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これが大手ではないプレイヤーの戦い方。"自宅の庭" で大きな果実を得る

#マーケティング #ニッチ戦略 #自分の庭

競争の激しい市場で、大手ブランドの圧倒的な存在感にどう立ち向かえばよいのでしょうか?

多大な広告費、広い販売チャネル、顧客の信頼を背景にしたトップブランドがいる中で、業界2位以下の企業が同じ土俵で戦うのは困難です。

しかし、それがそのまま敗北を意味するわけではありません。むしろ、大手企業が注力していない領域で独自のポジションを築くことが、生き残るためのカギを握ります。

大手が気づかない小さな市場で、静かに、しかし確実に成功を収める 「ニッチ戦略」 ーー。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

ニッチ戦略


競争が激しい市場において、大手企業と同じ土俵で戦うのは、多くの業界2位以下の企業にとって難しいテーマです。

特に、圧倒的な知名度やリソースを持つトップ企業がいる場合です。トップ企業は大量の広告投資、強力な販売チャネル、顧客との長期的な信頼関係などの強みを持っており、同じ戦い方をしていて勝機を見出すことは簡単ではないでしょう。

しかし、だからといって勝つことが不可能というわけではありません。むしろ、大手企業が注力していない領域や特定のニーズに特化することによって、独自のポジションを築く余地があるのです。

 「幹」 ではなく 「枝」 を狙う

独自のポジショニングを展開するにあたって、ニッチ戦略を実行するための考え方のひとつが、木の 「幹」 が取れないなら 「枝」 を取るというものです。

市場全体やカテゴリー全体での第一想起を目指すのではなく、特定のシチュエーションやニーズにおいて一番始めに想起されることを狙います。

例えば、「キャンプの時にこそ価値を発揮する道具」 や 「週末のリラックスしたい時間に飲む飲料」 といった具体的なシチュエーションを想定することで、消費者からは商品・サービスへの明確なイメージを持ってもらえることが期待できます。

もし 「ビール」 というカテゴリー全体で第一想起がとれるブランドとなることは難しくても、「BBQ の時に飲むビール」 といった特定のシチュエーションで第一想起されるポジションを目指すというわけです。ニッチな市場で確実に存在感を示せれば、そこで競争優位性を築くことができます。

この戦略を成功させるためには、大手企業との直接競争を避け、自社独自のポジションを静かに、かつ着実に育てていくことが肝になります。そこで重要になるのが 「自分の庭をつくる」 という考え方です。

 「自分の庭」 を育てる

ここで言う 「自分の庭」 とは、大手の圧倒的なリソースに対抗することなく、自社の強みを発揮しやすい領域を指します。

たとえ小さな庭であっても、その中で他社にはない花を咲かせ、果実を収穫できれば、十分な成果を得ることは可能です。しかし、一過性の庭、つまり短期的な成果だけを追求した、持続性のない取り組みを行うだけでは不十分です。その庭が持続可能であり、大手に奪われることなく、自社が長期的に収益を得られる場でなければ意味がありません。

そして持続可能な庭を作るためには、まず自社の強みを明確にし、その強みを活かした独自の価値を消費者や企業に提供し続けることが大事です。また、定期的な見直しや改善を行い、顧客ニーズの変化に対応しながら発展させていくことが求められるでしょう。

ポイントは、庭を作った後に他者になるべく気づかれないよう、時間をかけて育てることです。

急速に拡大を目指すと大手に注目され、庭そのものが破壊されるリスクが高まります。一方、じっくりと手入れを行い、小規模ながらも確実に果実を収穫できる環境を整えることによって、競争を回避しつつ自社のポジションを固めることができるのです。

 「自分の庭」 を守るポイント


それでは、自分の庭を守るためにどうすればいいかについて、ポイントに沿って順番に見ていきましょう。

市場規模を大きくしすぎない

狙う市場、別の表現をすれば狙う想起シチュエーションを広げすぎると、大手企業の目に留まり、大手との競争に巻き込まれる可能性が高まります。小規模なプレイヤーは、まず自社の強みや独自性が活かせるニッチなセグメントに特化し、そこで確実にポジションを築くといいでしょう。

例えば先ほどの例に挙げたビール業界で考えると、特定のライフスタイルや趣味に対応する商品を展開することが考えられます。例えば、アウトドア愛好家向けの軽量かつ持ち運びやすい缶ビールや、音楽フェス専用のリサイクル可能なパッケージを用いた商品などです。

あえて成長を抑えるように我慢をし、自社のリソースや事業能力に見合ったペースで進めることが、大手の参入を呼び込まないカギを握ります。

例えば、大規模な広告キャンペーンや全国展開を急ぐのではなく、地域限定のマーケティングや、特定のコミュニティに向けたプロモーションを行うというやり方です。

口コミや SNS を活用した緩やかな認知拡大を目指すことにより、無理のない成長を目指すといいでしょう。地元のクラフトビール愛好家の間で評判の一品として、知る人ぞ知るくらいの話題にとどめるわけです。

消費者との接点を増やしながらも、過度な商品の供給や需要の集中を避けることによって、大手の注目を浴びる危険性を下げます。

市場から得られる収益率を上げすぎない

収益が急増し利益率が高くなると、その市場が大手企業にとっても 「おいしい市場」 と魅力的に映り、大手の参入を誘発してしまいます。

収益を急激に増やさないために、製品ラインナップを限定的にして市場規模をコントロールするなどの戦略が有効です。

さらに、収益を急激に拡大させるような販路拡大や大量生産をあえて控え、生産量をコントロールすることも必要です。大量生産の得意な大手が魅力を感じるほどの市場規模を作り出さず、同時に価格競争を回避できます。

加えて、特定の顧客層に深く根付いたブランドとしての信頼を築くことも大切です。例えば、地域密着型のビールブランドであれば、地元のイベントやお祭りでの販売に注力し、コミュニティに溶け込むというふうにです。泥臭い取り組みは大手には真似できず、独自のビジネスモデルを形成する土台になります。

 「公園」 ではなく 「自分の庭」 に集中する

ここまで見てきた以上の2つのポイント、

  • 市場規模を大きくしすぎない
  • 市場から得られる収益率を上げすぎない

を意識することで、小規模プレイヤーは大手に注目されず、自社の庭をじっくりと育てることができます。

注意が必要なのは、「自分の庭」 を充実させることに飽き足らず、「公園」 という多くのプレイヤーがひしめく広い市場に出たくなることです。そうした衝動をぐっと抑えることが大事です。

公園という大手や多数の競合企業が集まる大きな市場への早すぎる参入は、小規模プレイヤーにとっては、自社の強みが埋もれてしまう可能性が高まります。市場の拡大を急ぎ、広い競争の場に焦りや慢心の気持ちから出てしまうと、とりわけ小さいプレイヤーにとっては得られる果実よりも失うもののほうが多くなります。

自社の庭を大切にし、その中で持続可能な形で果実をじっくりと育てていくことが弱者の生きる道です。ときにはあえて 「井の中の蛙」 にとどまることも戦略になるのです。

まとめ


今回はニッチ戦略をテーマに、大手ではないプレイヤーの生き残りの道を考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ ニッチ戦略の基本的な考え方
  • 大手企業との直接競争を避ける
  • 市場の 「幹」 ではなく 「枝」 を狙う
  • 特定のシチュエーションや特定のニーズに特化する

✓ 「自分の庭」 の育て方
  • 市場規模を大きくしすぎない
  • 市場から得られる収益率を上げすぎない

✓ 自分の庭で生き残る心構え
  • 「公園 (大きな市場) 」 ではなく 「自分の庭」 に集中する
  • 焦らず、じっくりと独自の強みを育てる
  • 時には 「井の中の蛙」 である戦略をとる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。