
今回は、戦略についてです。
この記事でわかること
- 戦略ストーリーの独自性をつくるもの
- 2つの 「バカなる」 とは?
- 戦略的思考を鍛える方法
書籍 ストーリーとしての競争戦略 から、戦略をストーリーの観点で掘り下げています。
記事の後半では、戦略的思考を因数分解し、戦略的思考を鍛える着眼点と方法をご紹介しています。
ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。
競争戦略ストーリーの独自性をつくるもの
まず最初にご紹介したい本が、ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 です。
この本のキーワードの1つは、「クリティカルコア」 です。
競争戦略のストーリーを起承転結で見た時に、クリティカルコアは 「転」 に当たります。競争戦略の独自性の源泉になるのが、クリティカルコアです。
クリティカルコアは 「バカなる」
本書で興味深く読めるのは、クリティカルコアのことを 「バカなる」 と表現していることです。
一見すると部分では非合理、しかし全体では合理だからです。
クリティカルコアは、部分ではむしろ筋が悪く 「バカな」 と思えます。ですが、全体像や裏側を見ると極めて合理的で、「なるほど」 と思わず言ってしまうのです。
クリティカルコアは、参入障壁の観点からも興味深いです。
クリティカルコアと参入障壁
全体像が見えない他社は 「バカな」 と思うので、向こうから積極的にマネを避けてくれます。
結果的に、クリティカルコアは独自性の源泉になるだけではなく、持続可能な競争優位性にもつながるのです。
ところで、ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 には、クリティカルコアという 「バカなる」 は、もともとは別の 「バカなる」 から着想を得たと書かれています。
つまり、「バカなる」 には中身の違う2つがあるのです。
2つの 「バカなる」
オリジナルの 「バカなる」 のほうは、書籍 「バカな」 と 「なるほど」 - 経営成功の決め手! 書かれています。
こちらは、一言で言えば 「先見の明」 です。時間軸の観点での後からの 「なるほど」 です。
最初は誰が見ても 「バカな」 にしか見えませんが、未来を解像度高く見えている人には合理的なことです。
時間が経過して世の中が追いついてくると、ようやく 「なるほど」 と思えるのです。時間軸を広げての捉え方です。
2つの 「バカなる」 を端的に表現すると、次のようになります。
2つの 「バカなる」
- 時間差での合理性 (初期と後期 / オリジナル)
- 空間差での合理性 (部分と全体 / ストーリーとしての競争戦略)
空間と時間とは、要するに視野を広げて見るということです。視野には時間軸と空間という2つに因数分解ができます。
視野という着眼点は、ものごとを戦略的に考えられるかどうかのポイントの1つです。
では、他にはどのようなポイントがあるのでしょうか?
ここからは、戦略的思考を鍛える方法を見ていきましょう。
戦略的思考を鍛える方法
どうすれば、戦略的思考を鍛えることができるでしょうか?
ヒントは先ほどの視野にあります。私が考える方法は、「3つの視」 からです。3つとは、視野・視点・視野です。
戦略的思考を鍛える着眼点
- 視野を広げる
- 視点を増やす
- 視座を変える
以下、それぞれについて順番にご説明します。
[鍛え方 1] 視野を広げる
これは、2つの 「バカなる」 で見たように、時間軸を長く取ってみる、見る空間を広げます。
全体像を意識的に広げると、近視眼的の状態を避けることができます。
[鍛え方 2] 視点を増やす
2つ目の着眼点は、視点です。
ものごとには必ず二面性があります。表と裏、メリットとデメリット、自分と相手、売り手と買い手、過去と未来、分解と統合などです。場合によっては2つではなく、多面的です。
見落としている視点はないかを常に意識すれば、戦略的思考を鍛えることにつながります。
[鍛え方 3] 視座を変える
3つ目のポイントは視座です。視座とは、見る立ち位置が高いか低いかです。
視座を変えるとは、別の表現をすると具体と抽象の往復運動です。
具体とは経験や事例、抽象は原理原則です。往復運動とは、次のような視座の切り替えです。
具体と抽象の往復運動
- 目の前の個別具体的なことを掘り下げながら、原理原則に立ち返る
- 原理原則を、何か具体的な自分の経験に当てはめてみる
- 具体を抽象化できたら他の事例に横展開する
まとめ
今回は、戦略についてでした。
前半では、競争戦略ストーリーの 「クリティカルコア (バカなる) 」 、後半は戦略的思考の鍛え方を考えました。
最後に今回の記事のまとめです。
クリティカルコア
競争戦略のストーリーを起承転結で見た時に、クリティカルコアは 「転」 に当たる。競争戦略の独自性の源泉。
クリティカルコアは 「バカなる」 。部分ではむしろ筋が悪く 「バカな」 と思えるがが、全体像や裏側を見ると極めて合理的で 「なるほど」 と思わず言ってしまう。
2つの 「バカなる」
- 空間差での合理性 (部分では非合理、全体では合理)
- 時間差での合理性 (初期は非合理、後期は合理 (先見の明) )
戦略的思考を鍛える方法
- 視野を広げる: 時間軸や空間の全体像を意識的に広く見る
- 視点を増やす: 見落としている視点はないかを常に注意する
- 視座を変える: 具体と抽象の往復運動
ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 (楠木建)
「バカな」 と 「なるほど」 - 経営成功の決め手! (吉原英樹)