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メタ思考トレーニング - 発想力が飛躍的にアップする34問 という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容
- メタ思考とは何か、2つのアプローチ
- アナロジー思考。できるためのコツ
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
メタ思考とは、「物事を一つ上の視点から考える」 こと。その重要性はしばしば語られるが、実践するのは容易ではない。
そこで本書では、メタ思考を実践するための二つの具体的な思考法 ( 「Why 型思考」 と 「アナロジー思考」 ) を紹介するとともに、各々のトレーニング問題を多数用意。
「タクシー」 と 「土産物屋」 の共通点は? 「年賀状がたくさん来る人」 はどんな人? … 問題を解くうちに思考回路が変わり、考える力が飛躍的にアップする本!
今回は、メタ思考とは何か、メタ思考のアプローチの1つである 「アナロジー思考」 について書いています。
メタ思考とは何か
メタ思考とは、自分が見ているよりも一つ上のレベルで考えることです。視座を上げて新たな気づきを得る思考法です。
本書の表現で印象的だったのは、自分が 「とらわれの身」 になっていることに気づくことでした。知らず知らずのうちに自分の考え方やモノの見方は偏っています。自らが思考に関して壁の中に閉じ込められた状態からいかに抜け出すかです。
メタ思考はどう役に立つのか
本書で説明される、メタ思考がなぜ重要なのか、どのように役に立つのかは、以下の3つです。
- 成長するための 「気づき」 を得られる
- 思い込みや思考の癖、視野の狭さから脱することができる
- (気づきや思考の広がりによって) 創造的な発想ができる
メタ思考の2つのアプローチ
本書では、メタ思考の実践を、大きく2つの方法から解説しています。
- Why 型思考
- アナロジー思考
Why 型思考は、「なぜ」 と自問することによって、問題そのものを問い直す思考法です。メタ思考の文脈で言えば、「なぜ」 によって上位目的を考えることです。
過去に why と問いかければ、結果に対する 「原因」 を考えることになります。未来に why を問えば、「目的」 を見い出すことができます。
本書では、5W1H の1つである 「why」 について詳しく解説され、あらためて why の使い方や効用を考えさせられます。
アナロジー思考
メタ思考の2つのアプローチのうち、興味深かったのが2つめの 「アナロジー思考」 でした。
アナロジーとは、類推です。類似のものから推論することです。アナロジー思考とは、具体的なものを一度抽象化し再度具体化することによって、抽象度の高い真似をする思考方法です。
「アナロジー」 と 「パクり」 の違いを比較すれば、アナロジー思考の本質が理解できます。
パクりとは、物事の抽象化をせずに、そのまま具体のレベルで真似をすることです。一方、アナロジーは、真似をする前に一度抽象化をします。抽象化した考え方や概念・パターン・仕組みを、別のことに適用し具体化させます。
パクりとアナロジーの違いは、以下です。
- パクり:具体 → 新しい具体
- アナロジー:具体 → 抽象 → 新しい具体
アナロジー思考ができるためのコツ
では、どうすればアナロジー思考ができるようになるのでしょうか。
本書に書かれてたアナロジー思考を実践するためのヒントを2つご紹介します。
- 抽象化したことを頭の引き出しにしまっておく
- 「共通点は何か」 を考える
1. 抽象化したことを頭の引き出しにしまっておく
アナロジー思考は、具体的な事象を抽象化し、別の具体的なことに当てはめることです。
流れは 「具体 → 抽象 → 具体」 ですが、このプロセスは必ずしも連続的に一気に起こるわけではありません。本書に書かれていたことでなるほどと思ったのは、抽象化したことを頭の中に一度ストックしておくことです。
目の前に起こった具体的な事象を観察し、要するに何かという本質を理解し抽象化したことを 「頭の中の引き出し」 にしまっておくのです。
そして次に、新しい具体的な事象を目にした時に、抽象化して引き出しにしまったパターンを取り出して当てはめます。あるいは、パターンから別の具体的なことに結び付けます。
ここにアナロジー思考が有用である可能性と、同時に難しさがあります。
2. 「共通点は何か」 を考える
アナロジー思考は、2つの異なる具体に共通する本質を見い出すことでもあります。抽象化したことが共通点としてつながります。
アナロジー思考を鍛えるために必要な意識は、普段から異なるものごとに対して 「共通点は何か」 を考えることです。
本書では事例として、様々な一見すると全くことなる二つのことについて、共通点は何かを読者に問いかけます。似ているものではなく、離れているものに共通点が見い出され、読み進めながら自分の頭への刺激を得ることができます。
抽象化のレベル
興味深いと思ったのは、アナロジー思考における 「抽象化のレベル」 でした。
具体を抽象化するときに、適切な抽象レベルがあり、抽象化しすぎてもよくないという指摘です。抽象化しすぎると、当たり前すぎることになってしまい、示唆に乏しくなるからです。
本書に書かれていた例である、子どものころに自転車で転んでしまった話を例にご説明します。まずは、次の事象と抽象をご覧ください。
- 具体:自転車のブレーキの使い方がうまくできずし、転んでしまった
- 抽象:道具の使い方を誤ると失敗する
得られた抽象内容では、一般的すぎて教訓にしにくいです。
一方、次のような具体と抽象はどうでしょうか。
- 具体:自転車で止まろうとする時に、前輪のブレーキで急に止まろうとしたが、前のめりになりそうになりバランスを崩して転んでしまった
- 抽象:効果が大きいことをいきなり行なうと、効きすぎて思わぬ結果 (時には逆効果) を起こしてしまう。まずは徐々に効果が出ること (例: 後輪ブレーキ) から始め、効果が見られたらより効くこと (例: 前輪ブレーキ) をする
このような抽象化をすれば、別の具体に活かせます。
例えばクレーム顧客対応です。怒り心頭のお客にいきなり金銭補償を言うのではなく、まずは話や言い分やを聞き相手に共感する、お金や補償の話は後で、という順番です。
抽象化レベルを、「道具の使い方は誤ると失敗する」 は、一般的すぎました。しかし、「 (前輪ブレーキという) 劇的な対応は、使うタイミングが大事である」 であれば、他の具体に応用ができます。
この話で思ったのは、適切な抽象化レベルをするためには、目の前に起こった具体的な事象を細かいところまで観察できているかです。
観察して得られた情報が甘いと、抽象化も一般的すぎるレベルにしかできません。一方、詳細まで観察しておけば、抽象化レベルに幅をもたせることが可能です。
最後に
メタ思考の本質だと思うのは、いかに 「自分の気づいていないことに、自分で気づけるか」 です。
本書には、ソクラテスの 「無知の知」 に対して、「無知の無知」 を指摘しています。無知の知では、自分が知らないことに気づくことの重要性を説きます。一方の無知の無知は、「自分が知らないことに気づいてさえいない」 という状態で、知らないことへの無自覚です。
「無知の無知」 に気づき、「無知の知」 にするきっかけになるのが、メタ思考です。