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創業の原点をデザインに込めた自動調理器 「STAN. (スタン) 」 。デザインから差異化をする方法

出典: ZOJIRUSHI

今回のテーマは、デザインと差異化です。

おもしろいと思った自動調理器を取り上げ、デザインに注目して商品開発やマーケティングで学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 象印の自動調理器 「STAN. (スタン) 」 のデザイン
  • デザインに込められた創業の原点とは?
  • デザインの方向性は大きく2つ
  • ストーリーのあるデザインで差異化をする方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

象印の自動調理器 STAN.


ご紹介したいのは、象印の自動調理器 「STAN. (スタン) 」 です。

出典: ZOJIRUSHI

株式会社 TENT との共同で開発されました。

デザインにフォーカスした調理器


日経新聞の記事に、STAN. の企画と開発を担当した象印のデザイン部門の方へのインタビュー記事がありました。

以下は、記事からの引用です。

 「一方で当時、デザイン性を押し出した、いわゆるデザイン家電が新興メーカーから登場して注目を集めていました。そこで経営トップから、デザインにフォーカスした新ブランドを立ち上げたらどうか、となったのです」 

 「新ブランドといっても『20 ~ 30代の共働き・子育て世代』『まずは炊飯ジャーをラインアップに入れる』など、ざっくりとしたイメージしかありませんでした。それでも今までの当社のイメージとは違う新しいデザインを求めて複数のデザイン会社に依頼し、デザイン案を作成しました。結果、TENT (東京・目黒) の案を選択したのです」 

デザインに込めた想い


興味深かったのは、STAN. のデザインに込められた想いや意味合いです。

 「TENT 側が出してきたキーワードは『うつわ (器) 』。炊飯ジャーのデザイン案は、上に向かって広がっていくスタイリングと、底部分の質感の切り替えが新鮮な印象でした。象印マホービンは、『家電』だけのブランドではなく、非電気製品も扱う『家庭用品』のブランドです。当社の創業の原点にあるのは『魔法瓶』というガラスの器ですから、新ブランドで再び器に戻るという TENT 側からの発想は、とてもしっくりくるものでした」 

 「シンプルで味わいがあり、キッチンに置けば、まさに器のようにぬくもりが伝わり、使うほどに愛着が湧きそうなイメージ。実は『頭でっかちのデザインの炊飯ジャーは売れない』と過去からいわれていましたが、このデザインを見ると経営トップも『これは、お櫃 (ひつ) だね』とすぐに浮かんだそうで、ゴーサインが出ました」 

デザインでの独自化


ではここからは、商品開発やマーケティングの観点で STAN. のデザインから学べることを掘り下げていきましょう。

一般的な話として、家電以外のモノも機能性での商品の差別化は簡単ではありません。

作り手には機能面での自社商品の特徴は十分にわかっていても、買い手 (生活者) には違いが認識できないことが普通にあります。そこで差異を作り、独自化をするためには、デザインが重要になってきます。

象印の STAN. から思ったのは、デザインには大きく2つの側面があるということです。

役に立つデザイン


1つ目は、使いやすいなどの機能的なデザインです。

ユーザーが扱いやすい形状になっていたり、操作を間違わないような配慮がされているデザインです。ここでは 「役に立つデザイン」 と表現します。

意味のあるデザイン


もう1つのデザインの側面は、作り手の想いや哲学がストーリーとして込められているデザインです。

先ほどの 「役に立つデザイン」 に対して、こちらは 「意味のあるデザイン」 と呼ぶことにします。

作り手のストーリーとは、STAN. の場合は、象印の創業の原点である 「魔法瓶 (器) 」 です。作り手の想いとして、デザインのコンセプトを 「器」 にしたわけです。

ストーリーのあるデザインでの差異化


器というデザイン自体は、使いやすさを向上させることに加えて、ぬくもりのある見た目から、使う人に愛着を持ってもらうことを狙っています。

STAN. は単に思いつきで器というデザインを採用したのではなく、象印の創業原点に立ち返ってデザインコンセプトにしたわけです。

これができるのは、魔法瓶を創業時に手がけていて、今なお続けている象印ならではです。想いや哲学などのストーリーが込められたデザインからは、 他にはできない独自化からの差異化につながります。

今回の学びとして残しておきたいメッセージは、「機能だけではなくデザインからの差異化を考えてみよう」 、「役に立つデザインのほかに、意味のあるデザインからも独自化を目指そう」 です。


まとめ


今回は象印の自動調理器 「STAN.」 から、商品開発やマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

デザインの方向性
  • 役に立つデザイン: ユーザーが扱いやすい形状になっていたり、操作を間違わないような配慮がされている機能的なデザイン
  • 意味のあるデザイン: 作り手の想いや哲学がストーリーとしてが込められている意味的なデザイン

ストーリーのあるデザインでの差異化
  • STAN. は単に思いつきで器というデザインにしたのではなく、象印創業の原点に立ち返り 「器」 をデザインコンセプトにした
  • ストーリーが込められたデザインは、 他にはない差異化につながる
  • 役に立つデザインのほかに、意味のあるデザインからも独自化を目指そう


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。