今回は、イノベーションとマーケティングについてです。
この記事でわかること
- 差別化の3つの領域とは?
- イノベーションの2つの方向性
- これからのマーケティングへの示唆とは?
こんな疑問に答える内容を書きました。
この記事で試みているのは、イノベーションとマーケティングの視野を広げることです。
始めに差別化の3つの領域をご紹介し、そこからイノベーションとマーケティングに当てはめて見えてくるものを紐解きます。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。
差別化の3つの領域
まず最初にご紹介したいのは、差別化の3つの領域です。
差別化の3つの領域
- 機能
- デザイン
- ストーリー
書籍 SHIFT - イノベーションの作法 に書かれています。
SHIFT で指摘しているのは、機能だけの差別化は難しくなり、デザインと合わせて差異を出そうとしている流れです。そして、機能とデザインだけではなく、さらにストーリー (意味づけ) でいかに独自性を出すかの勝負になってきています。
デザインや機能は目に見えてわかりやすいです。しかし、ストーリーは意味合いなので、ストーリー単体では本質的には役には立ちません。
そこにあるのは意味合いです (今回の記事のポイントです) 。
従って、ストーリーでの差別化は、機能とデザインの差別化とは異なるアプローチになります。
3つの差別化領域とイノベーション
3つの差別化領域を、イノベーションの文脈に当てはめるとどうなるでしょうか?
以前は、イノベーションの日本語訳は 「技術革新」 とされているのを見かけました (最近は目にしなくなったような気がします) 。これは、3つの差別化領域で言えば、機能のイノベーションです。
ここにデザインが加わり、機能とデザインによるトータルでのユーザー体験 (UX) を目指すのが、今のイノベーションの主流でしょう。
ここまでは、より便利になる、より役に立つという方向のイノベーションです。
では、差別化領域の3つ目の 「ストーリー」 をイノベーションに当てはめると、何が見えてくるでしょうか?
意味のイノベーション
ストーリーの領域でイノベーションをするとは、どういうことでしょうか?
これは 「意味のイノベーション (Innovation of meaning) 」 と言われるものです。実際のモノは同じでも、使い方や位置づけが変わることによって、意味するものが異なります。
意味のイノベーションの例でよく使われるのは、ロウソクです。
昔、ロウソクの価値は夜でも明るくしてくれることでした。その後、電気による明かりが登場し、ロウソクはその役割を終えます。
しかし現在は、ロウソクは違う目的で使用されています。レストランやバーなどの店内、アロマキャンドルとしてなど、あえて薄暗い雰囲気を楽しむためのものになりました。
ロウソクの機能やデザインはイノベーションと呼べるほどは変わっていませんが、使われ方が変化したことによる 「意味合い (ストーリー) 」 が変わったのです。
意味のイノベーションは、機能やデザインのイノベーションとは中身が質的に異なります。
マーケティングへの示唆
3つの差別化領域である、「機能」 「デザイン」 「ストーリー」 は、マーケティングにも示唆があります。
機能やデザインを重視するマーケティングでは、不満の解消、より便利になったことを、消費者や企業にわかりやすくメリットとして提示していました。
一方、ストーリーが重視される世界では、このアプローチでは足りません。
機能やデザインによるメリット訴求から、意味合いを訴求するマーケティングです。
意味のマーケティング
では、「意味のマーケティング」 では、何がポイントになるのでしょうか?
不満解消や利便性向上が、どんな意味があるのかを掘り下げることになります。あるいは、先ほどのロウソクの例のように、一見すると機能やデザインは大きくは変わっていなくても、ストーリーを変えて訴求するやり方もあるでしょう。
ポイントは、相手 (客) が自分ごと化できるストーリーの提示です。
ストーリーからの意味合いを触媒にし、相手から共感される、愛着を持ってもらえるかです。これができなければ、つまり単に機能やデザインだけにとどまる訴求では、相手に 「欲しい」 と思ってもらえることが難しくなるでしょう。
機能やデザインを訴求するマーケティングは 「いかに役に立つか」 です。一方のストーリーを訴求するマーケティングは 「どんな意味があるか」 です。
機能やデザインは目に見えてわかりやすい一方で、意味合いは実態はなく精神的なものです。ロジックだけではなく感性も必要になり、サイエンスとアートの両方です。
まとめ
今回は、イノベーションとマーケティングを3つの差別化領域から掘り下げました。
最後にまとめです。
差別化の3つの領域
- ① 機能, ② デザイン, ③ ストーリー
- デザインや機能や目に見えてわかりやすいが、ストーリーは機能とデザインの差別化とは異なるアプローチになる
機能から意味合いへ
- 以前は機能のイノベーションだった
- 次が機能とデザインによるトータルでのユーザー体験 (UX) で、より便利・役に立つ方向
- そして意味のイノベーションは、機能やデザインのイノベーションとは中身が質的に異なる
意味のマーケティング
- 機能やデザインを重視するマーケティングでは、不満の解消、より便利になったメリットを消費者や企業にわかりやすく提示する
- 意味のマーケティングでは、相手 (客) が自分ごと化できるストーリーを提示し意味合いが触媒になり、相手から共感される、愛着を持ってもらう
- 機能やデザインを訴求するマーケティングは 「いかに役に立つか」 。一方のストーリーを訴求するマーケティングは 「どんな意味があるか」