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世界で一番やさしい会議の教科書 実践編 という本をご紹介します。
エントリー内容です。
- 本書の内容。ファシリテーションとは
- ファシリテーションの基本動作 (8つ)
- 思ったこと (3つ)
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
2万部を超えたビジネス小説仕立ての前著 「世界で一番やさしい会議の教科書」 の著者が、ビジネスの現場で生まれたノウハウを体系化した。
グダグダ会議を撲滅するための 「会議の8つの基本動作」 は必読だ。難しいものは1つもない。やるか、やらないか。それだけの違いで、あなたの会社の会議は劇的に変わる。
さらに普段の会議でありがちな 「よくある困り事」 を18ケース取り上げて、解決策を示している。
誰も発言しない、議論が盛り上がらない、一部の人しか会議に参加しない、など、誰もが経験したことがある困り事ばかり。8つの基本動作に加えて、個別の困り事に合わせた対策は目からウロコが落ちるものばかり。
ファシリテーションとは
本書では、ファシリテーションとは「ゴールを達成するために、人々の能力を最大限に引き出す技術」とします。
ファシリテーションにより、会議の参加者同士が自然に意見を発言し対話が促され、合意形成できる環境がつくられます。
本書で紹介されているファシリテーションのやり方の一つ一つは、決して難しくはありません。特殊な才能は不要です。方法を知っているか、やるべきことをきっちりやっているかどうかです。
ファシリテーションない会議
ファシリテーションが必要な理由は、もしファシリテートがされない会議を考えると、なぜ求められるのかがわかります。
ファシリテーションがない会議では、参加者は以下についてわからない状態になります。
参加者が混乱すること (ファシリテーションがない会議で)
- なぜこの会議をしているのか
- どんな発言をすればいいのか
- いつ終わるのか。終わるために何をどこまで決めればいいのか
適切なファシリテーションがあれば、参加者は自ら発言をするなど自律的に行動し、対話と合意形成ができます。
ファシリテーションの基本動作 (8つ)
本書では、ファシリテーションの8つの基本動作が紹介されています。
ファシリテーションの基本動作
- 会議前に準備をする
- 開始前に会議の終了条件を確認する
- 開始前に時間配分を確認する
- 会議中に議論を可視化する
- 会議中に全員から主張を引き出す
- 会議中に対話を促し合意形成をする
- 会議終了時に決まったこととやるべきことを確認する
- 会議後に振り返りをする
以下、それぞれについての補足です。
[基本動作 1] 会議前に準備をする
会議は 「準備が8割」 です。
会議の準備は4つの P で整理をします。
会議の準備
- Purpose: 目的とゴール (目的の達成地点) を設定する。何のための会議かを明確にする
- People: 参加者を決める。参加してほしい人は誰か、誰と議論すべきか
- Process: 議題は何か、時間配分はどれくらいか。各議題に対してシナリオをつくる (どう進めたらスムーズに議論できるか)
- Property: 必要な資料、会議室、ホワイトボードやパソコン画面の投影器材があるかなど、議論をするために必要なものは何か
注意点は、事前に準備した内容に沿って行なうことにこだわりすぎないことです。
大事なのは、議題ごとのシナリオを事前に考えるプロセスです。会議のシミュレーションがあらかじめできていれば、会議中の不測の事態にも対応しやすくなります。
[基本動作 2] 開始前に会議の終了条件を確認する
会議の始め方は重要です。最初に認識を揃えられれば、参加者も同じ方向のゴールに向かって進むことができます。
会議の本題に入る前に「終了条件」を確認します。
終了条件の確認
- 終了条件とは、例えば「xxx を議論する」であればその結果にどういう状態になっていればよいかのゴールイメージ。終了したことが判断しやすい表現にする
- 会議によって何を変化させたいか。大きく3つあり、人の状態、物理的なこと、意思や合意
- 終了条件が明確になっていなければ、議題に入らないくらいに考えたほうがよい
[基本動作 3] 開始前に時間配分を確認する
時間配分の確認
- 終了条件とともに、会議の時間配分を確認する
- どの議題にどれくらい時間をかけて議論するか
[基本動作 4] 会議中に議論を可視化する
ホワイトボードなど、参加者が見えるところに以下を書いて可視化します。
可視化すること
- 問い (論点) と仮説や答え
- 出たアイデアや問題点など、整理されていなくても書いておく
- 決まったこと、やるべきこと
ポイントだと思ったのは、うまく書こうと思わなくてよいことです。話すスピードが早くて書くのが追いつかなければ待ってもらう、難しくて言語化・図解ができなければ堂々と確認することです。
書けない原因は、ファシリテーターである自分よりも、発言者の発言が整理されていないこともあります。うまく書けないことを伝え確認することによって、内容が整理されます。
[基本動作 5] 会議中に全員から主張を引き出す
わざわざ集まり会議を行なう価値は、より多くのアイデアや意見を出し合い、最終的にはもともとの A 案か B 案かではなく、より良い第三の C 案を見つけることです。
以下は、参加者から発言を引き出すためにできることです。
参加者からの発言を引き出すために
- ファシリテーターは、発言者が「意見を言ってよかった」「次も発言しよう」と思えるような対応をする
- 具体的には、発言に対して肯定し、共感、感謝をする。相手が言ったことをオウム返しをする
- 深掘りする3つの質問は、① 具体的には?、② なぜそう思うのですか?、③ 他にはありますか?
[基本動作 6] 会議中に対話を促し合意形成をする
発言が引き出せたら、次は参加者同士の対話を促します。単に参加者の発言が増えるだけでは十分ではありません。意見と意見がぶつかり合い、相乗効果を生み出すためです。
以下は、対話を促すためにできることです。
対話を促すために
- やることはシンプルで、質問や意見が出たら他の人に振る。これができれば議論が活性化された状態になる
- 必ずしもファシリテーターが全てに答える必要はない。むしろ答えるのを我慢し、別の参加者に振ったほうがよい
- 対話を促す時には 「氷山の下」 を意識する。氷山の下とは、意見や発言の裏にある考え方や価値観、何に期待したり懸念を抱いているかの本音
[基本動作 7] 会議終了時に決まったこととやるべきことを確認する
会議の終了直前のクロージングに、決まったこととやるべきことを参加者で確認します。
クロージング内容
- やるべきことは、担当者と期限をセットで確認する (何を・誰が・いつまでに)
- 会議の流れをダイジェストで振り返る。例: 「今日の会議は現状の認識合わせ、問題点を洗い出しました。解決策の A 案は効果が疑問視されたので、もう一つの B 案に A 案の良いところを加えた C 案で合意しました」
- 決まらなかったことを確認する。次回の会議に持ち越す継続論点など
[基本動作 8] 会議後に振り返りをする
次の会議をより良いものにするために、会議終了後に簡単に会議を振り返ります。
会議の振り返り
- 参加者の率直な感想を確認する。会議の品質は良かったかどうか
- 良かった点を言語化し、再現性を高める
- 悪かった点を把握し、改善方法を模索する
大事なことは、悪かった点をざっくばらんに言い合える雰囲気にできるかです。
効果的な言い回しは、「むしろ悪かった点を多めに頼むよ」 「あえて悪い点を1つだけ挙げると、何かな」 です。「あえて」 という一言が、ネガティブなフィードバックに対する心理的なハードルを下げてくれます。
思ったこと
ここからは本書 世界で一番やさしい会議の教科書 実践編 を読んで思ったことです。
読んで思ったこと
- シンプルでわかりやすく、行動につながる本
- ファシリテーターが全てを抱え込まくていい
- 日本人の DNA と会議
以下、それぞれについてご説明します。
[思ったこと 1] シンプルでわかりやすく、行動につながる本
タイトルに 「世界で一番やさしい」 とあるように、ファシリテーションについてわかりやすく解説された本です。
特に良いと思ったのは、実際のケースによる具体例、何がポイントか、そして、行動例が紹介されていることです。
行動の例は、自分が会議を仕切る立場の場合と、ファシリテーターではない会議への参加者としての2つの状況で、具体的に何ができるかが書かれています。
読みながらだけでも、具体的に何をすればいいかがイメージできます。まずはできるところから、早速取り入れてみようと思えます。
[思ったこと 2] ファシリテーターが全てを抱え込まなくていい
会議をファシリテーションするイメージは、ファシリテーターが一人で会議を取り仕切り、場を完璧にコントロールするものという認識があるのではないでしょうか。
本書を読めば、ファシリテーションはそうではないことがわかります。自分一人で抱え込まなくてよいのです。
むしろ参加者の思いや声を引き出し、対話を促し、いかに会議参加者の皆でより良いものをつくり合意形成ができるかです。ファシリテーターの役割は、参加者の能力を最大限に引き出すことです。
意見やアイデアが発散しすぎてまとまらなくても、それは良い案や結論に行き着くまでのプロセスと考えるとよいです。
本書には、誰か一人が中央集権的に行なう 「指導型会議」 と、「全員参加型会議」 のそれぞれの特徴が以下のように書かれています。
指導型会議の特徴
- 有識者がほぼ一人で結論を決める。会議の速度は上がる (短期的には効率的)
- ただし、特定の人だけで決めるので、参加者の納得度は高くない。参加者の主体性は高まらない
- 有識者がほとんどを決めるので、有識者の能力以上のものにはならない
全員参加型会議の特徴
- 全員から意見を引き出して合意形成をするので時間がかかる (短期的には非効率)
- 参加者が主体となり進め、納得感は高まる
- 一人で考えた案よりも、より良い案が生まれやすい。個人の能力が会議の上限にならない
指導型会議と全員参加型会議の特徴を見て思い出したのは、アフリカのことわざです。
「早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ、みんなで進め」
(If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.)
ファシリテーションが効果を出すのは、遠くまで行く時です。皆で進むために、参加者の思いを引き出し、対話を促し合意形成を図りながら、一人では行けない遠くまで行きます。
[思ったこと 3] 日本人の DNA と会議
日本人には 「和の心」 を大切にする文化があります。
古くは聖徳太子が 十七条憲法 の第一条と第十七条で、和を尊び、意見対立があった時は話し合いで解決せよと説きました。
十七のうち、一番始めと最後で繰り返すほど、最も高い優先度で掲げています。第二条の仏教を信じなさい、第三条の天皇の命令に従いなさい、よりも上です。
日本人の DNA とも言える、協調性や話し合いの重視には、本書に書かれているファシリテーションが効果的です。
ファシリテーションは誰か一人だけが全てをやる必要はありません。
形式的にはリーダーは一人でも、全員がリーダーシップを発揮するチームが強いように、「隠れファシリテーター」 が参加者にいる会議はより良いアイデアや案が生まれ、皆で納得感のある合意形成ができます。
なお、聖徳太子と十七条憲法については、別のエントリーで書いています。よろしければ、ぜひご覧ください。
最後に
今回は、ファシリテーションについて考えました。
最後に関連するエントリーのご紹介です。よろしければ、ぜひご覧ください。