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牛乳配達の進化に見る、生き残り続けるために必要な存在意義の再定義


今回のテーマは、お客さんへの提供価値です。

✓ この記事でわかること
  • かつての牛乳配達、最近の牛乳配達
  • 牛乳配達が生き残れたのはなぜか?
  • 自分たちの存在意義を疑い、環境変化に合わせてアップデートしよう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

かつての牛乳配達の価値


日経新聞に牛乳配達の記事があり、興味深く読みました。

明治の牛乳宅配は、便利に栄養補給ができる利点が受け、ピークの1970年代半ばには契約軒数が350万軒に達した。しかし、この頃からスーパーやコンビニエンスストアが台頭。牛乳は手軽に店で買える商品となり、80年代半ばには120万軒まで減少し、事業存続の危機に直面した。

しかし、90年代初めには底を打ち、現在の契約数は250万軒と V 字回復した。ヨーグルトの 「R-1」 「LG21」 、栄養食品の 「メイバランス」 など、市販の人気ブランドの成分を強化し毎日続けやすい味にした宅配専用商品の相次ぐ投入が受けた。

かつては、手軽に栄養がとれる牛乳を毎朝届けてくれることに価値がありました。

しかしスーパーやコンビニが普及し、牛乳がどこでもいつでも買えるようになり、牛乳配達の契約数は減少していきました。打開策として、牛乳配達でしか買えない商品が投入されました。


見守りや健康サポートまで


現在は、牛乳配達はさらに多様な価値を提供しています。

同じ記事からの引用です。

森永乳業も全国に150万軒の宅配利用者を抱える。「地方に住む高齢の親の健康を気遣い、届け先を実家にして契約してくれるケースも多い」 (森永乳業ミルク事業マーケティング部アシスタントマネージャー瀬尾康介氏)

同社は21年7月、神戸市と 「高齢者見守り事業」 の協定を結んだ。地域の高齢者に商品を届ける際、配達員が異変を感じたら、「神戸市あんしんすこやかセンター」 へ連絡。安否確認や訪問を通じて病気や事故の早期発見につなげる。牛乳宅配店が主催し、骨の強度を測定するイベントなども各地で開いている。

高齢者の健康サポートにより積極的に関わるようになっています。

出典: 日経
 「朝、健康のために毎日飲む習慣がすっかり身についた。生活のリズムを整えるのにとても役立っています」

東京都練馬区に住む主婦、遠藤愛子さん (85) は笑顔を見せる。遠藤さんは4年前から明治の宅配を始めた。「明治プロビオヨーグルト LG21 ドリンクタイプ EX 宅配専用」 などを定期購入し、健康管理に役立てている。

遠藤さんは、2021年11月から明治の宅配が実施しているユニークなサービスの利用も始めた。歩数や消費カロリーなどが測れる専用の活動量計 (3850円) を購入。毎日欠かさず早歩きをし、ノートに記録を付ける。

 「牛乳宅配店の人が定期的に記録を見てアドバイスしてくれる。運動を続ける励みになる」 。スポーツクラブにも通っており、年齢を感じさせない。

牛乳配達が生き残れている理由


ここまで見てきた牛乳配達の過去から現在を俯瞰すると、牛乳配達というビジネスが生き残れている理由が見えてきます。

時代が変わり、牛乳配達の利用者への提供価値も変化してきました。最初は牛乳を毎朝自宅まで届けることに価値がありました。しかしスーパーやコンビニの普及で牛乳がどこでも買える商品になり、スーパーやコンビニとの差異化 (牛乳配達ならではの価値提供) が難しくなったわけです。

そこで宅配でしか取り扱わない独自商品を投入したり、その後は見守りサービスや健康をサポートするところまで手がけるようになりました。

お客さんへの価値提供を進化させ続けたから、世の中の生活スタイル、人々の価値観、競争環境が変わっても牛乳配達は生き残っているのです


学べること


では最後に、牛乳配達の話から学べることを整理してみましょう。

一言で表現をすれば、学びは 「自分たちは誰にどんな価値を提供するのか」 の存在意義をアップデートする重要性です。

仮に提供価値を完成できたとしても、将来も同じとは限りません。環境が変われば 「自分たちは何屋さんなのか」 の存在意義も変えなければならない時が来ます。

今までお客さんに価値だと思われていたことは、本当に今もそうなのか、これからも価値であり続けるのかは、常に自らに問いたいことです。


まとめ


今回は牛乳配達の昔と今を俯瞰して、マーケティングの観点から学べることを見てきました。

最後にまとめです。

提供価値の再定義
  • 生活スタイルや人々の価値観、競争環境が変われば、「自分たちは何屋さんなのか」 の存在意義も変えることになる
  • 今までお客さんに価値だと思われていたことは、本当に今もそうなのか、これからも価値であり続けるのかは、常に自らに問いたいこと
  • 「自分たちは誰にどんな価値を提供するのか」 の存在意義をアップデートしよう


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。