出典: macaroni
今回のテーマは、「成功を生むアイデア」 です。
マーケティングを成功させるアイデアとは何かを、具体例から見ていきましょう。
✓ この記事でわかること
- 明治の北海道十勝生モッツァレラチーズ
- 人気の理由とは?
- プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
- 学べること
明治の人気チーズである 「北海道十勝生モッツァレラ」 を取り上げ、マーケティング視点でヒット理由を紐解きます。そして、成功を生み出すアイデアについて学べることを解説しています。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
明治の北海道十勝生モッツァレラのチーズ
今回の事例でご紹介したいのは、明治の 「北海道十勝生モッツァレラ」 です。
出典: 明治
以下は、日経新聞の記事からの引用です。
明治が2021年8月に全国展開したナチュラルチーズ 「明治北海道十勝生モッツァレラ」 の売れ行きが好調だ。
同商品は、20年9月に一部地域で先行発売した、明治として初のフレッシュモッツァレラチーズだ。濃厚なミルクの味わいや他の食材との相性の良さが支持されているという。
40 ~ 60代の女性を中心に購入が広がり、昨年4 ~ 9月の販売は計画の2割増となった。
ヒット理由
では、「明治北海道十勝生モッツァレラ」 の売れ行きが好調な理由を掘り下げていきましょう。
結論は、次の2つです。
✓ ヒットの理由
- 製法に工夫をこらした 「独自のおいしさ」 の実現
- 食べ方の提案
順番にご説明しますね。
製法に工夫をこらした 「独自のおいしさ」 の実現
先ほどの日経の記事からです。
市場分析の結果、ナチュラルチーズ市場は伸びているが、購入率や個数は既存のチーズより少なかった。そこでモッツァレラチーズを使ったメニューを幅広く提案できれば、商機はあると考えた。
(中略)
チーズが持つミルク感を維持することに心を砕いた。チーズのもととなる 「カード (凝乳) 」 を、熱湯の中で練りながら伸ばす一般的な製法では、熱湯の中に凝乳の成分がしみ出してしまう。
そこで蒸気を使って、練り伸ばすことで成分の流出を抑えた。また、保存液にはチーズを作る工程で出る副産物のホエイ (乳清) を添加し、ホエイに含まれる乳糖の甘みを感じられるようにした。
食べ方の提案
もう1つ、人気商品につながったことで注目したいのが、様々なレシピからの 「食べ方の提案」 です。
「ちぎりモッツァレラ」 と呼ぶ、水分を切って手でちぎって食べる新しい食べ方の提案が、消費者の裾野を広げているという。オリーブオイルをかけて食べるなど、手軽に楽しめるレシピをサイトで紹介している。
レシピ動画サイトとの連携や、SNS (交流サイト) の活用などを通じて商品のファンを増やそうとしている。
引用内にあった 「ちぎりモッツァレラ」 とは、例えば次のようなメニューです。
ちぎりモッツァレラとアボカドのサラダ (出典: 明治)
モッツァレラチーズをちぎって食べる以外にも、こんなレシピも公開されています。
モッツァレラサーモン巻き (出典: 明治)
他にも色々あり、どれも身近な食材を使ったレシピになっており、おいしそうに見える写真からも、試してみたいと思えます。
* * *
ではここまでの話を一般化して、マーケティングの観点も入れながら学べることを見ていきましょう。
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
マーケティングの視点で筋の良いアイデアとは、「独自性がありベネフィット (便益) があるアイデア」 です。
独自性と便益の両方を満たすのが良いアイデア (右上) 出典: MarkeZine
アイデアは2つに分解ができます。プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアです。
出典: MarkeZine
2つは主従関係にあり、メインはプロダクトアイデアです。商品やサービスについての良いアイデア (独自性があり利用者へのベネフィットがある) 、それを伝えるコミュニケーションアイデアという関係性です。
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアのそれぞれにも、独自性と便益があることが大事です。
具体的には、
✓ プロダクトアイデア
- 独自性: 競合商品からの優位性
- 便益: 使って得られる価値
✓ コミュニケーションアイデア
- 独自性: 他にはない伝え方 (例: 見たことがない広告映像)
- 便益: おもしろい, 好き, 共有したくなる内容
北海道十勝生モッツァレラの2つのアイデア
では、明治北海道十勝生モッツァレラについて、2つのアイデアから掘り下げてみます。
先ほど見たヒット理由は、「製法への工夫からの独自のおいしさ」 と 「食べ方の提案」 の2つでした。前者の製法はプロダクトアイデアを実現するため、後者のレシピの提案はコミュニケーションアイデアです。
ここから言えるのは、独自製法からのおいしい生モッツァレラチーズがあって、初めて食べ方の提案に魅力が生まれます。プロダクトアイデアが主で、コミュニケーションアイデアが従です。
また、食べ方の提案では、身近な食材で様々なレシピを積極的に発信しているからこそ、生モッツァレラチーズというチーズでは珍しい種類でも、生活者は関心を持ち自分ごと化をしてくれます。
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアの両方があり、うまく連動させたからこそヒット商品になったのです。
学べること
では最後に、今回の事例からマーケティングに学べることを整理してみましょう。
一言で言えば、学びは 「アイデアはプロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアに分け、一貫性を持たせて相乗効果を起こそう」 です。
2つのアイデアは主従関係がありました。良いプロダクトアイデア (独自性とベネフィットがある) から、コミュニケーションアイデアに落とし込めます。
コミュニケーションアイデアにも独自性があり (例: 新しいコミュニケーション方法) 、コミュニケーションそのものにベネフィットがあれば (例: 広告であっても楽しい, シェアしたくなる) 、商品・サービスを引き立たせ、拡散されていきます。
日常的にビジネスで使われる 「アイデア」 という言葉は、ともすると人によってイメージや理解が異なります。マーケティングの成功につなげるために、アイデアを解像度高く捉えることが大事です。
まとめ
今回は明治の北海道十勝生モッツァレラのチーズを取り上げ、ヒット理由とマーケティングに学べることを見てきました。
最後にまとめです。
筋の良いアイデア
- 独自性があり、ベネフィット (便益) があること
- プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアの2つに分解できる
- 2つは主従関係にある。商品・サービスについての良いアイデア (独自性があり利用者への便益がある) 、それを伝えるコミュニケーションアイデアという関係
アイデアの一貫性からの相乗効果
- 日常的にビジネスで使われる 「アイデア」 という言葉は、ともすると人によって理解が異なる
- アイデアをプロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアに分け、アイデアを解像度高く捉え、一貫性からの相乗効果を起こそう
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