#マーケティング #顧客設定 #選ばれる理由
自社の商品やサービスは、お客さんから 「選ばれ続ける理由」 を持っているでしょうか?
競合が存在し、市場が変化する中、一度選ばれただけではこれらかも生き残り続けられるとは限りません。では、どうすれば 「選ばれ続ける商品」 になれるのでしょうか?
今回は、そんな課題へのヒントとなるかもしれない、あるアトツギ企業の事例をご紹介します。マーケティング活動を6つのステップで読み解き 「選ばれる理由」 を生み出す方法を紐解きます。
ロボット遠隔操作システム 「WELDEMOTO」
兵庫県西宮市の高丸工業が開発した 「WELDEMOTO (ウェルデモート) 」 は、ロボットの遠隔操作システムです。
ウェルデモートは 「どこでも、誰でも、簡単に」 、産業用ロボットを使えるようにすることを目指しています。
高丸工業が手掛ける案件の多くは、初めて取引する企業からの依頼とのことです (参考情報) 。
業種や規模もバラバラな中で、現場ごとの課題を見極め、ゼロから最適なシステムをつくりあげる。その過程で得た知見と対応力こそが、ウェルデモートがお客さんから選ばれ続ける理由です。
では、ウェルデモートの事例を、マーケティング活動の全体像に当てはめてみましょう。
マーケティング活動の全体像
マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。
マーケティングの活動は、大きく以下の6つのステップで捉えることができます。
- お客さんを決める
- そのお客さんのことを理解し、抱えている困りごとを見つける
- 困りごとを解決する商品を用意する (なければつくる)
- お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
- お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
- お客さんに他ではなく自社商品を選んでもらえる状態をつくる
WELDEMOTO に学ぶマーケティング全体像
高丸工業の事例を各ステップに当てはめて、具体的に見ていきましょう。
お客さんを決める
ビジネスの出発点は、「自分たちのお客さんは誰か」 を明確に定めることです。
高丸工業は、産業用ロボット導入支援において、もともと大手企業だけでなく中小企業に注力してきました。オーダーメイドの対応力が求められる難しい市場で独自のポジションを築いてきた背景があります。
そして、新規事業である 「WELDEMOTO」 では、ターゲットをさらに具体化し 「産業用ロボットの操作に困っている現場の人々」 としました。
特に、専門知識の習得に時間がかかりがちな若手従業員や未経験者、先代の技術を受け継ぎたい後継者です。こうした人たちを顧客の中心に据えたのです。
お客さんのことを理解し、抱えている困りごとを見つける
注力顧客を決めたら、次に重要なのは、その人々や企業の置かれた状況、その状況下で生じているニーズ、価値観、そして心の奥にある思いまで深く理解しようと努めることです。
高丸工業の高丸社長の顧客理解の原点は、ご自身の原体験にあります。
銀行員から家業に戻り、いざ現場で産業用ロボットに触れたとき、メーカーごとの操作性の違いや専門知識の必要性、扱いの難しさを痛感したそうです。これは当事者としてのリアルな実感でした。
顧客理解が深まるにつれて、お客さんが抱える具体的な困りごと (ペインポイント) が見えてきます。
高丸工業の事例では、現場の人々や中小企業の経営者が抱える様々な困りごとがわかりました。
- 操作の複雑性・専門知識の壁: メーカーごとに異なる操作方法、習得時間の長さ、技術を知らなければ現場で認めてもらえない状況。若手や未経験者が活躍しにくい環境
- 心理的な壁: ロボットに対する苦手意識、自分には扱えないのではないかという不安
- 技術継承の困難: 職人の技術が暗黙知化し、マニュアルも不十分。次世代への技術継承が進まない
- 経営課題: 人手不足、生産性の伸び悩み、若手人材の定着に起因する経営レベルでの問題
お客さんの困りごとは表面的なものだけにとどまらず、心理的な負担や組織全体の課題にまで及んでいました。
困りごとを解決する商品を用意する(なければつくる)
お客さんの困りごとを特定したら、次はそれを解決するための具体的な商品やサービスを用意します。場合によっては、全く新しいものを開発する必要があります。
高丸工業は、注力顧客の特定した困りごとを解決するために、ロボット遠隔操作システム 「WELDEMOTO」 を開発しました。システムの目玉機能は、どこでも・誰でも・簡単にロボットを操作できる点にあります。
直感的な操作性となるようパソコン画面上で CG (コンピューターグラフィックス) と実際の現場映像を重ね合わせ、マウス操作だけでロボットを動かせるようにしました。
加えて遠隔操作による安全性と柔軟性も実現しています。事務所や自宅など、現場から離れた場所からロボットを操作できるため、危険な作業環境のリスクを低減し、働き方の多様化にも貢献します。
お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
たとえどんなに良い商品があっても、お客さんが存在と魅力を知ってくれなければ意味がありません。
高丸工業は、展示会への出展、ウェブサイトや SNS での発信など、複数の顧客接点のチャネルでウェルデモートを広めています。
また、自社が手がけた導入事例をわかりやすく公開したり、実際にロボットを体験できる場を設け、「これならウチの工場でも使いこなせるかも」 と思ってもらいやすくしています。
実演デモや動画を使う現場でウェルデモートのシステムが動く様子を実際に見てもらうことで、操作の簡単さと汎用性を直感的に理解してもらえます。
また、高丸工業は導入事例インタビューからのユーザーの声を共有しました。同じような製造業の担当者が 「これで溶接作業が楽になった」 「新人でもあっという間に操作できる」 とリアルに語る事例は、検討や購入への後押しにつながります。
お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
商品を購入してもらうことは、商売でのゴールではなく、むしろスタートです。
お客さんが実際に商品を使い、期待していた価値を実感して初めて、その商品はお客さんにとって本当に意味のあるものとなります。
製造現場で導入され運用が始まると、ウェルデモートの真価が発揮されます。新人オペレーターでも溶接作業を習得しやすくなったり、熟練の職人もそれに興味を持ちロボットを使い始めたりなど、新しい機械や存在に抵抗感のあった人にも広がるからです。
また、遠隔操作が可能なので、現場作業者の安全性や負荷低減にも役立ちます。これまでロボット導入を諦めていた中小製造業が、負担の大きい作業を自動化できるというのはお客さんにとって価値があることです。こうした顧客価値を実感してこそ、ウェルデモートのシステムがあってよかったという満足感が生まれます。
お客さんに他ではなく自社商品を選んでもらえる状態をつくる
マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。
大切なのは、買ってもらうだけで終わらないことです。お客さんから選ばれるのを一度きりにせず、「選ばれ続けること」 が大事です。
高丸工業は 「産業用ロボットのシステムインテグレーター」 としての長年の実績があり、幅広い業種や設備に対応したノウハウを持っています。ロボットを売って終わりではなく、「どう使うか、どんな工程が改善されるか」 まで伴走してくれることで、企業側も 「高丸工業に頼めば間違いない」 と安心して継続的な依頼をしてくれるようになることでしょう。
そして、ロボットを導入した後もお客さんへのサポートを続け、顧客企業の状況変化に合わせてシステムを最適化していくような、長期的な支援体制が 「選ばれ続ける理由」 につながります。
まとめ
今回は、高丸工業のロボット遠隔操作システム 「WELDEMOTO (ウェルデモート) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントとして、マーケティングの全体像です。
- お客さんを決める
- そのお客さんのことを理解し、抱えている困りごとを見つける
- 困りごとを解決する商品を用意する (なければつくる)
- お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
- お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
- お客さんに他ではなく自社商品を選んでもらえる状態をつくる
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