経済新聞紙 Economist が、電子版と紙の価格調査を実施しました。
Economist の価格調査
調査対象者は MIT’s Sloan School of Management の生徒100人です。100人の生徒に2つの購読プランからどちらを選ぶかを調査しました。プランは 「電子版 59ドル」 または 「紙+電子版 125ドル」 です (価格は1ヶ月の購読料) 。
結果は、7割弱が 「電子版 59ドル」 を選びました。
- 電子版 59ドル :68人
- 紙+電子版 125ドル :32人
結果は妥当でしょう。紙と電子版の両方は、電子版だけの2倍以上の価格になります。紙版には、電子版以上の値段は払えないと判断されました。
調査では、購読プランをもう1つ増やして聞いています。紙だけで125ドルを加えました。紙版で125ドルは、紙+電子版と同じ価格設定です。
先ほどとは別の100人の生徒に、プラン3つを提示し選んでもらった結果は次のとおりです。8割以上が 「紙+電子版 125ドル」 を選びました。
- 電子版 59ドル :16人
- 紙 125ドル :0人
- 紙+電子版 125ドル :84人
紙だけで125ドルを選んだ生徒は1人もいませんでした。
価格の比較が変われば結果が変わる
興味深いのは、1つ目の調査と2つ目の調査結果の違いです。
1つ目の調査では 「電子版 59ドル」 「紙+電子版 125ドル」 の2つのプランを提示しました。結果は7割弱が電子版を選びました。
2つ目の調査では、「紙 125 ドル」 が選択肢にあったので、「紙+電子版 125ドル」 を8割が選びました。多くの生徒が 「紙+電子版 125ドル」 を選んだのは、紙だけで125ドルであり、同じ購読料で電子版も追加される紙と電子版の125ドルが得に見えたからでしょう。
プランが2つしか提示されなかった1つ目の調査では、「電子版 59ドル vs 紙+電子版 125ドル」 と紙を追加したプランが電子版の2倍以上であることが、判断基準でした。
一方、プランが3つになり、「紙 125ドル vs 紙+電子版 125ドル」 を見て、紙+電子版が魅力に映りました。
価格設定の妙
Economist の実際のプランは、2つ目の調査に使われた、電子版 59ドル、紙 125ドル、紙+電子版 125ドルです。3つ目の 「紙+電子版」 を選んでもらいたい Economist の意図が見えます。
仮定の話ですが、もし紙だけの購読料が電子版よりもやや高い69ドルあたりであれば、どういう調査結果になったでしょうか。
- 電子版 :59ドル
- 紙 :69ドル
- 紙+電子版 :125ドル
回答者数はバラけるでしょう。
Economist でのプランごとの新聞購読料の調査結果は示唆に富みます。お客さんに選んでもらいたい価格プランを選ばれやすくするため、そのプランを魅力的に見せる比較対照のプランをいかに設定するか、ということです。
Economist の今回の例は、紙だけで125ドルのプランを見せ、同じ価格で電子版もついてくる 「紙+電子版 125ドル」 が魅力的に見えました。
もし、紙だけのプランを訴求していくのであれば、紙+電子版の価格をあえて高くし、紙だけのプランを半分未満にすれば、紙だけは魅力のある価格設定です。1つ目の調査のような設定です。
適用できる例は、レストランで A コース: 3000円、B コース: 5000円だとします。2つだと、A コースを選ぶ人が多いでしょう。
コースをもう1つ追加し、A コース: 3000円、B コース: 5000円、C コース: 7000円とすれば、A と B だけの時よりも、(C よりも安い) B コースを注文する人が増えるでしょう。