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なぜ、あの会社は儲かるのか? - ビジネスモデル編 という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- この本の特徴
- 持続的なビジネスモデルが成立する条件
- 興味深かった戦略の事例
この本の特徴
本書では、様々な企業のビジネスモデルが紹介されています。不動産、バス、素材、地銀、建機、旅館、タイヤなどの業界です。多くは成熟業界と見られた分野ですが、従来のその業界にはなかったビジネスモデルを持ち込み成功しました。
本書が他の類似本と違うのは、日本企業の事例が多く扱われていること、そして、単にビジネスモデルを紹介しているだけで終わっていないことです。
後者について、この本でのビジネスモデルを学ぶ考え方は、異業種にあるモデルから着眼点を得ることです。具体的に、異業種のどこを見ればよいか、どうすれば移植できるか、その際の課題は何かが書かれています。
紹介されている各ビジネスモデルについて、以下の3つのステップで説明されています。
- ビジネスモデルの事例紹介
- 仕組みの一般化
- 他業界にある同様のモデル紹介
流れとして、具体例 → 抽象化 → (他の) 具体例、という横展開が興味深く読めます。
同じビジネスモデルでも違う業界に適用されているので、そのモデルの本質的な仕組みを理解できます。書かれている内容が刺激になり、そのビジネスモデルを自分の業界や、自分の仕事に活かせないかと考えてみると発想が広がるでしょう。
持続的なビジネスモデルが成立する条件
本書からの学びは、持続的なビジネスモデルが成り立つ条件でした。整理すると、以下の2つです。
- エンドユーザーや顧客に既存のモデルよりも、トータルで見てより高い価値または低いコストが提供される
- ビジネスモデルの関係プレイヤー (ステークホルダー) 全員に Win-Win が成立する
2つ目について、紹介されているケースでは、自社の一社だけの利益最大化を目指していないことが見て取れます。エンド顧客、サプライチェーンも含めて、時には従来の競合とも Win-Win の関係を構築した事例が載っています。
興味深かった戦略の事例
ここからは、本書で興味深いと思った戦略の事例をご紹介します。
マイナスの差別化
本書でマイケル・ポーターの次の言葉が紹介されています。
「戦略においては、何をやろうという選択と同じくらい、何をしないかという選択が重要である」
サービス分野でのビジネスモデルとして紹介されていた 「マイナスの差別化」 が興味深く読めました。サービスの中から、必要なものだけにあえて絞ることです。
マイナスの差別化の例
- 喫煙席をなくした 「スターバックス」
- シャンプー、洗髪後のひげ剃り、予約システムをなくした 「QB ハウス」
- 女性だけで、シャワーや鏡、プールがない 「カーブス」 (フィットネス)
- 法人融資をせず、銀行窓口がない 「セブン銀行」
- 保険の特約をなくした 「ライフネット生命」
ターゲット顧客を絞り、顧客が望むものだけを提供し (不要なものはやらない) 、既存の大手企業が追随できないようなビジネスモデルの仕組みです。
マイナスの差別化が興味深いのは、特にその業界のリーダー企業が真似をしにくいことです。リーダー企業はやりたくてもできません。単に同じことをやろうとすると、経営資源がかえって足かせになり、非効率な運用になってしまうからです。
顧客から見えるところを 「差別化」 、
見えないところを 「効率化」
顧客から見える部分は高級化するなどの差別化をし、見えない部分は省略や効率化をする事例も興味深かったです。
具体的なケースとして、ビジネス客に安い価格でぐっすり眠れる価値を提供する スーパーホテル が取り上げられています。
快適な眠りのために、ベッドサイズを大きく、室音も図書館並の静かさを実現しています。加湿付き空気清浄機、低反発マットレスが設置され、照明も工夫が施されています。パジャマやスリッパの素材は血流をよくするものです。枕も自分に合うものが選べます。
こうした眠りへのこだわりを提供する一方、ローコスト運営をしています。
チェックインは機械で行ない、フロントのコストを下げました。眠りに関係のない宴会場や会議室は廃止、部屋のカギは暗証番号です。
先ほどのマイナスの差別化と通じるものがあり、「自分たちは誰に何を提供するのか」 「そのために何をやらないか」 に一貫性があります。
最後に
本書では、製造業とサービス業について、日本の事例を中心に紹介されています。難しく複雑なビジネスモデルはなく、具体的にわかりやすく書かれています。