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テレビ広告とリテールメディアの相乗効果。広告と店頭をつなげるメディアミックスでマーケティング効果を最大化させる方法

#マーケティング #メディアミックス #メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ

テレビ CM を流せば商品が売れるという時代は、もう終わりを迎えているのではないでしょうか?

広告予算の最適化 (削減) や消費者行動の多様化により、従来型のマス広告だけでは思うような効果が得られにくくなっています。では、限られた予算で最大のマーケティング効果を出すには、どうすればよいのでしょうか?

テレビ広告だけではなく、他のメディアを組み合わせる 「メディアミックス」 と、「メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティの両立」 が、有効な打ち手になります。

今回は、その具体的な方法をご紹介します。

テレビ広告とリテールメディアの相乗効果


テレビ広告は万能ではないということを理解することが重要です。

テレビ広告の不都合な真実

カタリナマーケティングジャパン (日本国内小売の約6割に相当する12兆円規模の実購買データを収集・分析をするマーケティング支援会社) は、実際のデータから、テレビ広告が購買者数の増加に直接寄与するには相当な GRP* が必要であることを示しました。
* GRP は Gross Rating Points の略。一定期間に放送されたテレビ広告の視聴率を合計した 「延べ視聴率」 を意味する指標

相当な GRP 量とは具体的には GRP が3000以上は必要とのことです。ちみなに 3000 GRP には数十億くらいのお金が必要です。

GRP が 3000 未満では、テレビ広告に予算を増やして広告を流しても、商品の購買者数は伸びないという、テレビ広告の不都合な真実です。

出典: MarkeZine

とはいえ、テレビ広告で 3000 GRP 以上を出稿できる企業は一部の大手のみに限られます。では、マーケティング予算が限られている場合、どうすればいいのでしょうか?

メディアミックスからの相乗効果

広告からの効果を最大化するには、テレビ広告への単体ではなく、他のメディアと組み合わせる戦略が効果的です。

同じくカタリナからのデータ検証によると、テレビ広告とリテールメディアを組み合わせることで、費用対効果の高いメディアミックスが実現できたとのことです。

出典: MarkeZine

リテールメディアという小売の店頭サイネージ、小売アプリや EC サイト等への広告枠を活用することにより、限られた予算の中で特定のターゲット層に絞ったアプローチができるようになります。

というのは、リテールメディアは、小売の持つ購買行動データにもとづいた高い LTV (顧客生涯価値) のターゲット層に効果的にリーチするからです。

テレビ広告の 「認知拡大効果」 とリテールメディアの 「購買促進効果」 を組み合わせることによって、それぞれのメディアの役割を分けたアプローチになります。テレビ広告は広い範囲で認知を促進し、リテールメディアは購買意欲が高くなる特定のシーンでの 「行動喚起」 に結びつける役割を果たします。テレビとリテールのメディアごとの得意分野を活かし、全体の効果を引き出せます。

テレビ広告とリテールメディアの2つを使うことで、出稿できるテレビ広告の GRP 量がたとえ限られている状況でも、実際の購買行動につながる質の高いターゲット層にリーチし、結果として限られた予算で最大の効果を引き出せるというメリットがあります。

ターゲティング精度が高いリテールメディアと広く届けられるテレビ広告を組み合わせメディアミックスの効果が生まれ、広告のコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスの両方を向上させることが可能なのです。

広告と店頭をつなぐマーケティング


ここまで見てきたテレビ広告とリテールメディアからのマーケティングコミュニケーションに加え、消費者が商品を手に取ったり、買う場所である 「店頭」 をつなげることにより、メディアミックスの効果はさらに高まります。

出典: MarkeZine

テレビからの認知、リテールメディアでの行動喚起、そして店頭での販促の強化によって、販売の機会を最大化させることができます。

では最後のパートでは、「メンタルアベイラビリティ」 と 「フィジカルアベイラビリティ」 という2つをキーワードにして、掘り下げていきましょう。

メンタルアベイラビリティとは

メンタルアベイラビリティは、お客さんの頭の中で自社ブランドが購入の選択肢として思い浮かびやすい状態を指します。

テレビ広告は、幅広い認知獲得、認知者に対し商品やブランドの印象を広める役割を果たします。一方のリテールメディアは購買行動を喚起する手段として機能します。小売企業の持つ購買データ (1st Partyデータ) を利用して、既に購買意欲が高い見込み客に対して商品をアピールすることで購入という行動喚起につなげるわけです。

テレビ広告でブランドや商品の名前を覚えてもらい、リテールメディアによって購買意欲が喚起されると、消費者の頭の中でブランドが確立され、選択肢のひとつとして意識されやすくなります。

フィジカルアベイラビリティとは

一方、フィジカルアベイラビリティとは、実際の購入場所で消費者がその商品を見つけやすい状態のことです。販売機会を高めるために欠かせない要素です。

たとえば、店頭での定番棚のフェイス数 (陳列面積) を確保し、エンド棚で販促活動を強化することによって、購買の機会を最大化できます。消費者が店頭でその商品に出会いやすくなるので、認知から実際の購入にスムーズに結びつけることが可能です。

両方が大事

広告によってメンタルアベイラビリティが高まっていても、お店で肝心の商品が見つからない、手に取られにくいという状況ではお客さんは購買には至りません。テレビやリテールメディアの効果を最大限に活かすには、お店での陳列場所や販促活動も整え、フィジカルアベイラビリティを確保することが重要です。

メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティの両方がそろってこそ、マーケティング施策が完成し、お客さんにとっても一貫性のあるブランド体験が生まれるのです。

まとめ


今回は、テレビ広告とリテールメディアのメディアミックス、そして店頭も加えたマーケティングについて考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • テレビ広告とリテールメディアを組み合わせるメディアミックスは、広告効果の最大化に寄与する。テレビ広告は短期間で広くリーチできる。リテールメディアは、店頭サイネージや EC サイト / 小売アプリを使い、限られた予算でターゲット層を絞った効果的なアプローチから購入意向を生み出す役割を担う

  • メンタルアベイラビリティとは、顧客文脈でお客さんの頭の中で覚えられ、商品やブランドが選択肢として意識されやすい状態を指す。テレビ広告による幅広い認知促進と、リテールメディアによる購買意欲喚起の組み合わせにより、ブランドの存在感を高める。1st Party データを活用した精緻なターゲティングも有効

  • フィジカルアベイラビリティは、お店での商品との出会いやすさ・探しやすさを意味する。いくら広告でブランド認知を高めても、店頭で商品が見つけにくければ購買には結びつかない。定番棚でのフェイス数確保やエンド展開など、店頭施策との連携が売上を左右する

  • このように、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティの両方を整えることが重要。テレビ広告でブランドの認知や記憶に定着させ、リテールメディアで行動喚起を促すことによって、自社商品がお客さんからの選択肢になることを目指す。そして、店頭での陳列や販促を強化し、実際に商品を手に取れる状況を確保することで販売機会を増やす


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。