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I-ne の 「美ジネスホテル」 に学ぶ、「機会があれば買うかも」 の高いハードルを解消するマーケティング

#マーケティング #体験 #提供価値


今回は、マーケティング課題の見極めと解決方法についてです。「機会があれば買うかも」 の高いハードルを解消するマーケティングという話です。

✓ わかること
  • I-ne の 「美ジネスホテル」 プランとは?
  • プランの狙い
  • ボトルネックの見極めと対策
  • マーケティングに学べること

おもしろいと思った男性化粧品ブランドの取り組みを取り上げ、狙いをマーケティングの観点から掘り下げます。そこから学べることを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

I-ne の 「美ジネスホテル」 プラン


ヘアケアブランド 「ボタニスト」 やヘアアイロンなどの美容家電ブランドの 「サロニア」 を手掛ける I-ne (アイエヌイー) が、おもしろい取り組みをやっていました。

東京の 「チサン ホテル 蒲田 (かまた) 」 で、自分好みの美容を楽しめる男性向けの 「美ジネスホテル」 プランを期間限定で展開していました (2021年12月20日から2022年1月5日まで) 。1名1室で7,770円から、2名1室だと1万1,000円 (1名あたり5,500円) からでした。


プランではホテルの部屋に持ち込み試せる美容セットが用意され、部屋で人目を気にせずに美容を気軽に楽しむことができました。

用意されたアイテムは BB クリーム、コンシーラーなどの化粧品に加え、ヘアアイロンや美容家電です。自宅でも試せるように好みの各ブランドの商品詰め合わせ (1人1セット) を持ち帰れました。

また、プランの期間中はホテル1階のフロント前スペース一角に商品を一部試せる 「I-ne BEAUTY Touch&Try Spot」 が設置されました。「美ジネスホテル」 プランを申し込んだお客ではなくても、ホテル利用者であれば誰でも利用できました。



プランの狙い


では I-ne の 「美ジネスホテル」 の狙いを見ていきましょう。

マーケティング課題


背景には I-ne の課題感がありました。

I-ne の調査によると、美容家電を持っていない男性のうち 40% が 「機会があれば使ってみたい」 と考えていた。また、美容家電を利用していない理由として 36% が 「なんとなく手を出しづらい」 と回答。

店頭で試すことに抵抗がある人もいるとみて、人目を気にせずに好きなタイミングで製品を使う機会を作ろうと、宿泊プラン作成に行き着いた。

引用内にあった 「機会があれば使ってみたい」 とは、よっぽどのことがない限りはこのままだと 「機会」 が訪れることはありません。確かに利用意向はあると言えばありますが、何もせずにただ待っていても見込み客が使う機会は生まれないでしょう。

体験機会の提供


美容家電を利用しない理由の 「なんとなく手を出しづらい」 に対しての打ち手がホテルと組んでの 「美ジネスホテル」 プランでした。プランの申し込み者以外にも特別ブースで試せるようにしたのも興味深いです。

美ジネスホテルの狙いは体験機会の提供です。

化粧品や美容家電に興味はあるが使ったことのない人、利用機会を普段の日常生活で得られにくい人に体験してもらうことでした。実際に自分の肌や髪に使ってもらうことで良さや価値を実感してもらうのが狙いです。

I-ne の担当者は 「ビジネス目的でホテルを利用する男性が多い立地をあえて選んだ」 と話す。想定を超える40組以上が利用し、男性利用者から 「商品の使用方法などホテルスタッフへの質問が多く、美容に興味関心が強い傾向が見受けられた」 (同社) という。

ホテルの1階には美容家電や化粧品を自由に試せるブースを設置し、プラン以外の宿泊者も使用可能にしたところ、「男性にも商品に触れていただくことができ、普段は手を出しづらい美容にチャレンジできるきっかけを提供することができた」 (同社) 。

普段は使う機会がなかったり、使いたくても人目を気にして使えないような人に向けてビジネスホテルという外部パートナーと組み、期間限定の宿泊プランから 「体験機会の提供」 を実現させたわけです。


ボトルネックの見極めと対策


マーケティングでは 「マーケティングファネル」 と呼ばれるフローがあります。

マーケティングファネルとは


平たく言えば見込み客が商品やサービスのことを知って、買い、利用し、再び買い (リピート購入) 、商品・サービスのファンになっていくという流れです。

✓ マーケティングファネル
  • 認知
  • 興味
  • 来店・サイト訪問
  • 比較検討 (検討は来店の前にもある) 
  • 購入
  • 使用
  • リピート購入
  • 愛着

各段階において見込み客やお客さんはどこで止まっているかの把握が大事です。ボトルネックになっている箇所の見極めです。

I-ne のボトルネックの解消


今回の I-ne の美ジネスホテルにつなげると、I-ne の課題感は 「興味はあるが、買ったことがない人・使ったことのない人は、どうすれば買ってもらえるか」 でした。

これに対する施策、つまりボトルネック解消の打ち手がビジネスホテルで化粧品や美容家電を試せ、気に入ったものは自宅に持ち帰れる 「美ジネスホテル」 プランだったのです。一言で言えば 「価値体験の機会の提供」 でした。


学べること (まとめとして) 


では最後に今回の I-ne の事例から学べることを整理しておきましょう。

I-ne の 「美ジネスホテル」 からの学びは2つです。

✓ 美ジネスホテルから学べること
  • マーケティングファネルでのボトルネックの見極めと対策
  • 「価値体験の機会」 の能動的な提供

2つ目の価値体験の機会の提供について補足です。

どんな良いものでも、知られていなかったり、使って初めてわかる価値を体験していなければ、商品やサービスの魅力は伝えきれません。だからこそ美ジネスホテルのようなただ待っているだけではなく、積極的に体験する機会をターゲット顧客に提供することが有効なのです

今回の I-ne の例のように、必要であれば外部パートナーと組み、予算をかけてでも実現します。ここにマーケターの知恵の出しどころがあります。

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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。