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AI ネイティブ 「α 世代」 の登場で広告はどう変わる? Z 世代との比較で見る未来のマーケティング

#マーケティング #α世代 #価値実現

Z 世代の次の消費者層である α 世代 (アルファ世代: 2010年以降に生まれた世代) が、いよいよ本格的に消費の舞台に登場します。

α 世代の価値観や情報に触れるときの行動は、Z 世代とは異なり、マーケティングのあり方も変える可能性を秘めています。

今回は、α 世代の情報収集行動を紐解き、そこから見えてくる未来のマーケティングへのヒントを探ります。

α 世代と Z 世代の情報収集行動の違い


産業能率大学の小々馬 (こごま) 敦教授の研究グループ (インテージホールディングス Z 世代 ・ α 世代研究分科会) は、α 世代が自分専用のスマートフォンや SNS アカウントを持つことにより、情報収集の仕方にどのような変化が見られるかを調査しました (参考: 書籍 「新消費をつくる α 世代 - 答えありきで考える 「メタ認知力」 (小々馬敦) 」 ) 。


α 世代を対象とする定量定性調査を継続し、α 世代が中高校生に成長するタイミングとなった2025年2月から3月に、前回の調査対象者を追跡するインタビュー調査を実施しました。


当時は親のスマートフォンと SNS アカウントを使っていた子どもたちが、中学生になって自分専用のスマホを持つとどう変化するのか、α 世代が成長すると、Z 世代に近づいていくのかという調査課題を検証するための調査でした。

スマホ・SNS への依存度の低さ

Z 世代にとってスマートフォンと SNS は特別な存在でした。 しかし α 世代にとっては、それらは数ある選択肢のひとつにすぎませんでした。

α 世代の調査対象者は情報端末はスマホ一択ではありません。通信ゲーム機、タブレット、パソコン、スマートスピーカーなど、様々なデバイスを目的に応じて使い分けていました。

TikTok の縦型動画を大画面で見ながら、ゲーム機で遊ぶといったマルチデバイス・マルチタスクが日常だったのです。

SNS も 「見る専」 が基本で、積極的な投稿はしません。 女子はコスメや服、男子はゲームやスポーツなど、自分の興味ジャンルの情報が流れてくるアプリという認識でした。

AI との高い親和性

α 世代が最も信頼する情報源は 「自分向けに深くパーソナライズ化された情報」 でした。

学習アプリや玩具で AI を日常的に使用し、使うほどに AI が自分を理解してくれる体験を重ねていました。家族や友人と同じように、AI も信頼できる 「話し相手」 として認識されているわけです。

タイパ志向の先鋭化

Z 世代は UGC (ユーザー生成コンテンツ) を時間をかけて比較検討する傾向が見られました。一方で α 世代は 「答えをすぐに知りたい」 という欲求が顕著でした。

AI との対話のように、質問をして訊けばすぐにサマリーが示されることを当然と考える α 世代。 わざわざ自分で検索して調べるという手間をかけたがりません。

* * *

では、α 世代と Z 世代の比較調査から学べることを掘り下げていきましょう。

α 世代の情報収集行動の変化を、「新しい事象」 「新しい問題」 「解決策」 「価値実現」 というフレームに当てはめていくと、これからのマーケティングへの示唆が得られます。

[新しい事象] AI の日常化とマルチデバイス環境


ビジネス環境や生活者の行動は、テクノロジーの進化と共に常に変化しています。

α 世代 (2010年以降生まれ) を取り巻く環境は、Z 世代とも異なる 「新しい事象」 が起きています。

スマホ・ネイティブから AI ネイティブへ

α 世代は、物心ついた時からスマートフォンや SNS が当たり前に存在する 「スマホネイティブ」 です。

そんな α 世代で特筆すべきは、AI との親和性の高さです。

学校の宿題や日々の疑問解決に AI 搭載の学習アプリやデバイスを日常的に利用しています。AI が自分のことを学習し、最適化された答えを提示してくれる体験が根付いています。音声での AI との対話が自然な行為となっています。

マルチデバイス・マルチタスクの常態化

α 世代の情報接触はスマートフォンに限定されません。

通信ゲーム機、タブレット、PC、スマートスピーカーといった多様なデバイスを、目的や気分に応じて自在に使い分けます。YouTube や TikTok の縦型動画を見ながら、同時にマルチタスクで通信ゲーム機でゲームをするといった使い方が普通です。

この結果、Z 世代と比較してスマホや SNS への依存度が低くなるという傾向が見られます。 スマホも SNS も選択肢のひとつという位置づけです。

[新しい問題] 情報過多による 「信頼できる情報」 への渇望とタイパ志向の先鋭化


このような 「新しい事象」 は、これまでにはなかった 「新しい問題」 を α 世代にもたらします。 同時に、企業側にとっても新たな対処すべき課題が生まれています。

SNS のパーソナライズへの不信感

第一に、SNS でパーソナライズされて表示される情報への不信感です。

α 世代は、YouTube や Instagram で自分向けに表示される情報でさえ、コンテンツの中身までは自分向けになっていないと感じているようです。

YouTube のホーム画面や Instagram の発見タブに現れる情報はパーソナライズ化されているといっても、コンテンツの中身までは自分向けになっていないので信用できるかどうか以前の問題で、役に立つ情報ではない、と。

同じようなジャンルの情報が繰り返し流れてくるため、記憶にも残らず、役に立つ情報ではないという認識でした。これが α 世代の SNS に対する評価です。

タイパ志向の先鋭化と UGC の限界

第二に、情報収集における 「タイパ (タイムパフォーマンス) 志向」 の先鋭化です。

Z 世代は、UGC (ユーザー生成コンテンツ) を時間をかけて比較検討します。 自分と背格好、骨格、肌の色、髪形などが似ている投稿者を探して 「その人が着ていて似合っているから自分にも似合いそう」 と確信を得ます。

しかし α 世代にとって、そのプロセスは手間です。UGC でさえ 「本当に自分に合っているか判断するには足りない」 と感じています。

α 世代は AI との対話のように、質問から直ちにサマリー (要約) がすみやかに示されることを求めます。 Google の検索画面の上部に表示される AI の要約 (AI Overviews) のような機能は、α 世代のニーズに合致します。

企業側の解決すべき問題は、従来のマーケティング手法の無効化

企業側から見れば問題が生じます。

従来の SNS マーケティングやインフルエンサー施策では、α 世代の心に響かず、情報が届きにくくなるでしょう。

企業が多大なコストをかけて展開している広告も、狙われている感が強いとして忌避されかねません。

また、AI エージェントが情報の取捨選択を行うようになると、企業からの広告やプロモーション情報の多くが消費者に届く前にスクリーニングされ排除されてしまう可能性が高まります。

[新しい解決策] AI エージェント時代を見据えた 「オーセンティシティー」 の再構築


こうした 「新しい問題」 に対して、「新しい解決策」 を提示することが求められます。

結論から先に言えば、AI を前提としたマーケティングコミュニケーションの再設計です。

AI エージェントの台頭

今後、ユーザーに代わって情報を自ら取捨選択する 「AI エージェント」 が普及すると予測されます。

AI エージェントは、ユーザーに届ける情報を判断するようになると考えられます。 企業やブランドの過去の発言が信用できるか、どのようなテーマやジャンルで成果を出してきたかを AI が判定するわけです。

4層構造の情報地図

企業が取るべき解決策は、情報の信頼性を高めるための 「情報地図」 を戦略的にデザインすることです。

具体的には、次の4つの情報を有効に連携させるというアプローチです。

  • 純粋広告: 企業の真摯な思いやビジョンを伝える広告とする。マスメディアを介しての純粋広告は、企業の思いを伝えるソーシャルなメッセージとして認識されることを目指す

  • オウンドメディア: 企業自らが発信するエビデンス情報。製品やサービスの詳細、企業理念、社会的取り組みなどを体系的に整理し、一貫性のある情報として発信する

  • メディア掲載: 第三者による 「お墨付き」 の情報。客観的な評価として AI エージェントに認識されやすくなる

  • UGC: ユーザーからの 「口コミ」 などのエンゲージメント情報。実際の顧客満足度を示す役割を持たせる


これらを連携させ、ブランドの 「オーセンティシティー (本物であること) 」 を AI エージェントが判定しやすいように情報を再構築することが、新しい解決策となります。

[価値実現] AI との共生時代における新しい顧客関係の構築


新しい解決策が実行されることによって、α 世代と企業の双方に 「新しい価値」 が生まれます。社会全体にもポジティブな変化がもたらされます。

α 世代にとっての価値

信頼する AI (情報エージェント) を通じて、消費者は膨大な情報の中から自分に本当に合っていて、かつ信頼できる情報だけを効率的に受け取れるようになるでしょう。

AI との対話から、即座に自分に最適化されたサマリー (的確に要約された情報) を入手できます。 買いものでは、買って失敗したという失敗の可能性を減らし、不要な情報に惑わされるストレスもなく、より良い選択ができます。

消費者は、自分が本当に必要とする適切にパーソナライズされた情報を得られることで、生活の質が向上します。これが消費者にとっての価値です。

企業にとっての価値

オーセンティシティーを軸にした情報発信を行うことで、AI エージェントのスクリーニングを通過でき、消費者に自社のメッセージを届けることができます。

企業の姿勢や価値観を伝えることによって、企業やブランドへの共感と長期的な信頼関係を築く機会をつくれます。

純粋広告の概念を取り入れ、企業の思いや社会的メッセージが共感を生めば、広告への寛容性が向上します。 AI 時代においても顧客との有効なコミュニケーションチャネルを維持できます。

社会全体への価値

ここまで見てきた世界観が実現されれば、情報の氾濫から抜け出し、価値ある情報が適切な人に届き、信頼性の高い情報流通システムがもたらされることでしょう。

広告の社会認識をより良好なものに再形成し、企業と消費者の新しい信頼関係を構築することにつながります。 AI エージェントを介した情報流通が一般化することで、企業は真摯な姿勢での情報発信を求められ、結果として社会全体の情報の質が向上していきます。

このように、α 世代の登場という 「新しい事象」 から生まれた 「新しい問題」 に対し、AI 時代を見据えた 「新しい解決策」 を講じることにより、企業と顧客の間にこれまでとは異なる 「新しい価値」 を創出することができるのです。

まとめ


今回は、α 世代の情報収集の特徴を調査した事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ビジネス環境やテクノロジー、生活者の価値観の変化など、常に周囲で起きている 「新しい事象」 にアンテナを張り、その変化が何をもたらすかを捉える

  • 新しい事象は、これまで存在しなかった消費者や顧客の不便や不満、あるいは社会との "歪み" といった 「新しい問題」 を生み出す。この問題を脅威とせず、新たなビジネスチャンスとして捉える視点が重要

  • 新しい問題に対し、自社の技術やノウハウといった独自の強み (ケイパビリティ) をかけ合わせることで、他社にはない 「新しい解決策」 を構築する

  • 解決策が、消費者や顧客の問題解決、生活の質の向上にどう貢献するのかを、具体的な便益として新しい価値を定義する。世の中に顧客価値に提案することにより、選ばれる理由が生まれる

  • この 「新しい事象 → 新しい問題 → 新しい解決策 → 新しい価値」 という一連のフレームで考えることによって、固定観念から脱却し、持続的な成長機会をつくり出せる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。