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問題解決に効く 「行為のデザイン」 思考法 という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容。行為のデザインとは
- ミニマイズと美しさ
- 思ったこと (2つ)
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
パナソニック、大阪王将、アップリカ、日本能率協会、オムロンなどでも導入され、話題に。問題解決の手法としての 「行為のデザイン」 の発想は、時代をつくるビジネスマンに "気づき" の視点を授ける。
「行為のデザイン」 とは、プロダクトやサービスを利用する人の行動に着目し、改善点を見つけてよりよく、美しく、使いやすくする手法のこと。
また、デザイナーだけでなく、商品開発に関わる開発者、技術職、営業職それぞれから専門知識やアイデアを発掘、共有することで開発スピードを上げ、画期的なサービスやプロダクトを生み出すことができる。
行為のデザインとは
この本のタイトルにもなっている 「行為のデザイン」 とは、人の行動に着目し、行動からプロダクトの改善点を見つけ、より良く、美しくしていく手法です。
プロダクトを利用する 「行為」 を美しくする
行為のデザインは、人間の行動にデザインを沿わせる考え方です。
もし利用中に操作する動きが意図せず止まってしまえば、プロダクトに 「バグ」 があると見なします。使い方がわからない人間側が悪いのではなく、バグを持っているプロダクトのデザインを見直すことを考えます。
目指すのは、プロダクトの説明書を読まなくても、必要な使い方の手順は 「体験から理解させていく」 というプロダクト設計です。行為がスムーズに美しく振る舞われるために、プロダクトはどうあるべきかを考えます。
行為のデザインでは、プロダクトの利用シーンを大事にします。使っていない時の造形美、店頭に並んだ時の見栄えよりも、実際に使われる時にいかに使用のバグ (意図せず行為が止まる状態) が起こらないようにデザインをします。実用的なデザインの考え方です。
背景にある考え方
行為のデザインの背景にある考え方は、プロダクトがより長く存在するためにはどうあるべきかというものです。
利用行為が自然なほどプロダクトが人や環境に馴染めば、長く使い続けられます。それだけプロダクトは存在できます。
プロダクトは使われてこそ価値が生まれます。利用においてバグが発生しないか、プラダクトを使う行為が美しくあるかを突き詰め、デザインに反映させます。
行為のデザインの方法
行為のデザインで注目するのは、人の行動です。目的を達成するためにプロダクトをどう使うかです。さらに行為だけではなく、プロダクトを取り巻く環境にも目を向けます。
デザインの改善点のヒントは、バグです。
バグとは、プロダクトを使い始める時、使っている最中に、本人の意図とは別に利用が止まってしまうことです。使い方がわからなく、戸惑ったり混乱することによって手が止まる状態です。
著者が推奨する方法は、実際の行動観察よりも 「想像体験」 です。
人の想像の力で利用者になりきり、使う環境や利用シーンをできるだけ具体的に想像します。想像から、どこにバグが発生しそうか、どうすれば自然に使えて美しい行為になるかを考えます。
想像体験で印象的だったことは、誰でも適切な場や想像するための参考になる情報やヒントが与えられれば、人の想像の力が蘇ると書かれていたことです。想像体験のポイントは、その人になりきること、おもしろがる姿勢です。
ミニマイズと美しさ
本書で興味深いと思ったのは、ミニマイズと美しさへの考え方です。
2つのミニマイズ
デザインの 「ミニマイズ」 は、2つに分けられます。
- 形のミニマイズ:造形をシンプルにする。プロダクトを何に使うのか、どう使うかを、言葉や説明なしに見ただけで迷わせないようにする
- 意味のミニマイズ:コンセプトを明確にする。見た目の要素以外の深い情報が人に伝わるようにする
3つの美しさ
デザインに求められるのは美しさです。美しさの要素は3つに分解できます。
- 造形の美しさ:デザインコンセプトを細部までどこまで落とし込まれているかが、造形の美しさを決める。後から付け足してしまうと、造形の美しさは損なわれる
- 行為の美しさ:プロダクトを利用する人の行為がいかに美しいか。迷うことなく流れるように、デザインが手順を導いている状態
- 考え方の美しさ:単に企業の利益のために存在するのではなく、多くの人が利益を享受できるデザインかどうか。社会的インパクトを与えるか。デザインにプロダクトのビジョンや理念が込められているか
思ったこと
ここからは思ったことについてです。2つあります。
- いかに 「ユーザー体験」 を良くするか
- 人間中心のデザイン
いかに 「ユーザー体験」 を良くするか
行為の美しさは、プロダクトのユーザー体験をより良くするかにつながります。
利用中に人の動きが止まってしまうバグが発生するということは、利用者からするとユーザー体験が損なわれている状態です。使いたいのに、どうすればいいかわからない、わざわざ説明書を見たり、使い方自体を調べることは利用者に面倒をかけています。
美しい行為になるようなデザイン設計であれば、ユーザー体験がより良くなります。
人間中心のデザイン
行為は、プロダクトの利用シーンにおいて発生します。
プロダクトが価値を生み出すのは、使われる時です。利用する人は、何かをしたいという目的を達成するためにプロダクトを使います。この意味で、プロダクトを使う (行為が発生する) のは、目的を果たすための 「手段」 です。
行為のデザインとは、手段というユーザー体験をいかにより良くするかです。意図せず行為が止まってしまうバグを起こさずに、プロダクトのビジョンや思想、美しい行為になるように細部までデザインに落とし込むことです。
一言で表現すれば、人間中心のデザインです。
順番は 「使う人の目的 → 行為 → デザイン」 です。目的という why から始めます。
- 目的: why
- 行為: what
- デザイン: how
行為が美しくなくバグがあるようなプロダクトは、使う人が間違っているのではありません。そうさせたデザインに原因があると見なします。
最後に
今回ご紹介した 問題解決に効く 「行為のデザイン」 思考法 という本には、行為のデザインとは何かの説明が、具体的な身近なプロダクトを例にわかりやすく書かれています。
自分のまわりでも、使い方がわからず止まってしまうようなバグが起こるプロダクトがあることに気づきます。
そのプロダクトのデザインはどこに問題があるのか、美しい行為を導いてくれるプロダクトはどのようなデザインなのかを、あらためて考えさせてくれる本です。