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ローソンストア 100 。広告と店頭をシームレスにつなぐメディア戦略

#マーケティング #リテールメディア #フィジカルアベイラビリティとメンタルアベイラビリティ

テレビ CM や SNS 広告で話題になっても、売上が思うように伸びない…。

なぜ、消費者は買ってくれないのでしょうか。その原因は、広告で高めた商品・サービスへの興味を、お店で買う 「最後のひと押し」 につなげられていないからかもしれません。

その解決策のヒントが 「店舗は最強のメディア」 と捉えるローソンストア 100 にあります。

広告と店頭をシームレスにつなぎ、消費者を購買まで導く 「売れる仕組み」 とは何か。認知から購買まで一気通貫で消費者を導く仕組みづくりについて見ていきます。

ローソンストア 100 のメディア戦略



2025 年に誕生 20 周年を迎えたローソンストア 100 が、次の 20 年を見据えた戦略を描いています。

その構想の中心にあるのは、「店舗という最強メディアを活かす」 という思想です (参考情報) 。

インフレとライフスタイル多様化により小売業界の再定義が求められる中、ローソンストア 100 は店舗メディア化を軸とした戦略でブランドの成長を推進していく考えです。

ローソンストア 100 はコンビニというお店を最大のメディアと位置づけ、次の要素でコミュニケーションの質を向上させることを目指します。

  • 店頭幕: お店の入口で打ち出す内容を戦略的に設計
  • 陳列棚や商品パッケージ: 視覚的な訴求要素を強化
  • 店内 BGM: 五感に働きかける環境づくり
  • デジタル化: 関東・名古屋・関西の人口集中地域で、高頻度の来店顧客にデジタルとリアルを組み合わせたコミュニケーションを展開


これらの取り組みは 「企業がやりたいこと」 ではなく、「いかにお客さんに貢献できるか」 を突き詰めた結果です。

データを活用し顧客を深く理解しながら、リアルな店舗体験を通じてブランド価値を伝えていくというローソンストア 100 の挑戦です。

* * *

では、ローソンストア 100 の事例から学べることを掘り下げていきましょう。

広告と店頭をつなぐマーケティング


ローソンストア 100 の戦略は、広告で伝えたメッセージをいかにして店頭での購買行動に結びつけるかに示唆が得られます。

メディアミックスからの相乗効果

広告の効果を最大化するには、テレビ CM 単体に頼るのではなく、テレビ以外のメディアと組み合わせたメディアミックス戦略を採用することが有効です。

たとえばデジタル動画広告や SNS 広告、交通広告、OOH (屋外広告) など多様なチャネルでブランド露出を図りつつ、ローソンのようなリテールメディア (店頭サイネージやローソンアプリ内広告、EC サイトの広告枠など) を組み合わせることで、次のような相乗効果が得られます。

1 つ目は 「認知拡大と行動喚起の連動」 です。テレビやデジタル動画広告で幅広い層に 「まずは知ってもらう」 という段階をつくり、続いてローソン店舗内のデジタルサイネージやアプリ通知で 「今すぐ買いたい」 という購買意欲を喚起します。

2 つ目は、「費用対効果の最適化」 です。たとえテレビ CM の GRP (視聴率ポイント) を大きく取るのが難しい場合でも、店舗網を活用したリテールメディアで高い LTV (顧客生涯価値) が見込める顧客層にピンポイントでアプローチが可能です。限られた予算で最大の成果が期待できます。

3 つ目は 「顧客タッチポイントの拡充」 です。広告全般で興味を喚起し、店舗ではデジタルサイネージや POP 、試食・体験コーナーと連動したメニュー訴求を行うことで、オンラインからオフラインまで一貫したブランド体験を提供できます。

これにより、認知から検討、購買へとスムーズに消費者行動を誘導し、ROI (投資対効果) の向上を実現します。

シームレスにつなぐ

広告で得た 「行動意欲」 を店頭での 「購買行動」 に結びつけるには、店頭でのプロモーションと陳列施策が欠かせません。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

1 つ目は 「店頭サイネージとの連動」 です。店舗内のデジタルサイネージで広告素材と同一ビジュアルを流し、消費者に 「今見たあの広告の商品だ」 と気づいてもらいます。

2 つ目は 「POP や陳列棚の強化」 にあります。エンド棚 (棚端) や定番棚の中で広告対象商品を目立たせることで、店内導線上の出会い率を高めるというわけです。

3 つ目は 「ローソンアプリクーポンの利用の促進」 です。広告で訴求したキャンペーンコードやクーポンをアプリで配布し、来店後すぐに割引特典を受け取れる仕組みを用意します。

こうした施策により、広告で高まった興味をそのまま店頭での購買行動に結びつけ、販売機会を逃さず最大化することができるでしょう。

メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ


では最後のパートでは、「メンタルアベイラビリティ」 と 「フィジカルアベイラビリティ」 という 2 つをキーワードにして、掘り下げていきましょう。

メンタルアベイラビリティとは

メンタルアベイラビリティは、「消費者の頭の中で自社商品やブランドが思い浮かびやすい状態」 を指します。メンタルアベイラビリティを高める上で、メディアミックスは有効です。

テレビ CM やデジタル動画広告は、広範囲の認知獲得に優れています。一方でローソンストア 100 のリテールメディアでは、1st Party データ (購買履歴や来店頻度などの自社保有データ) にもとづき、すでに購買意向が高い顧客層へダイレクトにアプローチできます。

まずはテレビやオンラインからの広告で存在を伝え、商品名やパッケージを印象づけ、選択肢として記憶に残してもらう。続いてリテールメディアを使い、店頭サイネージやアプリ通知で 「今日はこの商品がお得です」 と具体的に呼びかけ、購買検討を促す。

こうした段階的なアプローチにより、「あの商品はローソンで買えるんだ」 という認知と購買意欲が連動し、消費者の頭の中での選択の優先順位を引き上げるのです。

フィジカルアベイラビリティとは

フィジカルアベイラビリティは、 「消費者が実際の店舗でスムーズに商品を見つけられる状態」 を指します。いかにメンタル面で認知されても、店頭で商品が埋もれていたり陳列量が不足していれば購買にはつながりません。

フィジカルアベイラビリティを高めるには、次のような施策が重要です。

1 つ目は 「フェイス数の確保」 です。定番棚における陳列面積 (フェイス数) を十分に設けることが大事です。

2 つ目は 「エンド展開の活用」 です。通路の端や棚の端など、目立つ場所での販促展開を強化します。

3 つ目の要素は 「試食や体験施策」 です。たとえば試供品配布や試飲コーナーを設け、実際に手に取ってもらう機会を増やすというふうにです。

これらの施策によって、消費者が 「買おう」 と思った瞬間に商品を手に取れるようにし、購買へのハードルを下げることが大事です。

両方が大事

メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティは車の両輪のような関係です。どちらか一方だけでは成果が頭打ちになります。

  • 認知は得られても、店頭で見つからない ⇒ 購買機会損失
  • 店頭で目立っても、認知が低い ⇒ 興味を持ってもらえない


したがって、広告全般による幅広い認知施策とローソンストア 100 のリテールメディアでのターゲットへのピンポイント訴求、さらに店頭での陳列強化を一貫して設計し、両面から消費者の購買行動をサポートすることが、本当の意味での 「売れる仕組み」 をつくる秘訣です。

まとめ


今回は、ローソンストア 100 の戦略を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • メディアミックスの相乗効果: テレビ CM やデジタル広告などと、店頭サイネージ・アプリ広告を組み合わせ、認知から購買まで一気通貫でつなぐ

  • 広告と店頭の連携: 店頭サイネージ、POP 、EC サイト広告、アプリクーポンなど多様なタッチポイントを用意し、行動喚起から購買機会までを統合的に設計する

  • メンタルアベイラビリティ: 広範囲への認知獲得と、購買意欲が高い層への精緻な広告配信で頭の中に刻まれるブランド体験を実現する

  • フィジカルアベイラビリティ: 棚割り最適化、エンド展開、試食・体験施策などで店頭での商品との出会う率を高める

  • 両方が大事: 認知と購買導線を同時に強化することで、限られた広告予算の中でも最大限の販促効果を引き出すマーケティングを展開する


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。