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歯はみがいてはいけない という本をご紹介します。
本書の内容
この本には、歯みがきの常識を覆えす内容が書かれています。以下は内容紹介からの引用です。
「食後すぐの歯みがきは、世界で韓国と日本だけ」 「世界で一番口臭がひどい!?日本人男女」 「3列歯ブラシの効果はわずか 30% 」 「スウェーデンは80歳で歯が21本以上で寝たきりなし。日本は80歳で10本未満、寝たきり100万人以上」 ……
世界に30年遅れた日本の歯の常識をアップデートし、口腔細菌の増殖を抑え、全身病を回避する 「世界標準の予防歯科」 の知恵と具体的ケア法を教示する、すべての日本人必読の1冊。
日本の歯科常識は間違いだらけ!60万人の口を診た名医の結論!
「歯はみがいてはいけない」 の真意
本書のタイトルである 「歯はみがいてはいけない」 は、著者の言いたいことを正しく表現していません。むしろ、読み手に間違った理解をさせてしまいます。
著者が言いたいことは次の2つです。
- 食後すぐに歯をみがいてはいけない
- 歯磨き粉は使わないほうが良い
なぜ食後すぐの歯みがきはダメなのか
食後すぐの歯の表面は柔らかく、傷つきやすい状態だそうです。
柔らかい状態になる理由は、飲食中に口の中は酸性に傾き、歯の表面のカルシウムやリンが唾液中に溶け出すためです。カルシウムやリンが溶け出したことにより、歯は一時的に通常よりも少し柔らかくなるとのことです。
食後すぐに歯を磨いてはいけない理由は、歯が柔らかい状態で歯みがきをすると、歯ブラシで歯を傷つけてしまうからです。研磨剤や発泡剤の入った歯磨き粉を使えば、歯へのダメージはさらに大きくなります。
食後に歯を磨くタイミングは、歯が元の硬さに戻ってからです。元の硬さに戻してくれるのは、唾液です (再石灰化) 。時間は30-60分かかるそうです。
歯が元の硬さに戻る前に歯みがきをしてしまうと、歯を傷つけるだけではなく、歯みがきと口のゆすぎで唾液を吐き出してしまいます。むしろ食後すぐにやるべきは、唾液で歯を元の硬さに戻すことです。
正しい歯みがき
著者は、歯を磨くことはサブで、メインはプラークコントロールと言います。歯みがきはサブの意味は、歯みがきで食べ残しを取ることは主な目的ではない、ということです。主目的は、
口内にできるプラーク (歯垢) を除去することです。
本書で提示される正しい歯みがきは、次の4つです。4つとも、歯みがきの常識を覆してくれました。
- みがく目的:歯垢を取り除くことが主目的 (歯垢は細菌のかたまり)
- みがく場所:歯と歯の間が最重要
- みがく道具:デンタルフロスか歯間ブラシをメインに、音波歯ブラシを併用
- みがく時間:就寝前と起床直後が大事。食後は30分はあける
4つに共通するのは、歯垢の除外です。
歯垢は、歯と歯の間や歯と歯の付け根にたまりやすいです。歯垢を取り除くためにデンタルフロスか歯間ブラシを使います。磨くタイミングで就寝前と起床直後を重視するのは、歯垢ができやすいのは夜寝ている時だからです。
本書には、著者が普段やっているプラーク (歯垢) コントロールが紹介されています。
- 起床後:デンタルフロス + 音波歯ブラシ (3分)
- 朝食後:デンタルフロス + 舌回し (1分)
- 昼食後:デンタルフロス + 舌回し (1分)
- 寝る前:デンタルフロス + 音波歯ブラシ (3分)
- 3~4ヶ月に一度、歯科衛生士による口腔ケアを受ける
- 補足
- 歯の着色が気になった時は、歯磨剤を使う
- 歯ぐきの調子が良くない時は、歯磨剤を使う
著者のプラークコントロールについて、以下で2つ補足です。
推奨は音波歯ブラシ
1つ目は音波歯ブラシです。著者が推奨するのは、100円ショップで売られているような安価な電動歯ブラシではなく、音波歯ブラシです。
振動数は、一般的な電動歯ブラシが1分間に5000回程度などに比べ、音波歯ブラシは1分間に3~4万回ほど振動するそうです。音波歯ブラシの特徴は、毛先が届かないところまで清掃できることです。
私は本書を読み、本書で推奨されていた1つのフィリップスのソニッケアーを使い始めました。
著者が勧める舌回し
2つ目の補足は、舌回しについてです。舌回しとは、著者が勧める舌の運動です。目的は唾液を出すことです。
舌回しのやり方は次の通りです。
- 口を閉じ、舌を歯の前に出す (歯と唇の間に)
- 歯の外側をなぞるように、舌を時計回りに移動させる。10周する
- 反時計まわりに10周する
舌回しは唾液を分泌させます。食前に舌回しをすると唾液で食べたものの消化を促し、食べ過ぎの予防にもなるとのことです。
なぜ歯垢の除去が重要なのか
本書で強調されているのは、プラークコントロールです。口内の歯垢が増えることを防ぎ、歯垢を取り除くためです。
なぜ歯垢の除去が重要なのでしょうか。
理由は、口の清掃状態が悪いと全身病を引き起こすからです。口の中の問題ではなく、命の危険につながるからです。
この本には、口内の不衛生は心筋梗塞や糖尿病といった成人病の原因になると書かれています。
歯周病の元になるのは歯垢です。まとめると、歯垢が歯周病を発生させ、歯周病が成人病を引き起こします。
白米が健康寿命を縮める - 最新の医学研究でわかった口内細菌の恐怖 という別の本には、歯周病や虫歯が身体の病気を引き起こすと説明されています。具体的には、心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化、がん、認知症、リウマチ、様々な慢性病を起こします。
身体の病気を起こすのは、口内の細菌が血管を通して全身に行き渡からです。具体的には次のような発生プロセスです。
- 虫歯菌や歯周病菌が、歯や歯の根元の毛細血管内に入る。細菌が全身の血管に行き渡る (歯原性菌血症)
- 血管内の細菌数が増えすぎると、血管内で慢性的な炎症が起こる。炎症により血管が劣化する (動脈硬化が起こる)
- 劣化した血管が原因で様々な疾患を起こす
- がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、肝臓腫瘍、脾臓腫瘍
- 慢性関節リウマチ、脳脊髄膜炎、心内膜炎、血行性肺炎、急性虫垂炎、など
参考として、書評エントリーはこちらです。
参考:書評: 白米が健康寿命を縮める - 最新の医学研究でわかった口内細菌の恐怖 (花田信弘)
他に気をつけること
本書を読んで、他にも学びがありました。中には今までの常識や普段やっていたことが、必ずしも歯や口内にとってよくないこともありました。
これまで書いた以外に、気をつけることは次の通りです。
- 歯磨き粉は研磨剤の入っていないものが望ましい。なぜなら研磨剤により歯が傷つくため。特にツブツブの入った歯磨き粉は使ってはいけない。歯にダメージを与えるだけではなく、ツブツブは歯垢の巣になる
- 歯ブラシは細菌の温床。1ヶ月に一度は新しく交換すること
- 口呼吸で口内の細菌が繁殖する。細菌を抑える唾液が乾燥するため。口呼吸で細菌が直接体内に入ってしまうため
- 起床後すぐに水を飲むことは良くない。寝ている間に口内に細菌が増殖しており (便にすると10gほどの量) 、起きてすぐに水を飲むと胃に細菌が入ってしまう
- かかりつけの歯科衛生士を持つ。定期的に歯科衛生士に歯を診てもらう。口内を清潔に保つだけではなく、全身を守ることにつながる
最後に
本書からの最大の驚きは、日本では一般的に行われている歯磨き習慣が、必ずしも歯にとって良くないことです。
親や学校、国からの教育では 「食べたらすぐに磨きなさい」 と言われてきました。しかし、著者は逆効果だと強調します。食後すぐの歯みがきは、唾液の効能を活かせないばかりか、一時的に軟らかくなった歯を傷つけてしまう行為なのです。
歯や歯みがきの今までの常識が覆され、読む価値のある本でした。
最後に、関連エントリーはこちらです。
書評: 白米が健康寿命を縮める - 最新の医学研究でわかった口内細菌の恐怖 (花田信弘)