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注目トレンド 「リテールメディア」 。期待される理由、今後の課題とは?

#マーケティング #リテールメディア #ビジネスモデル

出典: リコー

今回はリテールメディアを取り上げます。リテールメディアが期待される理由と今後の課題を解説します

✓ わかること
  • リテールメディアとは (ビジネスモデルから解説) 
  • なぜ注目のトレンドなのか?
  • 広告主からの期待、小売からの期待
  • 今後の課題3つ

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

リテールメディアとは


今回は 「リテールメディア」 というマーケティングのトレンドを紹介します。

リテールメディアとは何かですが、英語のリテールは 「小売」 を意味します。リテールメディアを一言で言うと 「小売店が提供する広告や販促の媒体 (メディア) 」 です。

代表的な例は小売店が運営する EC サイトやアプリ、小売のお店に設置されたサイネージ (テレビのような映像画面) で、これら広告や販促情報 (割引クーポンなど) を出します。

サイネージは以下の写真のようなものです。

商品棚の目立つところに設置されているサイネージ (出典: DIAMOND Chain Store

では、リテールメディアがなぜ注目トレンドなのかを掘り下げていきましょう。

広告主と小売の2つの立場から見ていきます。

  • 広告や販促を出すメーカーなどの広告主
  • スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどの小売


広告主からの期待


メーカーなどの広告主からのリテールメディアへの期待は2つです。

✓ 広告主からの期待
  • 小売データを活用した広告・販促
  • 広告と販促の分断への解消期待

小売データを活用した広告・販促


広告主の立場でリテールメディアに期待したいことは、小売の持つデータを広告に有効活用することで、これまで以上の広告や販促の効果です。

小売の持つデータとは具体的には、

  • 消費者への販売データ (特に会員番号と紐付いた ID-POS データ (販売時点データ) ) 
  • 小売の EC サイトやアプリの利用ログなどの行動データ

といった小売店が独自に収集し所有するデータです (これらを 1st Party データと言います) 。

販売や行動データを使うと何ができるかですが、例えば自社商品を以前に買った人、買っていない人、競合商品を買った人と、細かくターゲットを分けて広告をしたり割引クーポンを出すことが可能になります。

広告を出すサイネージはスーパーやドラッグストアのお店の中にあるので、サイネージで見た商品をその場で買えるというのもリテールメディアの他の広告媒体に比べての強みです。

つまり消費者が何かを買ったかの購買データを持ち、消費者との直接の接点がある小売のリテールメディアだからこそ、下の図にあるような 「消費者1人1人に沿った適切な顧客体験の提供」 につながるわけです。

出典: 電通報

広告と販促の分断への解消期待


メーカーなどの事業会社にとって、リテールメディアは 「広告と販促の分断」 を解消する期待があります。

出典: 電通報

一般的にメーカーでは広告は広告宣伝部が、販促は営業部 (小売への営業の部署) と異なる部署が担うので、予算も別で広告の内容と販促の中身がつながらないという弊害が起こりえます。わかりやすい例は広告では質の高いラグジュアリーな (豪華な) 印象を打ち出しているのに、一方の販促は割引クーポンを出して安くお買い得なイメージを与えている状況です。

リテールメディアは、こうしたチグハグ感の解決が期待できます。リテールメディアという小売での媒体や販売データ等を使い、宣伝部と営業部が同じものを見ることで同じ目線になるはずです。

広告と販促が統合され、何よりも生活者目線になるのです。


小売にとっての意味合い


リテールメディアは、日本では以前は一部のドラッグストアやスーパーだけが先進的にやっていました。ところが去年くらいから、ファミマやセブンも本腰を入れだした印象があります (例: セブンイレブンは去年2022年に 「リテールメディア推進部」 を新設) 。

では、小売にとってリテールメディアはどんな意味があるかを考えてみましょう。

結論から書くと、小売にとってリテールメディアの意味は、3つです。

✓ 小売にとっての意味合い
  • 情報コンテンツの提供
  • 新しいビジネス機会の獲得
  • 収益の多様化

情報コンテンツの提供


1つ目のリテールメディアの意味合いは、店舗が商品を売る場だけではなく、情報コンテンツを発信する場になるということです。

一般的にはコンビニやスーパーは商品を卸やメーカーから仕入れ、店頭で販売するビジネスです。リテールメディア化は、扱うものが商品だけではなく情報コンテンツにも広がります。

新しいビジネス機会の獲得


2つ目の意味合いは、商品を売ること以外の新しいビジネスへの発展です。

具体的には、小売が広告会社やマーケティング支援会社になれる可能性です。

例えば、

  • 販売データを使った他ではできない広告ターゲティング構築 (例: 競合商品を買った人たち) 
  • 消費者に響く魅力的な広告の動画作成 (クリエイティブ) 

といったケイパビリティ (能力) を獲得し、リテールメディアでの広告配信の知見やノウハウが小売にたまれば、小売が広告や販促の領域でのマーケティング支援をメーカーにすることが期待できます。

収益の多様化


小売にとってのリテールメディアの3つ目の意味は、収益の多様化です。

一般的に小売のビジネスは、仕入れ価格と販売価格の差分が利益になります。

リテールメディアによって、仕入れた商品を売って利益を得るだけではなく、店舗メディアへの広告配信収入を得るビジネスモデルになります。販売データなどの自社データを活用し、メーカーなどの広告主からの広告や販促費が、小売にとっての新たな収入源になれば、収益の多様化が実現します。


今後の課題


それでは今後の課題についても深掘りしてみます。

大きくは3つです。

✓ 今後の課題
  • 消費者からの信頼獲得
  • 広告媒体の量と質の強化
  • 広告主と消費者への価値提供

消費者からの信頼構築


1つ目はデータを活用することへの消費者からの信頼獲得です。

消費者にとっては自分が買った商品情報、EC サイトやアプリの利用履歴が使われるのは、人によっては心理的な抵抗感があるはずです。

こうした消費者心理を解消できるかです。個人が特定されない仕組みにすることはもちろん、わかりやすく丁寧な説明から1人ひとりに利用許諾を取り、利用目的と範囲、実際の利用状況を開示して、消費者からの信頼構築が課題です。

広告媒体の量と質の強化


2つ目のリテールメディアの課題は広告媒体の量と質の強化です。

量とは他の広告プラットフォームと比べてリテールメディアを経由してどれだけ広く広告を配信できるかです。

確かに大手のコンビニやスーパーの店舗のサイネージは量としては少なくはないです。店舗内に設置されたサイネージ、自社 EC サイトとアプリ、さらには外部の配信提携サイトに接続された広告配信面をどれだけ増やせるかです。

広告媒体としての質も課題です。質とは広告主にとって広告や販促の効果が得られることです。具体的には、広告を見た人が広告の商品やサービスを知ってもらえる認知、興味を喚起させる効果です。さらに小売の来店意向が高まり、商品・サービスへの購入意向の向上につなげられるかです。

広告や販促から売上が上がるか、リテールメディア以外の他の広告媒体よりも高い広告効果が実現できるかが質の課題です。

広告主と消費者への価値提供


1つ目と2つ目の課題から結局のところはリテールメディアが 「広告主と消費者にどんな価値を提供できるか」 です。

広告主には広告費を払い期待以上のリターンが得られるか、消費者には店頭での買い物でふと目にする店頭サイネージ情報が有益かどうか、普段使っている小売の EC サイトやアプリに自然と自分に合った広告や販促情報が出てきて、役に立つことです。

リテールメディアが広告主と消費者への価値提供につながるかが一番の課題です。


まとめ


今回はリテールメディアを取り上げ、なぜ注目のトレンドなのか、今後の課題を見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ リテールメディア
  • 小売店が提供する広告や販促の媒体 (メディア) 。 小売 EC サイト・アプリ、店内サイネージに出す広告や販促情報を表示する
  • メーカーからの期待は、小売の販売データ等と直接の消費者接点を活かし他にはできない広告展開、「広告と販促の分断」 の解消への期待
  • 小売にとっての意味は、広告会社やマーケティング支援会社となる新しいビジネス機会の獲得、収益の多様化
  • 今後の課題は、① 消費者からの信頼構築、② 広告媒体の量と質の強化、③ 広告主と消費者への価値提供


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。