典: PR TIMES

アサヒ飲料が、Z 世代の若者と開発した微炭酸飲料 「BE」 を販売しました。コンセプトは気分で選ぶ 「チューニングドリンク」 です。

開発では 「Z 世代が自分らしくいられるドリンク開発」 をテーマに、大学生12名が参加するワークショップを2度にわたって開催。味やパッケージなどに関するディスカッションの中から、自由に自分を切り替え、時と場合に応じたベストな自分で、目の前のことを楽しめるドリンクとして新商品を完成させました (リリースより) 。

ちなみにブランド名の 「BE」 は、英語で状態を表す be 動詞からとっています。

味は三種類あり、陽気な気分になりたい時の 「BE SUNNY (ビーサニー) 」 、集中モードになりたい時の 「BE FOCUSED (ビーフォーカス) 」 、リラックスしたい時の 「BE RELAXED (ビーリラックス) 」 の3つのラインナップです。

アサヒ飲料は、チューニングドリンク 「BE」 によって、若者が自分らしく日常生活を楽しむための新しい選択肢を提供することを目指しています。

学べること


では BE の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

商品開発やマーケティングを成功させるには、まずターゲット顧客を決め、お客さんのことを理解することが重要です。アサヒ飲料が Z 世代と共同で開発した 「BE」 は、このプロセスを踏まえたお手本のような事例です。

お客さんの望みを理解する

商品開発の最初のステップとして、ターゲット顧客を明確に定め、行動と心理の両方から掘り下げることが大事です。

アサヒ飲料は 「BE」 を開発する際、Z 世代の 「自分を切り替える」 習慣やライフスタイルに着目しました。

ここで注目したいのは、Z 世代が飲料を消費するたけにとどまらず、飲むことによって得られる気分や状態の変化に価値を見出している点です。お客さんが求めているのは単に 「飲み物を飲む」 というニーズにとどまりません。その奥にある 「どんな体験を得たいのか」 や 「どのような気分になりたいのか」 という望みを理解し、それに応じた商品を提供することが大切なのです。

このように、属性情報からのデモグラフィックデータだけではなく、お客さんの潜在的なニーズや行動の背景にある心理を理解することがポイントです。ターゲット顧客がどんな状況で、どのような感情を抱き、どういう行動を取るのかを深掘りし、顧客文脈を理解したうえで商品をつくることが求められます。

なりたい気分を明確にする

アサヒ飲料は BE の開発において、お客さんが商品を使うとき、商品を使った結果どのような気持ちになりたいかに注目しました。

BE を飲むことで 「陽気な気分」 や 「集中モード」 、「リラックスしたい気分」 といった具体的な心理状態をターゲットにしています。商品の機能的な価値に加え、お客さんが感じたい 「なりたい気分」 に応える感情的価値を提案をしている点で特徴的です。

商品開発において、顧客ニーズだけでなく、その奥にある望み、つまり 「どんな気持ちになりたいか」 を描き出すことは効果的なアプローチになります。

商品やサービスの価値提案を最大限に引き出すためには、ターゲット顧客だけにとどまらず 「ターゲットモード」 にフォーカスを当てることが有効です。

日常のさまざまなシーンにおいて、お客さんの心理状態や体験したいことは変化します。

例えば、休日と平日では、リラックスしたい気分と集中したい気分がそれぞれあるように、求めるものが異なるのは明らかでしょう。

この 「モード」 への理解が、マーケティングや商品開発において大切です。BE は、若者のモードごとに飲料のラインナップを分けて提供することで、お客さんがどんなシチュエーションでも自分に最適な選択肢を持つことができるようにしています。

お客さんのモードに合わせた価値提案

お客さんがどんな気分で商品を選び、どのようにその商品を使いたいと考えているかを明確にすることで、お客さんの望みや顧客課題に応じた商品の便益を提案することができます。

BE では喉の渇きを癒すだけでなく、「陽気な気分になりたい」 「集中したい」 「リラックスしたい」 といった、若者の異なる気分やシーンに応じて選べる点が特徴として打ち出されています。

アサヒ飲料の BE は、若者のなりたい気分をターゲットモードとし、それぞれのモードに合わせた飲み物のバリエーションを複数用意し、なりたい気分を全面に押し出すチューニングドリンクをコンセプトにしました。

マーケティングにおいては、ターゲット顧客のニーズを理解し、そのニーズが生じているモード、つまりお客さんの心理的な状態やシチュエーションに合わせた価値提案を行うと効果的です。お客さんがその商品を使うことで、物理的な体験だけでなく、感情的な満足感も得られるような提案が可能になるのです。

ヒト、コト、ココロをつなげる

アサヒ飲料の BE の商品開発では、ドリンクの味や機能を追求するだけではなく、ターゲット顧客である Z 世代が 「なりたい気分」 を具体的に描き、その気分を実現するための体験を提供することを目指しました。

このアプローチは、「ヒト (注力顧客) 」 、「コト (ユーザー体験) 」 、「ココロ (お客さんのなりたい気分) 」 を一体化させるためのモデルとして示唆に富みます。

商品開発やマーケティングで、ヒト・コト・ココロの要素を定義し、3つを統合した価値提案をすることが、今回の事例からの学びのポイントです。

お客さんが商品を使用することで、どんな体験を得られるのか、そしてその体験がどんな感情や状態に結びつくのか。注力顧客の心理的モードに寄り添い、商品の顧客体験を通じて 「なりたい自分」 へ導くコンセプトやデザインにすることで、お客さんにとってそのシーンにおいて選びたくなる魅力的な存在になるのです。

まとめ


今回は、アサヒ飲料の "なりたい気分" にするチューニングドリンク 「BE」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 商品開発やマーケティングでは、まずターゲット顧客を定め、行動と心理の両方から掘り下げ、お客さんのことを深く理解することが重要

  • お客さんの状況で発生しているニーズや奥にある望みに応える商品を提供し、商品を使ったり保有することで、お客さんはどんな気持ちになるかまでを描く

  • お客さんのモードにおける目的や課題感に合わせた価値提案をするために、注力顧客だけでなく 「ターゲットモード」 まで定めるといい

  • 例えば休日と平日でお客さんの心理状態 (モード) は異なるため、お客さんのモードを理解しモードに合った提案する

  • ヒト (ターゲット顧客) 、コト (ユーザー体験) 、ココロ (お客さんのなりたい気分) をつなげ、明確にすることが大事


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。