#マーケティング #顧客インサイト #おもろい
なぜお客さんは、その商品を選ぶのでしょうか?
お客さんは 「便利だから」 とか 「安いから」 という理由で商品を選んでいるようで、実はその奥にはもっと深い感情や動機が隠れています。これを見逃してしまうと、ただの 「ありきたりな商品」 や 「心に響かないマーケティング」 になってしまいます。
お客さんの心を本当に動かすためには、その隠れた気持ち (顧客インサイト) を見つけることが重要です。
では、お客さんの心の奥底にある 「本当の気持ち」 を理解するには、どうすればよいのでしょうか?
今回は、マーケティングの重要な概念である 「顧客インサイト」 をテーマに、インサイトを活用するための具体的な方法を掘り下げます。
顧客インサイト
マーケティングで大事なのは、商品やサービスを選ぶ 「お客さんの心の中に隠れた真のニーズ」 を理解することです。
お客さんの理解においてポイントになるのは、「顧客インサイト」 という概念です。顧客インサイトとは具体的にどのようなものでしょうか?
顧客インサイトとは
結論から言うと、顧客インサイトとは 「人を動かす隠れた気持ち」 です。
お客さんの心理変容や行動変容を起こす、心のスイッチボタンとか心のツボのようなものです。顧客インサイトは、普段はお客さん本人は意識していないものの、心のホットボタンを押されると態度が変わり、行動を起こす奥にある心理のことです。
例えば、表面上は 「便利だから」 と商品を選んでいるように見えるお客さんでも、その背後には 「もっと家族と過ごす時間を増やしたい」 や 「家事で自分も家族に貢献したい」 「家事をもう少し手抜きしたい」 、他には 「生活をより充実したものにしたい」 といった、さらに深い望みが隠れています。
このような深層心理にある気持ちが顧客インサイトです。
「おもろい」 がお客さんの心を動かす
ここで重要なのは、「おもろい」 という要素が顧客インサイトに深く関わっている点です。
顧客インサイトの文脈での 「おもろい」 は愉快という意味よりも、売り手や買い手に新たな視点や気づきをもたらし、心が動かされる要因となることです。
お客さんがはっきりとは意識していなかった日常での不満や不便さを掘り下げ、お客さんにそうした 「不」 を提示し問題意識をまず持ってもらいます (緊張の発生) 。その後に解決策となる商品を訴求することによって、驚きや感動をともなって緊張が緩み (緩和の発生) 、その瞬間に 「おもろい」 という態度変容が起こります。
「おもろい」 の例
例えば、自宅での仕事が増えた状況において、消費者は長時間のデスクワークでストレスを感じつつも、どこか解決はあきらめていたとします。
これに対して体の疲れを軽減するための新しいデスクチェアを提案することによって、お客さんが 「これがあれば在宅勤務がもっと快適になる」 と感じるワクワクする瞬間を生み出すことができます。
このように、問題提起という 「緊張」 がまずあり、次に解決策と期待感からの 「緩和」 へとつなげることで、お客さんの心を動かすストーリーを描きます。これが、「おもろい」 を伴ったインサイトを活用する価値提供です。
表面的な欲求を超えたインサイトの理解の重要性
人の行動の裏には、表には出てこない感情や価値観が隠れています。見逃してしまうと、マーケティング活動はお客さんにとってありきたりなものになりがちです。
例えば、あるスポーツ用品メーカーが 「運動をサポートするウェア」 ではなく、「自己表現や達成感を感じられるウェア」 という訴求です。提案されたお客さんは商品訴求を通じて自分の価値観やスタイルを表現できると感じれば、「これは自分向けの商品」 と思ってもらえます。
一方で失敗例として、ある飲料メーカーが 「低カロリー」 を前面に押し出してプロモーションを行ったものの、消費者の顧客インサイトは捉えていなかったため、商品の魅力を感じてもらえず売上が想定よりも伸びなかったケースが考えられます。
このケースでは、お客さんが求めていたのはカロリーが低いことよりも、健康的でありながら、それでいて体も心も満足感を得られる飲み物という価値でした。こうした顧客インサイトを見落とし、心のスイッチボタンを押せなかったので、商品は商品棚の中で存在感を発揮できず埋没してしまったのです。
顧客インサイトを見つける方法
では、どうすれば 「おもろい」 となる顧客インサイトを発掘できるのでしょうか?
最後のパートではこの論点を掘り下げていきましょう。
顧客インサイトはマーケターが自ら発掘するもの
顧客インサイトを見出すためにお客さんが奥に持っている本音まで掘り下げるわけですが、本音は必ずしも言語化されていたり、お客さんから直接説明されるわけではありません。
顧客インサイトはお客さんに教えてもらうというよりも、マーケターが自ら発見するものなのです。
インサイトを掘り起こす方法
顧客インサイトを掘り起こすためには、お客さんと向き合い、お客さんが抱える困りごと、理想と現実でのジレンマを見つけることがポイントです。
インタビュー調査や観察によって、お客さんの行動や発言の背後にある感情、人間心理に注目し、お客さんの立場になって捉えることによって、奥にあるインサイトへの片鱗を見つけることができます。
お客さんの視点になり、お客さんが日常で感じていであろう課題や感情を深く理解することができます。
顧客インサイトを発掘するためには、お客さんの行動を注意深く観察し、日常生活の中で 「なぜその行動を取るのか?」 という問いを繰り返すと効果的です。例えば、ある子育て中の母親が特定のベビーフードを選ぶ理由を訊いても 「栄養があって赤ちゃんに良いから」 という表面的な理由しか言ってくれません。
しかし、母親が赤ちゃんへの食事を用意するシチュエーションを観察すると、その時だけは手間暇を惜しまず丁寧にご飯の準備をしていることがわかります。これは自分や年上の兄弟の食事の用意をする方法とは明らかに違う様子でした。
こうした光景を目の当たりにすることで、母親の気持ちの背後には 「小さい赤ちゃんの健康を守るのは自分にしかできない」 という責任感、「子育てや家事、忙しい中でも安心できる食事を与えたい」 といった感情が垣間見えるわけです。
本音を理解し 「おもろい」 につなげる
お客さんが自分でも気づいていない感情や価値観を探り出すと、顧客インサイトのヒントがきっと見つかります。
そのためには論理的な分析だけでなく、お客さんへの共感や直感的な理解が欠かせません。共感的なアプローチから、お客さんが普段感じている小さな不便や不満にも光を当て、解決するためのアイデアを探ります。
建前だけではなく本音に近い心理や感情を理解し、その気持ちに響く商品やサービスを提供することでお客さんからの 「おもろい」 を引き出すことができるでしょう。
まとめ
今回はマーケティングの重要概念である 「顧客インサイト」 を取り上げ、その重要性や発掘方法を考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 顧客インサイトとは、人を動かす隠れた気持ち。表面的なニーズの奥に潜む深い欲求や感情のこと。例えば 「便利だから」 という理由の背後には、「家族との時間を増やしたい」 「生活を充実させたい」 といった本質的な願望が隠れている
- 人の心を動かす要素に 「おもろい」 がある。おもろいは緊張の後に訪れる緩和によって起こる。顧客インサイトに 「おもろい」 があることで、潜在的な不満や課題を掘り起こし、その解決策を提示できれば感動などの強い気持ちが生まれる
- 顧客インサイトを見つけるためには、お客さんと向き合い、不満やジレンマを観察する。お客さんの置かれた状況や心理を本音まで共感し理解する姿勢が欠かせない
- お客さんのインサイトを発掘し、お客さんの心を動かし、行動につなげる。顧客インサイトを反映した商品開発やマーケティングによって、お客さんが本当に欲しいと思う価値をもたらす
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